■三単現

英語を習うと、初めの頃に、三単現の s なるものが登場します。

なんですかそれ、みたいな。


三単現の s は、元々 th と表されていたことは、ご存知ですか。

has は hath と、does は doth と表記するのが、本来の姿でした。

時代と共に th が s に置き換わっていく様子は、以下の表を見るとよく分かります。

Kytö, Merja. "Third-Person Present Singular Verb Inflection in Early British and American English." Language Variation and Change 5 (1993): 113--39.
 

あるいは、シェイクスピアを見ると分かります。

JULIET: This doth not so, for she divideth us. 
Romeo & Juliet III.v.30 (原文)

ROMEO: Her eye discourses. I will answer it. 
Romeo & Juliet II.ii.13 (原文)


シェイクスピアの戯曲の中では、三単現を表すのに、s と th が混在しています。

16世紀に綴られた英語の最大の特徴は、ここにあります。



■ガラパゴス的

三単現の th を s と表記するようになったのは16世紀の初頭からで、18世紀初頭には、ほとんど th は使われなくなりました。

th の代わりに s を用い始めたのは女性や比較的身分の低い人たちでしたが、その辺りをもって、ジェンダー論や社会階層論へとつなげていく研究も多く見られます。

それら素敵な研究を眺めつつも、私は別のことを考えるのでした。



■オルフェ(ὈρφεύςOrpheusOrphée)
冥界のオルフェ Jean-Baptiste Camille Corot

ギリシャ神話に登場する詩人オルフェは、人類の起源について、こんな風に説明しています。


全能の神ゼウスは、息子であるディオニュソスを殺した巨人(タイタン族)に怒って稲妻を浴びせたが、その際に灰となったディオニュソスと巨人が混ざり合い、人類が生まれたと。

だからこそ、人間の魂には神性が宿りつつも、罪深いのだと。

善悪を合わせ持った人間の矛盾について、美しい詩をもって説明がなされています。


La caída de los Gigantes      Jacob Jordaens

文化人類学的な見地からは、巨人とは自然の荒々しさや残酷さを表したものと考えられますが、神々が巨人を退治するような伝承は各地で見られます。

ギリシャより北方での巨人は、þursar(スリサズ)として伝承にあります。

þ の一文字でも意味は変わらず、巨人を表します。


þ とは、神々とは異なる、劣った存在という意味合いです。



現代英語で þ は、th です。




■序数

1,2,3,4,5,6,7…
 
first
second
third
forth
fifth
sixth
seventh


以上の数には、必ず th がつきます。




英語の成立は、その本質において、詩的なのです。





という長い夢を、先日みたばかりです。

たぶん、映画を観ながら眠ったせいと思います。




ロミオ: おお、ジュリエット。あなたはどうして三単現の s を付けるの?

ジュリエット: あなたはどうして付けないの?
 


 
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