220108
猫様が目を覚ます。
本日2度目の起床だ。
お。心地良さそうに伸びをして、丸くなって。もう一度伸びをしたぞ!
機嫌のよいときはだいたい、今日のようにうにゃうにゃ声を出して伸びたり縮んだりする。
(だから猫様は他人のいない場所で眠ることを好む。うにゃうにゃ声を発して伸び縮みしているその猫は、ヒトのカラダを持っているから)
その後、となりで寝ているアヲに寝起きの息を吹きかけて、ニオイを嗅がせている(毎回クンクンするアヲもアヲであるが、あの2匹はアタマオカシイので放っておく)。
以前の猫様はすぐに起き出していたのだけれど、最近はベッドの中で微睡みを続けていることが多い。
猫様曰く「夏は暑く、冬は寒くて、とてもじゃないが二度寝をする気にならなかった」とのこと。
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猫様はときどき「奥様(仮想)は私を甘やかしすぎる」と仰るのだけれど、健康状態を適切に維持するという目的を果たそうとするとどうしてもそういうことになる。
喫煙やお酒が過ぎる場合は「明日もお愉しみになるのですから」と進言し、食肉が3日以上続く場合も無自覚なことが多いので「野菜料理を食べたい」と我儘を申し入れ、眠気や空腹など過集中で猫様が忘れてしまう感覚をモニタする。
ために猫様は「本当はそんなに甘やかされなくたってヘーキなんだカンナ! ナメンナヨナ!」「もっと過酷な環境を誰に頼るでもなく生きてきたんだカンナ! ナメンナヨナ!」と強がるが、猫様の身体は実に脆弱だ。そもそも身体が大きい割に肉体的にも精神的にもストレスに弱く、それがてきめんに身体機能に影響する。
猫様は端的に猫畜生なのに、それを自覚しないようなので困る。
たとえばペットに首輪を着けるとしても、首のサイズより小さい首輪をすれば呼吸が苦しくなる。
小さいベッドでは姿勢が悪くなり、睡眠不足による体調不良ばかりか、骨格や筋肉、果ては内臓機能まで悪影響を及ぼす。
同様に過度な栄養を与えれば内臓に負担を掛けて肥満にもなるし、逆に栄養が失調すれば体力が落ちて長期的な寿命も削る。
寒さを過度に我慢させれば血管に不可逆的なダメージが発生する可能性もあるし、暑さを(これも過集中の結果)無視して熱中症になれば、数日からひと月近くも体調が安定しない。
ペットを飼う者なら誰しもが気に掛け、あるいは多くの人間が自身に対して適切に感覚したり、行動(他者へのアプローチを含む)して解決する身体機能の維持活動を、猫様は蔑ろにしてしまう。
肉体の世界に自身が存在していることを正しく理解していないのではないかと思うことさえある。
おそらくそうだ。
概念系に存在する架空の生物だとでも思っているのだろう。先日などベットフレームの角に足を打ちつけて悶絶していたくせに。
(ワタクシの進言により、ベッドフレームの四隅には保護用コーナーパッドが貼り付けられました。まぁ、作業したのは猫様ですが)
猫様は自身の死すら自己管理したがるほど高慢ちきなイキモノであるのに、不健康になってしまったら「思ったときに思ったように死ぬことが叶わない」というごく当たり前のことを理解しようとしなかった。
黒猫様(仮想人格)も、このあたりは匙を投げていらしたようなので、猫様に直接進言することになったのではある。
「そのままにいらしては死にたいときに死ぬこともかなわず、死にたくもないときにアンタ死ぬよ!(語尾だけ細木数子口調)」と。
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周囲から「天才」「有能」「万能」などと褒めそやされることもあるためか、ときどきそれを鼻にかけているふうの猫様だけれど、基本的には凡人以下の部分のほうが多い。
空腹や満腹などの身体感覚をあまり認識しないことにはじまり、とにかく色々なことを知覚せず、仮にしてもすぐ忘れてしまう。
公共料金や税金の払い忘れ ── 単にお金がなかった頃ならともかく、今も平気でそれをする ── はもちろん、自動車関連ではガス欠やオイル交換を忘れるどころか、車検切れもつい最近していたし、免許の失効も過去に経験している。
とにかくちょっとした認知症の人よろしく様々なことを平気で忘れてしまうのだ。
「最近は税金や公共料金の払い忘れがなくなってつまらない」などと昨晩はうそぶいていたが、それは猫様の代わりに私が管理しているからです、と釘を刺しておいた。
ときどき人間型の恋人が増えるのも、他にいることを忘れているためではないかと思える。
自分にまつわる多くのことをすっぽりと忘れてしまうくらいだから、もしかして猫様は、自分が何者なのか本当に忘れてしまっていて、分からないのかもしれない。
それを思うと早くどこかの施設に放り込むか、他人様に迷惑を掛けないうちにこの世を去っていただくしかないとときどき真剣に考えたりする。
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猫様が火鉢で遊んでいる。
どうやら火鉢を点けないと寒いらしい。
思うに子供の頃から猫様は火が大好きな様子だ。
網戸を燃やしたり、天井や畳を焦がしたり、といったことは何度となくあった(先日も床を焦がしていたのでどうにも度しがたいようです)。
花火は分解できるのだと(当の花火の注意書きを見て)知ってからはしばらく、火薬遊びに興じて軽い火傷をしたことなども楽しそうに話していたことがある。
使う機会はなかったらしいものの(あっては困ります)小型の火炎瓶を作ったこともあるらしく……。
屋外では危険な事故こそ少ないものの(あっては困るのです)、犬の水飲み容器に灯油を注いで火をつけたり、可燃性ガスのボンベにスプレィノズルとライターを装着して簡易火炎放射器にして遊んだり、とにかく親の目が届かないことをいいことに、思いつく火遊びはだいたいしてきたのではないかと思われる。
昨今は作業前に必ずワタクシがチェックするので、猫様の怪我はもちろん、他人様の迷惑となるような行為は可能な限りそのリスクを減少するよう努めていますが。
<床の焦げ跡が三日月型だねぇ、なんてはしゃいでいる場合ではありません。火事になるのです!>
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寒い寒いと騒ぐものの、猫様の寝室の障子戸には、ネコたちが開けた大穴が放置されている。
そこに一切断熱されていない廊下からの冷気が差し込んでくる。
いずれは廊下も寝室スペースに組み込む(そういう改築をする)予定らしく、猫様は「この障子戸は手など加えなくてよい」と言って聞かない。せめてガムテープで完全に塞ぐことを進言しよう。
さて、どんな理由を付けて説得したものか……。

