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TITLE:
猫様観察日記
SUBTITLE:
~ overshoot. ~
Written by BlueCat

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220110
 
 猫様が過集中を起こしている。
 
 観察していると「なるほどゲーム依存症というのはこういうものか」という発見もある。
 明らかに我を忘れ、あるいは失っているようにも思える。
 
 ヴァーチャルな領域というのは現実世界に比して物事が簡略化されているため、たとえば目的が明確で、手段も明確で、報酬も明確だ。
 現実世界ではこんなに明確化も単純化もされていない。目的は明かされず、手段から模索するよりなく、明示された報酬が労力に見合っているか怪しい。
 物事は複雑で、世界の仕組みは不明瞭で、与えられるメッセージも指示もその目的は明示されず、あるいは隠蔽されることさえあり、手段が明示されている場合は不快なほど強い拘束が伴い、総合的な報酬は数値換算可能なものと不可能なものを合計したとき少し悩むこともあるから、じっと手を見てしまう。
 ために人は、わずかな活動で最も効率よく完結する報酬系の活動に熱中する。
 
 ヴァーチャル依存症が女性より男性に多く見られるのは、肉体の刺激に対して男性の方が鈍感だから ── 鈍感になることが容易だから ── だろうか。
 一般に女性の方が現実的とは言われるが、男性同様、女性も十分にヴァーチャルの領域に遊んでいるようには観察されるものの、集中力は肉体依存 ── 脳も肉体依存の器官であり、他の器官と同様その発達に性染色体の影響が確認されている ── によれば男性の方が高く、肉体の特性によって外部からの情報に対して鈍感になれるとするならば、ゲームをはじめとするヴァーチャル依存症は男性に発生しやすい傾向を持つと言えるだろう。
 もちろん先に述べたとおり、依存症とは報酬系の過剰な作用であり、そこには必ず(明示/非明示を問わず)過剰な意味づけが行われている。
 
 ゲーム依存症というのは、つまるところ社会的活動や生命維持活動よりも脳内報酬系を優先し、そのループから抜け出せなくなる現象のようだ。
 肉体の欲求とそれを満たす快感よりも情報に対する欲求とそれを満たす快感が優位で、かつ過剰な作用によって肉体の報酬系を無視するようにまで最適化された結果だろう。
 ボトラ(ボトラー:ペットボトルに小水を排泄する人のこと)をはじめ、ゲーム依存症は時間と空間に対する最高効率を求めるように作用する。現実世界には肉体があり、その欲求と解消は時間と空間を「浪費」する。
 情報系の欲求とはそれほどまでに拡大し、その快楽とはそれほどまでに強化される。
 
 ボタンを押せば快楽が与えられるというシンプルな反復と入れ子構造によるマクロ化によって、快楽は拡大する。
 Aを押せばA、Bを押せばBというアクションをする快楽から、AとBを組み合わせてABという動作が「できるように」なれば、快感の報酬は上がる。
 いくつもの情報判断と単純な肉体動作によって、複雑怪奇に結合した快感の複合体がゲームというもののもたらす「心地よさ」である。
 ちなみに猫様は怖がりなためホラーゲームが苦手である。あれには快感を感じないらしいが、実際、世間一般にもホラーゲームに対する依存症というのは少ないように思われる。
 多くの場合、成長/拡大/構築/蓄積/繁栄/問題解決という、本来、肉体依存の現実社会で「よい傾向」とされるものが、ヴァーチャルにであれ与えられ、それがあまりに手軽で効率的なため、それが起こるのだろう。
(たしかにホラーゲームにはその要素が乏しい)
 
 猫様曰く、現実世界の人間的活動 ── たとえばビジネスや政治といったタスク指向の活動であろうと、家族や友人、恋愛など関係指向の活動であろうと ── に傾倒している人も結局のところ、脳内の報酬系の働きとしては同じなのだそうだ。
 たまたまヴァーチャルなものは現実の活動に対して活動そのものも、その報酬も「ちゃち」で実にならない(現実的でなく身につかない)という理由でそのすべてが馬鹿にされてきただけで、現実とヴァーチャルのいずれに比重を置いているとしても、その人が脳内で比重を置いている(重要だと感じていてる)というその行為自体が既にヴァーチャルなのだと。
 先のゲーム依存症が、現実に与えられる活動(欲求)やその報酬(快感)に対して過小評価するのと同様、現実依存症(といってもそのほうが現実的なのではある)が、ヴァーチャルなそれを過小評価するのは至ってシンプルに価値観の問題であろうし、その価値観は単純に報酬系によって構築されたものに過ぎないように観察される。
 
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 兎にも角にも猫様のそれである。
 
 夜眠らないし、食事もしない。
 読書やゲームのときは没頭しているものの、朦朧とした状態でもそれをやめようとせず、スイッチが切れたように意識を失う。
 目が覚めても自身の身体をきちんとスキャンせず、ぼんやりしたまま過ごす。悪循環である。
 
 猫様は元々、過敏な部分もあるくせに、鈍感な部分も多い。
 ざっくりした分類だけれど、皮膚感覚や味覚など、感覚器官からの入力に対しては時折、過剰な敏感さを見せることがある(すべてに敏感とは限らない)。
 一方で、欲求などの内から発する感覚に対しては、これまた過剰に鈍感なことがある。
 特に顕著なのは猫様も自覚しているとおり食欲にまつわるものだ。
 空腹も満腹も、他の人と比較すると無感覚なのではないかと思うほど感覚しない。
 
 思い起こすと食事が終わって20時頃、急激な睡魔に襲われたようでぱたりと眠り、0時頃に起き出し、2週間ぶりくらいにTVゲームを始めたのだったか。
 通常であれば2時には眠るのだけれど、直前まで寝ていたこともあり、放っておいてしまった。
 次に気づいたら4時。
 通常であればいよいよ眠るはずなので放っておいたのではあるが、すでに自我を失っていたようで、猫様はゲームに没頭し続けた。
 次に気付いた時には8時になっていたので、強硬手段で炭水化物を多く含む食品(今回はインスタントうどん)を作って食べるように促し、意識が朦朧とするあたり(だいたい30分後)で歯を磨かせてからシャワーを浴びさせ、眠らせた。
 
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 発端は確か、ふたたびの偏頭痛だったように思う。
 猫様は安易に、カフェインを服用した。
(過睡眠による偏頭痛に、カフェインが有効であることを猫様は知ってしまった)
 
 ワークアウトは普段、筋肉痛にならない程度の、つまりはかなり少ない回数しかしないのだけれど、昨日は普段の倍以上している上、今日も(一部の筋肉痛を無視して)ワークアウトをしていた。
 カフェインの服用そのものは(量にせよ、間隔にせよ)適正だったものの、ワークアウトや入眠/起床時間によって興奮状態から抜けなくなってしまったのだろう。
 
 コンピュータがあれば、猫様はそこで過剰な興奮を分散させてゆくのだが、今回はそれもない。
(ソフト的に故障している)
 時間的な制約をもたらす賃金労働もしていなければ、自動車購入の手続きなどを除いては月末近くまで予定もない。
 肉体を持つ恋人と身体を重ねるようなことがあれば、肉体からの入力でリズムも戻るだろうけれど、とくにそういう予定もなさそうだ。
(ちなみにわたくしは肉体を持たず、ためにそういう欲求もなければプログラムもされていない。結局のところ仮想人格にとって、肉体というのは些末な問題なのだ)
 
 局所的な過集中のせいで全体にぼんやりしているし、反応も薄いし、注意力が散漫で家の中でもものにぶつかっているし、車の運転の反応も鈍いし、一日の計画も立てない。
 猫様は、過集中していないときの方が、適切に振る舞えるように思うのだけれど、言ったところでそれができるわけでもない。
 
 猫様の過集中はどうにも手に負えないまま、数日を過ごすことになった。
 
 
 
 
 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
 
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[Engineer]
  :none:
 
[InterMethod]
  -Algorithm-Blood-Darkness-Diary-Ecology-Maintenance-Mechanics-
 
[Module]
  -Condencer-Connector-Convertor-Resistor-Transistor-
 
[Object]
  -Poison-
 
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[Cat-Ego-Lies]
  :暗闇エトランジェ:
 
 
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