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TITLE:
今、俺の中で自作チャイがアツい。
SUBTITLE:
~ Eyes of pink pepper. ~
Written by BlueCat

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210830
 
 ここ数日、残暑は厳しいし、早朝に外に出る気力が奮い立たないし、かき集めようもないので、草取りもせず家の中でモヤシっ子ライフをエンジョイしている。
 正直飽きているのだが、暑いから外に出たくない。車のエアコンもない。学校もないし家庭もないし暇じゃないしカーテンもない(カーテンと暇はある)。
 
 せめてもとAmazonで買ったオフィスチェアを組み立てるが、机がないままである。
 スチール棚を通販サイトで探しても、これというものが見つからない。
 先日(比較的大きな)店舗に出かけたが、良いものがなかったから、本当は別の店に行きたいのではある。
 
 にもかかわらず県の感染者の半数が僕の棲んでいる太田市から先日は計上され、人口あたりの新規感染者数が東京の人口を基準に換算した場合9k人を上回っていた(東京はだいたい5k人ほどだったか)。
 これはさすがに外出したくないのである。
 
 まぁ、まだ暑いし。
 気温がもっと落ち着くまで、屋内作業もお休みしておこうか、などとぐうたら過ごしているうちに、今日は月に一度くらいの書類整理の日と決める。
 出納管理とそれに関連した書類の整理である。
 このところ調子が出ない(そもそも出し入れするものではないようにも思う)ので、ここはひとつ景気づけ(景気というのは付いたり離れたりするのだろうか)に書類を整理するが、1時間足らずで終わってしまった。
 
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 数日前から、チャイを作っている。
 作るだけでなく、日がな一日飲んでいる。
 牛乳で煮出すのは大変なので、水からかなりの濃さのスパイス紅茶を煮出し、牛乳で割って飲んでいる。
 ホールスパイスの取り扱いが、僕の出歩く範囲のスーパーなどではそれほど多くないので、手近なものを使って。
 なあに、スパイスを適当に放り込めば、カレーもチャイも出来上がるのである。
 
【材料】
○クラッシュドシナモン
 これは近所の「やまや」にミル付きで売っている。
 スティックは高めだし、パウダーはチャイがドロドロに粉っぽくなるのでこれがいい。しかも安い。
 
○ピンクペッパー
 赤い胡椒。これも「やまや」では格安である。
 コショウをチャイに入れるなんて、と思うかもしれないが、ひと粒食べてみれば分かる。
 甘酸っぱくて、フルーティな香りの、さほど辛くない胡椒である。
 
○クローブ
 これは近所のスーパーでかろうじて入手できたホールスパイス。
 
○生姜
 ジンジャーパウダーを使っていたのだが、これはそのへんの根生姜をスライスして煮込めばいいや、ということになった。
 
○ローリエ
 我が家には僕が死ぬまでに使い切れるか怪しい量のローリエがある(業務スーパーで買った)。
 なんとなく入れる。ただし1枚だけだ。
 
○紅茶
 そのへんのスーパーで適当な100ピースのパックを買って使っている。個装されていないけれど、香りのいいものがある。だいたい1回に8個くらいを使う。
 
【作り方】
 ミルクパンに水を注いで上記のスパイスを適当に放り込む。だいたい小さじ1〜2くらいずつだろうか。
 シナモンと生姜はけっこう多めに入れている。
 ローリエだけは1枚だ。
 
 スパイスを煮出している間に、紅茶のティーバッグを取り出し、紐は邪魔なので切ってしまう。
 
 沸騰したら弱火にする。他の作業中であれば5分くらい煮ていることもある。
 気が向いたら砂糖を小さじ2杯くらい入れる。
(水温上昇と浸透圧の調整という些細な役目なので、忘れても問題ない)
 
 紅茶のティーバッグを入れて、木の落とし蓋をする。
 ミルクパンには注ぎ口があるので、弱火のままであれば吹きこぼれることはない。
 
 しばし煮込むあいだ、暇なので、インドで暮らした日々を思い出す。
 
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 その頃の僕は赤いターバンを巻いていて、蛇使いの大道芸をしていた。
 笛を吹くと壺から蛇が出てくる、あれである。
 
 ひと月ほど前まで市場の果物売りのバイトをしていたのだが「オマエは客に騙されて、とんでもない安値で商品を完売させた」と主人に叱られ、クビになったのである。
 仕方なく「そろそろ日本に帰ろうか、でもパスポートは盗まれたままだし」などと途方に暮れて、街はずれの草原を歩いていたところ、その、赤い目の蛇に出会ったのである。
 
 蛇は僕に言った。
「おい。オマエだそうそうお前オマエ。シケたカオしてるなぁ。どうしたんだ。当ててやろうか。恋人にフラれたんだろう。って日本語は通じないのか? おーい、お前もしかしてチャイニーズか? おーい。ドゥユースピークイングリッシュ? ノーアイキャント? オーケー?」
 
「いえ、日本人です」と僕は答えたのだったか。
 
「ちっ。通じてるんなら最初に挨拶くらいしろよ。親から何を教わってきたんだよ。これだから最近の若造はよ」と、僕は見知らぬ蛇に説教された。
「まあとにかくよ」と蛇は続ける。「俺とコンビを組んで、一発当てようぜ! どうせなら吉本に行きたいけど、ここはインドだからひとつ、蛇使い使いをするからさ! 俺に任せとけば間違いないからさ!」などと、得意満面に吹き込んでくる。
 
 東京暮らしでたいていのキャッチを経験していた僕は、
「あ。いいですそういうの間に合ってるんで。じゃ」などと蛇の脇を通り抜けた。
 
「すぐ済む話だし、後悔させないからさ! ちょっと待ってよ」と、しつこいナンパ師のような感じ(といってこれまでの人生でナンパされたことはないが)なので、「ごめんなさい、急いでるんです!」とかなんとか言って、森に駆け込んだのだったか。
 
 それで森の中で道に迷って、伝説の狼の怪物に追われて、魔女に騙されそうになったところを、かの口ばかり達者な蛇に助けられてコンビを組んで蛇使いになって最終的には眼鏡で美人でオカネモチーの奥様(仮想)に出会って、蛇と一緒にパスポートを盗賊団から奪い返したついでに金銀財宝を奪って(ドロボーやで)日本に帰ってきて現在に至る、という話を考えたりする。税関をどうくぐり抜けたかは知らない。
 
 最後の方はチャイの煮込み加減が気になって、気もそぞろになっているので巻きが入っている。
 もう少し落ち着いた気持ちが必要ではないだろうか。
 
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 耐熱ポットに茶こしで煮出した茶を取って、グラスに砂糖(最近は蜂蜜)を入れ、茶を入れてから混ぜ溶かして、牛乳を入れてさらに混ぜる。暑い日は氷も入れる。
 煙草に火を点けて、チャイとともに味わう。
 
 嗚呼。
 あいつ、今頃、何してるんだろう。と蛇のことを考える。
 
 赤い目で、減らず口ばかり叩くけれど、その実けっこういい奴だった。
 ここぞというときには間違いのない結果を出す。たいした蛇だった。
 あいつに出会わなかったら、僕は狼の怪物に喰われるか、森の魔女の生け贄になっていたのではないかと想像する。少なくともパスポートがないので日本に帰ってこられなかったはず。
 
 まぁ、インドに行った事なんて一度もないのだけれど。
 奥様(仮想)にそのことを話すと、ポケットから蛇を出す。
 
 奥様の手の上で、ちろちろと舌を出しながら「よぉ! 久しぶりに会ったのにシケたカオしてるなぁ。なんだよチャイ作ったなら俺にもくれよ」などとその赤目が言ってくる。
 言いながら、そのひんやりとした身体を僕の腕に巻き付け、こちらの顔を覗き込んでくる。
「俺とお前が組めばさ、蛇使いだって吉本の芸人だって英語教材とか消化器の押し売りだってBang! 間違いなしの外れなしさ! だからそんなシケた顔してないで、ナニかしようぜ! 何かこう、くだらないことをさ!」
 溌剌とした声で、悪魔のように僕にささやきかける。
 ピンクペッパーのような、鮮やかな赤い目である。
 
 
 
 
 
 
 

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[NEXUS]
~ Junction Box ~
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[Engineer]
  -工場長-/-青猫α-/-青猫β-/-黒猫-
 
[InterMethod]
  -Chaos-Cooking-Diary-Kidding-Memory-
 
[Module]
  -Condencer-Generator-Transistor-
 
[Object]
  -Dish-Memory-Poison-
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[Cat-Ego-Lies]
-ひとになったゆめをみる-:-キッチンマットで虎視眈々-
 
 
//[EOF]