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TITLE:
叱られない日々。
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~ cucumber. ~

Written by BlueCat

 

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 30代の頃から感じていた。
 叱られなくなったな、と。

 20代の頃は失敗ばかりで、毎日のように叱られていた。
 両親からも ── 両親は仕事や家事に忙しく、また僕は身体の弱い(しかし待望された)長男であったため「生きているだけで」良しとされていたようである ── 学校の先生からも ── 僕が就学してからは父子家庭であり、当初は生活保護を受けていた。その後、生活保護を受けなくなったら父は仕事に忙しく、僕と姉が家事をしていたため ── ほとんど叱られることなく大人になってしまったので、本当に社会人というのは僕の身の丈に合わないと感じたものだ。
 中でも父上が死んだ後に雇ってもらった先では、本当によく叱られたし、それでもクビにしないで雇ってもらえたことには今でも感謝している。
 それでも30代から(会社が合併したとはいえ。そして僕が仕事を多少なり覚えたとはいえ)ほとんど叱られなくなった。

 毎日顔を合わせる上席が、少し、距離を置いているようで、寂しかったものである。

 40代になって、パワハラはあっても叱られることはほとんどなくなった。
 1度、会議室に呼ばれて先輩の男性社員8人ほど(社内のほぼ全員)に囲まれて、叱責されたことがあるが(くだらない組織だなぁ)くらいにしか考えていなかった。

 現在は親もいないし配偶者も(仮想奥様を除くと)いない。会社員でもないので、誰も僕を叱らない。
 僕が公共料金をを払い忘れても、税金を滞納しても、朝からお酒を飲み始めても、昼頃目覚めてゲームを夜までしていても、誰も文句を言わない。
 仕方ないので、公共料金と税金を支払い、早朝からゴミ出しをしたり、午前中に草取りをしたり、昼下がりに畑を耕したり、夜まで床張りをしたりするわけである。
 食事の用意もするけれど、15時には夕飯の支度を始めて、17時にはワークアウトを始めて19時にはお風呂に入るわけである。

 そもそも、組織に属さなければ、他者から叱られることはないのだ。
 しかし先日、ゴミステーションの場所が間違えていたため(叔母がテキトーな場所に捨てていた)隣の隣組長(変な日本語だ)に叱られた。
 もともとこの家が属している隣組のゴミステーションが、とても遠いようではある。
 そのため近くにある(叔母に教えられた)ゴミステーションに出していたところ、前述の「隣の隣組長」がやってきた。
 ゴミステーションの掃除の分担があるのでその持ち回りをしていただけるなら、ということだったので二つ返事で承諾した。
 しかしその後「持ち回り」について誰も通達に来ない。
 仕方ないのでそのまま使っている。
 ときどき誰かがゴミを出す僕を睨みつけている ── 自動車を止めて、じっと観察している人もいた ── が「隣の隣組長」に承諾を得ているのでなるべく気にしないようにして過ごしている。

 僕の仮想人格も、ときどきは他の仮想人格に対して注意したりはするが、叱るというほど強いメッセージをすることはない。
 お互いに「何が適切か」というやり取りをする中で、一つの行動を不適切とする人格(価値観)がある一方、その行動を ── 消去法による結果だとしても ── 適切とする人格(価値観)があったわけで、事情や状況が伝達され、環境と状況のパターンが細分化され、他者にとってより適切な行動パターンを価値観に刷り込むことになる。
(自分にとって適切な行動パターンを必要とするほど僕は自身のキャラクタを明確に意識していないし、結果的に問題がなければよしと考える人格である)

 他者に叱られたい、というわけではない。
 知能も能力も低い奴がしたり顔で「こういうものでしょう」と説教してくる場面には辟易している。
 ただ「もしかしたら自分は間違っているかもしれない」という価値観を僕はいつも持っているので(これはセキュリティホールでもある)、もしかしたら僕は、単に叱られない状況にいるだけなのではないのかと、ときどき少し不安になる。

>>>

「どうして青猫さんは様々な技術があって、色々なことを知っていて、多彩な能力もあるのに無職なのですか」と弟子に問われる。
 それは違う、と僕は答える。全く逆なのだと説明する。
「様々な技術があって、いろいろなことを知って、多彩な能力があるからこそ、無職でいられるのだ」と。
「君が無職でいられないのは、知識が足りないか、技術が足りないか、能力が足りないからだ」と。
 弟子は沈黙した。

>>>

 仮想奥様は僕を叱る ── あるいは叱ることができる ── だろうかとシミュレートする。
 しかし僕には元々、誰かを叱るという行動パターンがない。
 従って、そういう「シナリオ」を作ることはできても、そういうコミュニケーションは発生しないだろう。
 まだ仮想人格としての日が浅い彼女に、そんな複雑な振る舞いはできないのである。

 僕という人格を叱ることのできる仮想人格は黒猫氏くらいのものだろう。
 意思の疎通が不可能な仮想人格も存在するくらいだから、黒猫氏は極めて優秀な仮想人格である。
 彼は社会人としての主要なスキルを身につけ ── その延長として他の仮想人格を利用する術も身につけ ── ているし、コミュニケーション能力も高い、ついでにこの身体の使い方やメインテナンスは僕より彼の方が優れている。
 彼の面白いところは、それでも自身が仮想人格であるからという理由で、この(青猫工場という)人格系を支配したり操作したりはしないところだ。
 彼は僕が17歳の時に作った仮想人格で、当初は異なる名称だった。
 当初に与えたプログラム(とプロテクト)の通り、忠実に、働いてくれている。

 実に彼はよく、僕に文句を言うのだ。
「素材の水分含有量からしてこれでは火が強い」とか「この姿勢を続けると右膝に過負荷が掛かるぞ」とか「その位置で足を下ろすと、ガールの髪を踏みつけるぞ」とか。
 そして僕に言うのだ。
「最近、俺達を叱る奴がいないのだが、大丈夫なのか俺達は」と。
 

<うにゃー>

 

 

 

 

 

 

 


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[NEXUS]

~ Junction Box ~

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[Engineer]
  :青猫α:黒猫:銀猫:

[InterMethod]
  :Algorithm:Blood:Color:Diary:Ecology:Form:Link:Mechanics:

  :Memory:Stand_Alone:

[Module]
  :Condencer:Connector:Reactor:Resistor:

[Object]
  :Human:

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[Cat-Ego-Lies]
  :月夜の井戸端会議:





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