連日あづい。

 僕は長風呂のせいかかなり汗が出やすい。
 運動中などは「筋肉は塩分と糖分と水分でうごいているんだな」とはっきり自覚できるほど、水分が排出される。

 肌の過敏さが相まって、自分の皮脂や塩分で炎症を起こすこともある。
 ためにこの数日、できる限り部屋から出ない。

 それでも暑い。
 エアコンを使っていても暑いから、室外機に水を掛けたりして遊ぶ。
 穴が開いている箇所は少ないが、障子を張り替えれば多少は日を防げるし、網戸を張り替えれば、夜に外気を取り込んで排熱することもできるだろう。
 しかしあまりに暑くて、作業する気にならない。
 足りない材料があったら、エアコンの効かない車に乗って出かける必要がある。
 それも考えたくない。
 なので気温が40℃近くなった日から、家から可能な限り出ないでゴロゴロしていた。

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 雨が降らないからなのか、きゅうりの出来が急に悪くなった。念のため断っておくが駄洒落ではない。
 オクラ、ナスもしかり。
 こやつらは水を与えてやるべきなのかもしれないと思い、一度与える。すると翌日はよい実がひとつ獲れた。
 トマトは水を与えないと聞くのでそのままにしている。

 それぞれの根の周辺に、草を焼いた灰を撒く。
 土づくり用の穴にも撒く。
 本来ならここで土を返してやるのだろうが、暑いからしない。
 僕はやはりぐうたらなので、農家には向かないだろう。

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 女やもめに花が咲き、男やもめに蛆が湧くとは言われるものの、僕はどちらでもないので庭の草花を取ってコップに活ける。


 どの草花も名を知らない。
 多分、覚えないのだろう。

 赤い猫じゃらしは、土に鉄分が含まれていたのだろうか。
 それとも誰かの血を吸ったのだろうか。

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 自分で初めて育てたきゅうりを収穫したとき、とてもドキドキした。
 蔓は臍の緒のようで、それをハサミで切るのに、どこを切ろうか躊躇した。
 刺々して、産毛がキラキラしていて、まるで子猫のようだ。

 捨て猫を拾うように、そっと3本、抱いて持ち帰り、水で洗って、ヘタを切り落として、おそるおそる、口に含んだ。
 よく知っている、キュウリの味と香りと舌触りである。
 僕の育てた、子猫のような、キュウリである。

 毎回、味わうつもりでもなく、しかし慎重に、緊張しながら、味わって食べる。

 茗荷が獲れたときも同様、ドキドキした。
 Webで調べたら、ときどき寄生虫がいるらしく、ますますドキドキした。

 庭で獲ったものを食べるのは、いつも緊張する。
 注意深く食べるからなのか、すぐに満腹を感じる。

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 最近は、夕方までには食事をするようになった。
 明るいうちからお酒を飲んでしまうこともあるが、すぐに満足してしまって、あとは水を飲んで、夜中に眠る。

 朝に空腹を感じることがあるが、耐え難いことはまずないので、そのまま過ごしている。

 ナスが獲れるとそれも浅漬けにするのだが、変色を防ぐためにアスコルビン酸(いわゆるビタミンC)を買った。
 純粋なアスコルビン酸(カリウムだったか)の粉末である。Amazonだと安いのだが、携帯電話で買い物をしたくないので、薬局で買った。
 次亜塩酸ナトリウム(水道等に含まれる、いわゆる塩素)を分解する効果もあるので、最近は風呂に500mgほど入れる。
(入浴後、塩素を入れるので多すぎると中和してしまう)

 アスコルビン酸を水に溶いて飲むと美味しいこともわかったし、ナスの変色を防ぐのに、ミョウバンがなくても問題ないことが証明される。

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 周囲をざっと観察して気付く。
 弟子の言っていたように、僕と同程度の年齢で、無職の人はほとんどいないように観察される。

 しかし僕はほとんど家に引きこもっているわけであり、だから僕ではない無職の同世代の誰かもまた、家に引きこもっているのではないだろうか。
 だからお互い、その存在を確認できずにいるのだ。

 それはなんというか、微笑ましい世界だと感じて、猫を撫ぜて昼寝をした。