■昔の記憶

遠い昔に受け持っていた生徒。

子どもが失敗しないよう、何もかもお母さんがやってしまうという典型的な母親先行型のご家庭でした。

私は口出ししませんでしたが、一番不味かったのは、30分勉強するごとに100円を子どもにあげるというシステムでした。

その子は、自分の立場を完全に錯覚していきました。


■束の間

月日は過ぎて、それから5年。

実は非常にまずい状態になっていると、お母様からご連絡がありました。

私は成績の悪さに驚き、どれだけ勉強をサボったのだと本人を問い詰めたのですが、話し合ううちに、問題の本質は別にあることが明らかになっていきました。

お母様は、日常的に子どもから殴る蹴るの暴行を受けており、全身を骨折していたのです。


■落差

私は烈火の如く怒り、子どもを怒鳴りつけました。

生徒に対して声を荒げたのは、後にも先にもこの時だけです。

子どもは初めて自身の罪の重さを知ったかのように、呆然としていました。

一方、骨折した身体で新しいiPhoneを子どもに買い与えようとするお母様の姿に、私は、ただ哀れみを覚えたのです。 



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