今日は、質問の多い高校物理の中から、特に質問の多い場面を少し。
■運動方程式
高校物理で最も大切な公式は、次の通り。
F = ma
F:力
m:質量
a:加速度
Fという力で質量mの物体を押すと、aという加速度が生まれます。
「力Fを与えたこと」が因であり、「(質量mに)加速度aが生じること」が果にあたります。
F = ma
因: F
果: ma
運動方程式とは、因果律を示しているのです。
■問題
滑らかな平面に置いてある質量mの物体に、初速V0が与えられている。
この物体が移動して粗い面(動摩擦係数 μ')に差し掛かった時の加速度aはいくらか。
■答え
a = -μ'g
■解説
「こんなの簡単!」と分かってしまう子は、それで構いません。
ただ、そこに疑問を感じる子も多くいます。
その場合、物体にかかる力を次のようにおきます。
右向き:F
左向き:f'
質量mの物体に加速度aが生じるわけですから、運動方程式は次のようになります。
F - f' = ma
因:「右向きの力 F と左向きの力 f' の差」
果:「ma」
動摩擦係数が μ' のときの摩擦力 は次の通り。
f' = μ'mg
ところで、右向きの力Fとは何でしょう。
初速V0が与えられているということから、何らかの力が働いていると錯覚してしまいますが、そうではありません。
物体は、滑らかな(摩擦0の)平面を惰性で動いているに過ぎません。
つまり、実は右向きの力などありません。
F = 0
したがって、運動方程式は次のように変形できます。
F - f' = ma
0 - μ'mg = ma
ma = - μ'mg
a = - μ'g
■公式
上の例をうまく解けない子は、F = ma とだけ強く覚えている場合が多いです。
「逆向きだから加速度はマイナスになるでしょ?」という説明にも、納得できるようなできないような…
何かを習得する上で、公式の丸暗記という作業は、なるべく避けたほうが良いと私は思っています。
「丸暗記では本質を理解できない」ということもそうですが、何よりの弊害は、納得のできない説明でも受け入れてしまうことです。
丸暗記という行為には、自らの内に湧いた疑問を打ち消す力があるからです。
C.O.D. Club

