質問を受けたのでシリーズ。
■奇妙な例文
例文0
She will make him a good wife.
この文に違和感を感じるとしたら、よく勉強している証拠です。
make を使役動詞と考えて直訳すると、「彼女は彼を良き妻にした」となってしまいます。
ところが、この例文は、一般に次のように訳されます。
She will make him a good wife.
彼女は彼の良き妻になるだろう。
慣用的にこう言うのですから、仕方ありません。
実は、この例文は世の英語関係者を悩ませ続けており、その文法解釈を巡っては、未だ議論が続けられています。
今日は、これについて、ブログで書ける範囲で説明をしていきます。
勘の良い方は、今日の記事の歯切れの悪さについて、理由をお察しになるかもしれません。
■make
例文1
She will make a cake.
彼女は、ケーキを作るだろう。
厳密に言えば、彼女はケーキを make(作り出す)だろうとなります。
今この時点でこの世にないケーキという存在を、創出する と。
例文2
She will make him happy.
彼女は、彼を幸せにするだろう。
him happy (彼に幸せが与えられている)という状況を、彼女が make(創出する)と。
ここで、始めの例文に戻ります。
例文0
She will make him a good wife.
him good wife(彼に良き妻が与えられている)という状況を、彼女が make(創出する)と。
したがって、「彼女が良き妻になる」というわけです。
make という動詞を、「存在状況を創出する」という意味で捉えれば、多くの英文は、易しく感じられるかもしれません。
■wife
wife の語源は wif で、大元は「恥」という意味です。
現代のドイツ語にも、語源を同じくする weib という言葉がありますが、これも本来、女性に対する差別的な言い回しです。
また、女性を表す英単語に girl がありますが、昔の表記は、gill(魚のエラ) です。
古い西部劇などでは、「おい、女!」という日本語字幕に対し、「ギル!」と発音されるのを見ることができます。
かつての西欧世界における女性の地位は、日本とは比較にならないほど、極めて低いものでした。(土台となる宗教が全く異なる故)
現在に見られる西欧の強い女性像は、その克服の証と見ることもできます。
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