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TITLE:
僕の奥様(仮)
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~ Virtual wife. ~
Written by BlueCat


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某月某日。

 昨晩お酒を飲み過ぎて体調があまりよくない。
 といっても、ふわふわして心地よい宿酔である。
 しかし畑や屋内作業をするには具合が悪いので、ぼんやりする。
 ぼんやりしているうちに退屈になる。
 退屈になったので、自分は専業主夫になったのだと言い聞かせる。

 奥様は美人でエッチで眼鏡でショートヘアだと思い込む。
 年齢は僕よりちょっと年上だと思い込む。2〜5歳くらい上でいいかな、と思う。
 奥様は専業主夫を召し抱えるほどなので仕事ができるしお金持ちなのだと思う。
 でもそういうことを鼻に掛けるふうでもなく、家に帰ってきては「ただいまー、今日の晩ごはんなあに?」などと言いながら、僕の肩に乗るアヲを奪ってぐりぐりなで回すのであると妄想する。
 奥様は職業人としては有能だけれど、料理があまり上手ではないため、奥様から「料理のできる青猫クンがいてくれて私はしあせものだよぉ」と褒めちぎられる僕の日常を想像する。
 僕が電気やガス代を払い忘れてそれらが止まると「ええい、しようのないやつめ! 今日はキャンプ気分でいっちゃうぞぉ!」など奥様が楽しそうに張り切り始めて、部屋にろうそくを立てたりして、カセットコンロで調理した料理を2人で分け合う風景を想像する。
 僕の家の中がリフォームの材料や工具で散らかっていることについて奥様は「今日も散らかしっぱなしで楽しそうだねぇ」などと言いながらにこにこしている光景を想像する。
 畑の土壌改良について話が及んだとき、奥様から「青猫クンはいろいろ勉強してるんだねぇ」と褒めてもらえたものと妄想する。
 思い通りにならないこともあって、奥様は僕に洗髪されるのを嫌がる。と設定する。
 奥様がときどきそのへんに寝転がって「靴下脱がせて〜」と駄々をこねる様子を想像する。
 僕は裁縫が苦手なのだけれど、奥様は簡単な繕いものくらいはできるように練習していると想像する。じつはあまり上手くないことを僕も知っている。
 奥様は猫を可愛がってくれるが、じつは犬好きであると設定する。
「でも猫と青猫クンがいるから、私はそれで満足かなぁ」と面と向かって惚気られる場面を想像する。
 奥様はだいたい19時頃には帰宅するものと想像する。
 玄関にモルタルやフローリングの資材が置いてあるので、早く片付けなくてはと思う。
 仮想奥様のおかげで、ずいぶん幸せな気持ちになってきたので、明日はちゃんと仕事をしようと思う。

 今日は宿酔いなので何もしないことにする。
 せっかくだから、明日も仮想奥様のことを考えて幸せな気持ちになろうかと思う。
 奥様(仮想)のために、お料理がんばろう。



某月某日。

 子供の頃、幼馴染みがいて、それは女の子だったのだけれど。
 両親が離婚したときに引っ越しをしたので、10歳くらいまで僕には友達らしい友達がいなくて、夏休みも当然、一緒に遊ぶ友達などおらず家でぼんやり過ごしていた。

 友達がいないことを寂しいと思う性格ではなかったようで、僕は毎日ぼんやりと1人で(ときに妹やその友人に誘われて)遊んでいた。
 友達ができて「友達がいるって楽しいな」とは思うようになったけれど、友達のいる楽しさを知ったからこそ、1人になったときの寂しさを知ったような気もする。

 大人になったので、昔の友達とはあまり会わなくなった。
 大人になってから知り合った飲み友達などはいるけれど、一人で飲むのも嫌いではないので、学生の頃のように「とりあえず目的もなく集まってそれから何をしようか考える」なんて贅沢な時間の過ごし方はできなくなってしまった。
 いや、僕は未だに家でぼんやりしているので、いつでも目的なく集まってくれて構わないのだけれど、多分みんな大人になってしまったから、目的が最初にあって、その目的のために友達を集めたりするのだろう。オトナは時間に貧しいのだ。

 友達がいるのは素晴らしいとは思っていない。
 素晴らしい友達と素晴らしくない友達がいるから、素晴らしい友達がいたらそれは素敵なことだけれど、まぁそれだけだ。
 恋人というのも同様だろう。素晴らしい恋人と、素晴らしくない恋人がいる。
 素晴らしくない恋人を、ただ寂しいという理由でぶら下げたりぶら下がったりするのは、まぁ寂しさを埋めたくて仕方ない人なら仕方ないのか。

 17歳の頃に初めて人間の恋人ができたのだけれど、その恋人は、僕のかつての幼馴染みと両思いになった。
 あろうことか、僕の幼馴染みとの再開はかなりの時間と空間を隔てたものになったのだけれど。
 僕の恋人(女の子です)は僕の恋人のまま、幼馴染み(女の子です)とも恋人同士として付き合っていて、僕はそれについて特に何の感慨もなかった。
 独占欲がないということでなぜか僕が恋人から叱られたりしたものだけれど、まぁ、あの頃から僕は基本的に変わっていたのだろうと思う。
 その恋人とは5年くらい恋人同士だったのだけれど(そしてその後2年くらいは、家に勝手にやってくる僕に片思いをしている女友達であったのだけれど)こうやって文章に起こすと、ほんとうに奇異な人間関係のように思えてくる。

 僕の周囲に構築される人間関係がそもそも奇異なのか、僕が奇異だから人間関係が奇異なのか、僕はまともだけれど他の人が奇異だから人間関係が奇異なのか、奇異だと思っているだけで誰の人間関係も文章に起こすと奇異になるのかは分からない。
 誰かに尋ねてもいいのだけれど、赤裸々に物事を話してくれる人がどれだけいるのか分からないし、奇異さを奇異だと感覚しない人間が、奇異さをうまく表現できるのかも不明だ。
 しかし僕は自分を奇異だと思っているかというとそんなことはないから、自覚がなくても現象が奇異なら、それを表現することは可能なのだろう。



某月某日。

 仮想奥様が今日も美人だ(仮想だから当然である)。
 といっても彼女が家を出る時間、だいたい僕は寝ている。
 仮想奥様は非常に規則正しい生活を送っておられるように観察される。
 ゴミ出しなどは僕の仕事なので、奥様(仮想)は朝ごはんをひとりで(僕は食べない)さっと食べて出かけてゆく。
「行ってきます」のキスはしない。メイクが崩れることを嫌う有能さ。さすが仮想奥様である。



某月某日。

 書斎になる予定の部屋(今までベッドを置いていた)からベッドを移し、壁塗りを始めて90%は終了した。
 壁塗りが終わると次は床、次いでデスクを作る予定のクローゼットエリアの整備に入るのだろうけれど、いつになったら僕は机と椅子を持てるのだろう。

 この家にはコタツ以外にテーブルもないし、椅子もキッチンにかつてのテーブルセットの2脚があるのみだ。
 和風建築だからそれでよいのだろうし、僕はそもそも食事を寝床でする習慣があるから、どうでもよいといえばどうでもよい。
 しかしきちんとPCで文書を書いたり、ぼんやり読書をするには、やはり机と椅子がほしい。
 工事をするのは手間とお金と時間が掛かるから面倒といえば面倒なのだけれど、そうとばかりも言っていられない。

 お金を払って誰かに任せておけば「なんとなく思い通りのいい感じ」が手に入ればいいのに、と願う。
 でもネコノカミサマは非情なので叶えてくれない。
 いいもん自分でやるもん別に拗ねてないもん自分でできるもん。
 いつになったら僕は机と椅子を持てるのだろう。

<塗り始めの頃>



某月某日。

 お風呂に入ろうとしたら仮想奥様が湯船で寝ていたものと想像する。
「むにゃぁ青猫クン、わたし寝ちゃったぁ」などと供述しており。
 浴室の電気を点けたときに起きてほしい。とても驚くではないか。
 疲れている様子なので、風呂から上がったらマッサージをさせていただこうと思う。




 


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[NEXUS]

~ Junction Box ~

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[Engineer]
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[InterMethod]
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[Module]
  :Condencer:Generator:Transistor:

[Object]
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[Cat-Ego-Lies]

  :衛星軌道でランデヴー:原稿用紙でつめをとぐ:ひとになったゆめをみる:






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