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// TimeLine:20200502
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TITLE:
200502
SUBTITLE:
~ Liebesleid. ~
Written by Bluecat
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::音楽家は師から学ぶ過程で生まれた違和感を大切にすべきだわ。
その違いこそ個性なんだもの。
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//[Body]
窒息するような日々だ。
僕はそれを知っている。
どこにも行き場のない日々。
家にも居場所を見つけられない時間。
時間が意味をなくす空間。
空間に意味を見つけられない意識。
世界の意味の何もかもが裏返って ──
自分の意味も、居場所も、同じと思っていたものすべてがひっくり返って。
誰が敵になったわけでもないのに ──
味方はどこにもいない。
僕とおなじものがどこにもいない ──
僕は、ひとりぼっちだ。
まだこの身体は小さいから。
まだこの頭脳は未熟だから。
だから僕は無力だ。
居場所もないのに。
味方もいないのに。
僕はここにいることしかできない。
>>>
母がいなくなった日のことを、僕はあまりよく覚えていない。
学校で「あなたはオトコノコです」と宣告されたその年の、
いつだろう。
いつも寝ている寝室のドアのガラス。
玄関から差し込む日差し。
2匹いた犬は、数年前、一方は怪我をしてその後行方不明になり、一方は病死した。
気がつけば猫たちも散り散りになり、家には動物がいなかった。
暑くなかったような気がする。
といって、春ではなかった。初めて背負うランドセルが重いと泣き言をいう僕からそれを預けられ「まったく」と笑いながら文句を言っていた光景を覚えているから。
冬だろうか。秋だろうか。
温度も、音もない世界で。
ある日、母だけがいなくなった。
だからその出来事は。
時間を失って、僕の中で「時系列推定不能」のフォルダに収められている。
>>>
僕が居場所を見つけられるようになったのは、多分、その年の冬から新しい年度にかけてだ。
今までと違う家。今までと違う学区。今までと違う家族構成。今までと違う学年。
そこで僕は初めて、フィクションの世界を知る。
姉妹の誰か(あるいは両親のどちらか)が持っていた「星の王子様」を、引越す前の家から持ち出して、読み始めたのだ。
もちろん、それまでだってフィクションのお話は身の回りに転がっていた。
TVのスイッチを入れれば、ドラマもアニメも、歌番組もニュースも、遠くて身近なフィクションを教えてくれる。
でもそれは、どれもこれも雑多で。美しさに欠けていた。
楽しさや悲しみやドキドキやわくわくはあったかもしれないけれど、肌をヒリヒリさせるような痛みや、しんと静まり返るような、自分の呼吸の音の大きさに驚くような美しさはなかった。
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── 現実世界にいいことなんてあっただろうか。
自分の意味さえ裏返って分からない世界に?
── 身体のある世界に楽しいことなんてあっただろうか。
手足のサイズも把握できず、味もロクに分からないこの身体で?
ボクは、うまく走ることさえできないんだ。
── 生きていて楽しい?
生きていない時の記憶がないから分からない。
(比較対象が存在しません)
── 死んでみたいと思う?
生きていることが、この程度のものでしかないのなら。
いつまでも、このままでしかいられないなら。
── 今は。楽しい?
楽しいというのが、ボクにはよく分からない。楽しいって、どういうこと?
>>>
無味無臭な現実世界の膜を破るようにして、そこには新しい世界が広がる。
「人物が書けていない」?
「世界観がはっきりしない」?
「リアリティがない」?
「テンプレート以上でも以下でもない」?
「設定に必然性がない」?
「薔薇は喋らない」
「箱の中に羊はいない」
「ウワバミに呑まれたゾウは帽子ではない」
「バオバブの木は小惑星を壊さない」
「そもそも星に王子様なんていない」
本当に?
>>>
「人物が書けていない」
あなたは自分が人間という人間の全てを知っていて、そのうえそれを描いたものを見たことがあるというの?
「世界観がはっきりしない」
あなたは自分が含まれている世界をはっきり認識しているの?
「リアリティがない」?
あなたは自分の肉体からの信号をだけ基準にリアリティを設定できるの?
「テンプレート以上でも以下でもない」?
あなたの認識するテンプレートは、誰が作ったもので、どのようにテンプレートなの?
「設定に必然性がない」?
必然性しか許さない?
>>>
ボクはフィクションの世界に棲むことを、7歳の頃から余儀なくされた。
ボクはフィクションを感覚することで、自身のカラダの感覚のアンマッチや性別違和(より正確には男性嫌悪だが)、家庭環境について考えない方法を身に付けた。
それは10歳まで続き、その間の記憶はときどき曖昧だ。
僕は学校でいじめられもしたし、貧血で倒れたりもしたし、猫と登下校していたし、授業はいつもテンポが遅くて退屈だった。
>>>
── 生きていて楽しい?
楽しくないよ。
>>>
僕は現実世界の人間たちを、フィクション世界のそれと同じように感覚して記憶する。
文字だけの世界で顔を持たない登場人物たちを、だから僕はそのまま、顔もないのに識別子を把握して記憶する。
多くは「人間」として記号を持たされ、一定のテンプレートに沿って己を「人物描写」している。
友人も、弟子も、過去の恋人も。親も、姉妹も、過去の自分さえも。
僕にとって興味深ければサンプリングの対象で、意味がなくなればサンプリングデータさえ抹消される。
もとより名前も画像データも、僕は記憶していないのだから。
だって自分しかいない世界なら、名前も顔を覚える必要も、ないものだから。
だから、今この瞬間、僕が玉ねぎの切り方を誤ったそのとき、自転車でバランスを崩して転んだそのとき、猫に噛まれた傷が痛んで6弦の力加減ができないそのとき、彼ら/彼女たちがどんなふうに僕に話しかけるかを(僕にとっては)完全に再現できる。
実際に彼らといるときに、僕はそれを試す。
僕はその先の僕のリアクションも計算する。
計算を間違えていた時が、やはり一番楽しくて、一般には笑う場面でもないのに、僕にはおかしくてたまらない。
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だから僕はいつもひとりでいて、だいたいいつも楽しい。
だから僕はときおり誰かといて、だいだいいつも楽しい。
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── 今は。楽しい?
楽しいというのが、ボクにはよく分からない。楽しいって、どういうこと?
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ずっと読みたかった本があったのだが、長らく(お金がなくて)買えなかった。
先日、やっと注文することができて(本屋も回ったんだよ? 回ったの!)昨日、届いた。
「4月は君の嘘」
もう何年も前の作品だろう。
たまたまネットで無料公開されていたものを読んで、驚いた。
僕にはこの作品が、詩に見える。
画が必要なのか、ストーリィが必要なのか、文字だけでいいのではないかと思うくらい、詩に見える。
もっとも、詩には言葉もいらないのだけれど。
そのくらい美しくて、ずっと全巻読みたかったのである。
出てくる曲の大半は知らないし、動画サイトで調べる気にもならない。
そもそも書籍は音を出さないメディアである。
そこからしてちょっと破天荒で楽しい。
画で伝わらないものを画が中心のメディアで描いている。
だから詩なんだ。
>>>
音楽のマークから音は再生されない。
女の子の可愛らしさは、カタチだけでは生まれない。
詩は、文字があってもできあがらない。
現実は、見えているものがすべてではない。
>>>
リアリティなんて、僕は生まれてこのかた、一度も感じたことがない。
ぜんぶ作りもので、ぜんぶ嘘で、ぜんぶ子供だましなのではないのか。
だから僕に、現実を見せようと躍起になるものたちを、僕は信じない。
彼らは騙されやすいのだ。
現実というカミサマを盲信する哀れな信者たち。
いくら信じてもムダだ。
その神様は不完全だから、たとえ最悪のことはしなくても、いくらでも悪いことを押し付けてくる。
いいことがあるかのように吹き込んで、夢見るものたちから搾取する。
ヒトにとっての現実なんて、その程度のものだろう。
猫の神様は完全無欠だから。
いいことも悪いことも起こらない。
信じても信じなくても関係がない。
猫にとっての現実は「その程度」ですらない。
>>>
── 生きていて楽しい?
楽しくなんかないよ。楽しくなくてはいけないの?
楽しめない人は、生きていてはいけないの?
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::知らないの?
女の子はみんな欲張りなんだよ。
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[出典]
~ List of Cite ~
引用は、
「第21話 りんご飴」(文頭部 p.37 / 文末部 p.31)
From
「四月は君の嘘(第6巻)」(著作:新川 直司 / 発行:講談社)
によりました。
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[NEXUS]
~ Junction Box ~
[ Cross Link ]
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[Engineer]
-工場長-/-青猫β-/-赤猫-/-銀猫-
[InterMethod]
-Blood-Color-Darkness-Diary-Interface-Love-Memory-Stand_Alone-
[Module]
-Condencer-Connector-Generator-Reactor-Transistor-
[Object]
-Book-Friend-Human-Koban-Memory-
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[Cat-Ego-Lies]
-ひとになったゆめをみる-
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