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//TimeLine:20180521
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TITLE:
ディスコミュなら幸せ。
SUBTITLE:
~ Discommunication is my life. ~
Written by Bluecat


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//[Body]
 勤務先の社長が亡くなったのは、およそ2ヶ月前のことだ。
 社員が僕しかいないという、きわめて特殊な環境下だったけれど、役員でもある彼の奥様の決定で即日僕は仕事を失い、会社は解散のための手続きに入った。

 この2ヶ月間の僕は、だいたいぼんやりと過ごしていた。
 久しぶりにうんざりするくらいゲームをすることができたし、人に頼まれて接客業のバイト(他者からすると、接客業スキルが高い、らしい)をして脱水症状を起こして身体を壊し、療養中だったりもしている。
 Kさんや弟子から、ときどき電話が来る。
(Kさんは私をその「接客業のバイト」に誘い込んだ張本人なのである。僕が退職してのちも、そのようなわけでKさんとはやりとりが続いている)

 ほとんど引きこもりなので、買い物も1週間以上出かけていない。
 最後に誰かと会話をしたのは、およそ1週間前だろうと推測する。
 資本主義社会の一員として考えると、もはや「何もしていない人」に該当する。
 弟子など、心配のあまり就職口を見つけて連絡してくれるほどである(その電話は無視したが)。

 体調が悪かったこともあり(なにせ、お粥すら消化できない日が続いた)家の中は洞窟のようになっている。鍾乳石が上から下から伸びていたとして不思議はない。

 カーテンを閉め切って眠り続けて、目覚めたらゲームをして、空腹になったらお粥を作って(たいていは30分程度でなんらかの身体反応により排出して)、消化するのにとても体力を使うようで、放っておくと異常なほどの睡魔が襲ってくるので眠る。
 昼も夜も関係ないし、季節も、曜日も、あまり関係ない。
 こんな暮らしがしたかったといったら、まぁ、さすがに言い過ぎかもしれないが、けっして悪い気はしない。

 子どもの頃から、誰もいないで一人きりの世界にあこがれていた。

 もちろん(おそらくは残念なことに)僕の周りにはまだ幾人か、僕のことを記憶し(身勝手に)気に掛ける類の人間が存在する。
 特に妹は、僕がこの世を先に去ることを悪魔に誓って許さないだろう(おそろしや)。
 面倒だけれど、もう少し、生きなくてはならないらしい。

 ちょうどよく体重が減ってきたので、体調を整えながら、明日あたりは病院に行こう、と思って1週間が経つ。

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 ずっと眠っていると、いくつかのしがらみのようなものが、自分の中で瓦解する。
 僕はそれを「忘れる」と表記するけれど、実のところ、一般認識の「忘れる」よりは「思い出さない」に近いのかもしれない。
 記憶はそこにあって、思い出すことはできるのだけれど、その記憶に執着しないし、反射的にその記憶を反芻することもない。
 人間の多くは、記憶に縛られて生きているし、記憶がその人の人格を形作る大きな要因だろうから、その意味で、眠り続けるだけで不要な価値観を取捨選択できるのは大変ありがたい機能である。
 もっとも最低でも3ヶ月は俗世との縁を切り離さなくてはならないので、たいていの人は無理だろう。僕自身も無理をしていると思う。
 ただ、こうしていると、自分の生きる意味や、他人の存在の価値について考えることができる。しかも冷静に。

 そういう意味では、誰しも、半年くらいディスコミュのために山に籠もったりすればいいのだ。
 観光客が邪魔だから、ものすごく辺鄙な場所に行くか、自宅付近の公園で野宿し続けるのもいいだろう。
 お金があるならホテルでカンヅメ、という手もあるし、家族がいなければ自宅警備員に徹すればいいし、家族がいるなら別宅を借りればいい。
 半年も独りで過ごすのは、とても贅沢な経験だ。体調がよければなおさらだが、体調が悪くても、よしんば眠り続けていても、貴重な経験だろう。
 可能であれば、携帯電話は(壊したくない場合は)電子レンジや冷蔵庫に入れてしまうといいだろう。固定電話は(壊したくない場合は)プラグを抜いて、押し入れにでもしまい込もう。
 インタフォンの電源を落として、あとはとりあえず眠るだけだ。簡単だ。クマでもできそうだ。
 もちろん、たいていの人はしないだろうしできないだろう。
 でも僕はそれをしたいし、できるし、している。
 さすがに電話は(一部の人が心配するので)電源を入れて、必要に応じてあとで掛けている。すぐに出たりしない。面倒だから。

 あ、そうそう。自分や他人の、意味や価値だった。

 極論を言ってしまえば、まったくもって意味も価値もない。
 今日、たった今、すべてやめてしまってもいいではないか。と思う。
 ちょうど5階に棲んでいる。友人や恋人は極力減らした。
 僕の棲んでいる場所は、実は、妹も知らないのである(必要なときはこちらから出向くから問題ない)。

 ただ、まぁ、自死を選択する強い動機はない(あれは絶望とかをはじめとした、強い動機を必要とする)のでこうして粥が煮えるまで、日記を書こうと思い立った。
(僕は努めてぼんやりのんびりしているので、いろいろなことに動機を持たない)

 そろそろ履歴書を作るか悩んでいるのだが、我が家にはプリンタがない。かくも書くのも面倒なことである。








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