// ----- >>* Initialize Division *<< //
//TimeLine:20190521
// ----- >>* Header Division *<< //
TITLE:
肉が裂ければ血が流れる。
 
SUBTITLE:
~ My blood may be your pain. ~
Written by 赤猫
 

// ----- >>* Body Division *<< //
//[Body]
 自分が痛みを感じているときにこそ、他の誰かの痛みに敏感であれ。
 いつだったか、そんな言葉がどこからか生まれて、僕の中に居着いてしまった。
 
 四苦八苦のおよそすべてについて、だから、他人がそれを語るときには自分の体験したそれになぞらえて、僕は僕の話を『しなかった』。
 なぜといって、他人の苦しみに対して、自分の経験と対策を語ったところで何の役にも立たないから。
 苦しみは固有で、痛みは個別だ。
 だから他人の痛みなんて誰にも分からない。
 僕の痛みが誰にも分からないように、僕に悩みを打ち明ける誰かの痛みは、僕には分からない。
 分かったフリをすることはとても簡単なことだったけれど、それを僕はしたくなかった。
 なぜといって、そんな演技をする人間は意識的にであれ無意識にであれ、その演技に見合うだけの出演料を求めているものだし、顕在的にであれ潜在的にであれ、同じ痛みをこじらせているから。
 
 他人をそんなふうに利用するのは、相手に対しても失礼だし、自分の首も、最終的には絞めることになる。
 救われないのはお互い様で、だから、誰かの痛みや苦しみは自分の痛みや苦しみでもあり、それと同時に、鉄の檻に入れておくべき、伝染病を持った猛獣のようなものでもある。
 興味を持つのは仕方ないかも知れないが、必要以上に近づいてはいけないし、自分の檻も、他人の檻も、みだりに開けるものではない。
 噛まれた感染者は、必ず次の感染者を作ろうとするから。
 
 僕の話はいつも抽象的で、他人事のようだ。
 僕は人からそう指摘されるまで、まったく自分で意識もしていなかった。
 でも、そう。
 自分の話なんて、したくない。
 理解されもしない話をして、同情や理解を求めるなんて、まったくどうかしていると思う。
 あるいは仮に、理解を集めたとして、一体何になるのだろう。
 シンパシーを感じる誰かがいると、一体何だというのだろう。
 
 ただ記憶と経験と、そこから抽出した法則性はある。
 だから僕は注意深く、自分の記憶や経験を取り除く習慣がついてしまった。
 まるで古めかしい外科医が体内の不要な部位を鋭利なメスで切除するように。
 結果的に、僕の思考をフィルタすると、僕自身の話がまるで他人事になる。
 仕方ない。
 僕自身にとっての話は、僕自身の中で大切に、いつまでも、保管され、抽出されて、朽ちてゆく。
 枝葉の記憶や、僕自身のエゴを語って何になるだろう。
 
>>>
 
 そのようなわけで他人の痛みや苦しみについて、適切な距離を持って、なおかつ自分の話にすり替えることもなく適切なアドバイスができたり、あるいは取り返しのつかないような古疵であるならばそれはそれで上手に聞く能力を持つ人に対して、単純に敬意を持ってしまう。
 そしてその一方で自分が痛みを感じているときに、猛威を振るうタイプの、手負いの獣のような「人間」が多い様相を観察するにつれ、大げさではなく、僕は疲れていった。
 自分が痛みを感じているときに誰かの痛みを慮るなんて、おそらく多くの場合は無理なのだ。
 たとえそれが、有用で現実的な現実逃避の一つの手段であったとしても。
 現実的でない現実逃避が、現実を壊滅させることがたとえあるにしても(たとえば妄執や現実世界の生活の放棄など)、それでも理性を失ったように、彼ら/彼女たちは自分の傷について吠え立てる。
 
 個人的な理想や姿勢という意味で持つぶんには意味もあるだろうけれど、他人に期待すべくもない。
 他者は、いつもどこか獣じみている。
 社会も同様で、たとえば資本主義社会であろうと共産主義社会であろうと、咀嚼する肉を探す獣の群れには変わりない。
 自分の肉や、血や、牙や、骨にしか関心のない生き物たち。
 痛みの一過性を、どうして学ばないのだろう。
 
 彼ら/彼女たちは、子どもの頃に学ばなかったのだろうか。
 あるいは母親に、教わらなかったろうか。
 
 無論、僕は教わらなかった。
 自分で見つけたのだけれど、そうした一般論は、はたしてどこまで「他人事のよう」で「現実世界で何の役にも立たない」のだろう。
 
 自分という獣を自分からある程度の距離に切り離しておくことは、そこまで奇異で愚図なことだろうか。
 単に己の理性を失う獣の数が、そうでない者よりも多いという、たったそれだけの事象に根ざしているようにも思える。
 よく分からない。
 
 
 
 
 

// ----- >>* Junction Division *<< //
[NEXUS]
~ Junction Box ~
 
[ Traffics ]
 わたしのきおくもけしてゆけ
 
// ----- >>* Tag Division *<< //
[Engineer]
 
[InterMethod]
 
[Module]
 
[Object]
  -Human-Poison-
// ----- >>* Categorize Division *<< //
[Cat-Ego-Lies]
 
 
 
 
 
//EOF