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//TimeLine:20180501
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TITLE:
液体のようにいれたらいいのに。
SUBTITLE:
~ Like a liquid for my heart. ~
Written by BlueCat


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180501

 ここ数ヶ月、叔母からの電話を無視している。
 単純に面倒だからであり、労力に見合っただけの精神的なヨロコビがない。
 僕自身は基本方針として、精神的なヨロコビのために自分のありとあらゆるリソースを消費することにしている。

 もちろん、苦痛だけれどもしなくてはならない、ということもある。
 たとえばいくつかの役所での手続きであるとかがそれである。
 でも、それ自体も楽しみ方はいくらでもある。

 叔母との関係は、どうも楽しめない。
 感謝されないから、というわけではない。
 叔母は、僕の労をねぎらってくれるし、感謝の言葉も掛けてくれる。
 経費が掛かった場合、それを請求すれば支払ってもくれるだろう。
 いちばんの問題は他人を思うように動かそうという無駄な煩悩が強いこと。
 二番目はひとこと余計に言ってしまう愚かさ。

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 他人を支配したがる人間の多くは、どういうわけか自分でやらない。
 自分でした方が早くて正確で楽しくて心地よいものが手に入るのに、どういうわけかそれをしない。
 彼ら(彼女たち)が手に入れたいのは「誰かをして私にさせた」ということも込みにした結果なのだろう。

 僕にはにわかに信じがたいのだけれど。

 たとえば僕が恋人に「コーヒーを淹れてくれ」と頼んだとする。(今までの人生にもなかったし、この先もまずありえない依頼だが、ここは設定なのであきらめよう)
 100%僕の気持ちを満たしてくれるコーヒーが出てくることはない。
 僕が恋人にポトフを作ってくれと頼もうが、僕のWeb文書のタグ付けを頼もうが、100円ショップでの買い物を頼もうが、どれもこれも100%気持ちを満たす結果は得られない。
「買い物もか!」と驚く人もいるかもしれないが、自分以外の誰かに買い物を頼むのは、存外気を揉む。
 ちゃんとたどり着けただろうか、目的のものは見つかっただろうか、途中で事故や事件に遭ったりしていないだろうか、お財布はちゃんと持っただろうか、体調が悪くなったりしていないだろうか、といった具合に。
 待っているぶん、その時間がつらいのだから、一緒に出かけるか、独りで出かけることになる。
 最善は恋人が来る前に自分で済ませておくことである。

 単純に、業務上の仕事であれば、僕より早くて正確で最適な出力ができる人を僕は少なからず知っている。
(もっとも今の職場はきわめて特殊な環境なので、同僚が一人もいないが)
 けれどもプライベートだと、僕にとって最適な出力を僕以上にできる人間がいるとは、経験上とうてい思えない。
 ストライクゾーンが狭いことは認める。広くとることは容易で、極めて有効な手段だ。他人に任せる場合は。
 でも、他人がしてくれることに満足することと己の満足を追求することは異なることで、ために合致することは少ない、と僕は感じる。

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 叔母を個人的に嫌う理由はたいしてない。
 もうじき(少なくとも僕よりは先に)死ぬ人だし、害もない。
 両親のいない僕のことを少なからず気に掛けてくれていることも知っている。
 ただ、介護に関連したこの数年間で、少々お互い踏み込みすぎたのが実際のところだろう。

 正直なところ、僕は誰かと一緒に暮らすということができないのではないかとさえ思う。
 べつに叔母の作った料理や、出すお茶、洗濯の仕上がりや洗濯機の使用方法に苦言を呈したことはない。

 他人に自分の満足を求める行為の愚かさ(あるいは確率の低さ)を僕は知っているつもりだ。
 だから不満であることが当然であって、他人が自分のために何かしてくれること自体、その時点で嬉しいことではあるのだ。

 ここまでの論調でいくと、僕は他人を「僕よりも無能で役に立たなくて、繊細にして博識なる僕に満足をもたらすことなどできない」と言っているように思えるかもしれない。
 実際その通りなのだけれど、だからといって僕は彼ら(あるいは彼女たち)を馬鹿にしているわけではないし、僕の方が優れていると思っているわけでもない。
 単純に「僕という個人を満足させる」という目的そのものがあまりにも複雑であるために、その目的を果たすことにおいて他者にはそれがむつかしい、という当たり前のことを言っているだけである。

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 しかし叔母は、私を支配したがる。
 私の家系の血を引いているから、やれ煙草を吸うな酒を飲むなと、まるで中高生のように言われる。
 害になるのは十分に承知していて、僕は僕の死生観に基づいて寿命を浪費しているのだから、そこはそっとしておいてほしい。
 ただでさえ、僕は基本的に、世間から隠れて飲酒喫煙をしているのだから。
 買い物を頼まれて買ったとしても、ものに対する基準が異なるらしく(こんな高いものは不要だ)などと陰に罵られる(残念なことに、人との接触をなるべく控えている僕の耳にも入ってしまう)。
 こういう、他人の時間を自分の時間と勘違いしている人間というのが、どうしても苦手なのである。

 僕はモテのわりに(自分で言うか)人を誘って遊びに出かけたり、デートに誘うことが少ない。
 それはつまり、相手のことが好きではないとか会いたくないとかではなく、安易に自分のために使いたくないのである。
 けれども(家族も含めた)他人の時間を自分の時間と履き違えるタイプの人間というのは、仮にお金にシビアであったとしても、きちんと約束の時間を守る人間だったとしても、他人のリソースにはルーズなのだ。

 人間の一生は、有限である。
 それは自分も他人も一緒だろう。

 なるべくなら、自分の持っている時間は嬉しいことや楽しいことで満たしたい、というのは誰でも同じように思っていることだろう。
 誰かが楽しんだり喜んだりするために時間を使えるのなら、それは素敵なことだと僕は思う。
(ために僕は、誰かのために買い物をしたり、料理を作ったり、掃除をしたりすることはまったくもって苦にならない。たいていの労働もそうした側面に目を向ければ驚くほど楽しい)
 ただ、僕のように自分の満足がきわめて複雑であることをきちんと認識している人は思ったより少ないし、それを提示しながら他人を使役して学習させることのできる人なんて、僕も含めてほとんどいないのだ。

 彼ら(あるいは彼女たち)は自分の過不足のために他人を使役し、それに感謝こそするけれど満足はしない。
 この「感謝こそすれど満足しない」というのは、僕のこれまで言っていることと一緒で、つまるところ他人を使役することに抵抗がない(あるいはヨロコビがある)だけに厄介だ。

 けれどもそうしたあたりまえの事実をわざわざ、自分の価値観をなかなか変えたがらない類の頑固な、なおかつ老い先の短い人に言って聞かせて納得させるものだろうか。
 僕はそうも思わない。
 僕が絶対に正しいという自信もない。

 こういう姿勢というのは、誰かに教わることもあるかもしれないが、多くは自省して身につくものではないだろうか。
 わざわざ目上の人に言わなくてはならないこと自体、そうとうに悩ましいことである。

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 とまぁ、こんな感じであれこれ悩んでしまう。
 子どものいない叔母夫婦の、介護以外にも面倒なことを手伝ってしまったので、なんというか、複雑な心境であることは否めない。
 結果的に、僕は気持ちよく彼女たちに使役されることができない。
 なぜなら満足のレベルが理解できないから。
 そんなこんなを考えていると、どうにも気が重くなって、最近は自閉している。

 ひとりを無視し始めると、どうにも気が重い。
 なんとかしなくてはと思いつつ、留守録さえ聞く気にならない連休である。
 放っておけば、自閉が進んで鬱病チックになってくる。
 そういう自分の性質は心得ている。
 ひとりの電話を無視し続ければ、他の人の電話を取るのも面倒になるのだ。

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 ことほどさよう、誰かを満足させることはむつかしい。
 どんなに美味しい料理を作ったとしても、たとえば人参が嫌いな人にポトフを食べさせるのがむつかしいというようなことはある。
 誰かの十全な満足を考えるとき、あるいは誰かの充分な幸福を考えるとき、だから、誰かといることの複雑さや、誰かと長く一緒に生きることの恐ろしさを思う。
 それは自分の十全な満足を考え、自分の充分な幸福を考えるのとはまったく異なることだから。

 簡単な言葉で言うと、ちょうめんどくせぇ。

 僕のような人間は、ちょっと気の利いたデザートのように、たまに誰かのテーブルに載る程度がちょうどいいのだろうと思う。
 少なくともこれまでのところ、僕のヘンタイっぷりにまともに付き合えた人間は一人しかいないわけだから。
 おおかたの人間は「あなたは何を言っているのか分からない」と言い出すのだ。たとえば叔母がそうであったように。








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