■コラム

久しぶりに、小さなネタを。

ある問題集に、四則演算で使う記号の由来について書かれているのを見つけました。


ちょっと一息のコラム、みたいな感じですかね。



+ ラテン語の et に由来。筆記体で素早く書くうちに+に変化したという説。


× 十字架を斜めにした形から作られたという説。



斜めの十字架とは、何でしょう。


おそらくは、「アンデレ十字」のことでしょう。




■聖アンデレ十字

The Martyrdom of St. Andrew   Bartolomé Esteban Perez Murillo(1617-1682)


十二使徒の一人である聖アンデレは、自身の処刑に際して、十字架に磔にされるのを拒んだそう。


あの方と同じ方法は恐れ多いので、せめて十字架を斜めにして欲しいと。




ちなみに、聖アンデレを最も敬う国は、スコットランドです。


この地にキリスト教を初めて持ち込んだのは、聖アンドレであるとされるためです。 


畏敬の念は、国旗にも表れています。




■逸話 


ところで、聖アンドレには、次のような逸話が残されています。



ー弟子のひとり、シモン・ペテロの兄弟アンデレがイエスに言った、「ここに、大麦のパン五つと、さかな二ひきとを持っている子供がいます。しかし、こんなに大ぜいの人では、それが何になりましょう」。〜中略〜 そこで彼らが集めると、五つの大麦のパンを食べて残ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。ー 


(ヨハネによる福音書第6章8-12節)



簡単に言うと、わずかなパンが倍々に増え、5千人に行き渡ったというお話です。


このエピソードを上手に拾ったのが、ウィリアム・オートレッド。(と私は思います)



Clavis Mathematica(数学の鍵)1631    William Oughtred


彼は神学者であると同時に、数学者でもありました。


彼の業績は、それまでの数学を簡潔に整理したことと、画期的な演算記号を発明したことです。


比率を表す :    という記号も、彼の発明として有名です。


もちろん、何かが倍々に増えていく乗算記号 ×    も、彼の発明です。




■足し算記号 +


ちょっとながくなってしまったので、最後はかけ足で。


+記号が、ラテン語の et に由来するという説には、んーどうかな?と私は思ってしまいます。


もっと素直に考えて、+ を見た時に連想するのは、十字架では。


ラテン語では、和を sammus や summa と表しますが、これは同時に、「最高の存在」のような意味を持ちます。

至高のワイン


英語で和を sum と書くのは、その名残りです。


神学大全(トマスアクィナス), 墓地


+ 記号の由来は、素直にこれらだろうと私は思います。




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