■曜日シリーズ
月曜日 Monday
火曜日 Tuesday
…
それぞれの曜日は、どうしてそういう名前で呼ぶのでしょうか。
今日は、曜日シリーズを一挙公開。
たぶん、スターウォーズくらい長いです。
■ヨーロッパの混ざり合い
ヨーロッパは陸続きですから、昔から言語や文化が混ざり合ってきました。
イギリス、ドイツなどの北方で話される言語はゲルマン祖語をルーツとし、イタリア、スペイン、フランスなどの南方はイタリック祖語をルーツとしています。
英語について言えば、1000年ほどの歴史を経て言語が混ざり合い今の形となりましたが、文化はさらに古くから混ざりあっています。
例えば、曜日の数え方です。
これより先は、ざっくり「北のゲルマン神話」「南のローマ神話」と捉えて下さい。
■水曜日
以前、水曜日はなぜ Wednesday なのかという事について書きました。
Wednesday の直接の語源はゲルマン神話のオーディン(Ordin, Woden)ですが、オーディンはローマ神話で言うところのメルクリウス(Mercurius)にあたります。
メルクリウスが水星の神であることから水曜日となったというのが大まかな筋です。
さて、ゲルマン神話ではオーディンに息子がいるとされます。
それが 雷神 ソー(Thor)です。
■木曜日
木曜日は、雷神 ソー(Thor)の日とされ、Thor's day が Thursday(木曜日) となりました。
ローマ神話では、主神のユーピテル(Juppiter)にあたります。
日本語ではジュピターと発音することが多いですが、これは木星のことです。
木星は太陽系で最も大きい惑星であるため、主神として崇めたものと思われます。
実は、元々のゲルマン信仰では、オーディンよりソーの地位の方が上でした。
神話が語り継がれる中でいつしか最高神となったオーディンには、最愛の妻がいました。
それが、愛の女神 フリッグ(Frigg)です。
■金曜日
金曜日は、フリッグ(Frigg) から Friday となったとされます。
ローマ神話における愛の女神は、ウェヌス(Venus)です。
日本語では、ヴィーナスと発音されることが多いと思います。
愛の女神はいつの時代にも語られ、ギリシャ神話ではアフロディテ(Aphrodītē)にあたりますが、そのアフロディテこそ金星を司る神です。
これら全てが混ざり合って同一視され、Friday が金曜日となりました。
ちなみにですが、奔放な愛を持つ金星(Venus)は、水星(Mercurius)という夫がありながらも、火星(Mars)とのロマンスが伝えられています。
あらら、よくありませんね。
■火曜日
Tyr's day が Tuesday となったことはもはや説明不要でしょうか。
テュールは戦いの神であり、男性らしさの象徴とされます。
ローマ神話ではマーズ(Mars)にあたり、火星を司ります。
♂という記号は、本来は軍神マーズを示すための記号であり、先端部は槍(やり)を表しています。
一方、♀はヴィーナスの手鏡を表しています。
だからと言って、不倫は良くないと思います。
月曜日に会社で会った時、気まずくないのでしょうか。
■月曜日
月を Moonと言うのは、 ゲルマン祖語の meno(測るもの) が由来です。
月の満ち欠けが、暦(29.531日)を「正確に測る」のに有用だったからです。
一方、月を表す別の言葉 luna には「狂った」と言う意味があります。
月の満ち欠けが、「豹変」を連想させるためです。(さっきまで機嫌よかったのに?!みたいな)
世界各地の神話でも月神は女神とされることが多く、月には「女性」の意味があります。
これは、月の周期が様々な生命の周期と一致するため、「生命の根源」である女性を重ねたと思われます。
「女性は豹変しやすい」という意味ではないはずです。(たぶん)
余計ついでに書いておきますと、ローマ(ギリシャ)神話における月神ルナ(Lunar)は純真な乙女であり、しばしば美青年エンデュミオーンとの悲話が語られます。
まとめると、週末も夕方を過ぎた頃に悲話として語られるのが、毎週きっちり正確にやってくる月曜日と言えます。(私は仕事が好きですよ)
ところで、週末土日の解放感には、実は複雑な背景があることはご存知でしょうか。
■土曜日
土曜日(Saturday)の語源はローマ神話の農耕神サタヌス(Sāturnus)ですが、ヨーロッパの多くの国では、これとは無関係な言葉をあてています。
イタリア語 sabato
フランス語 semedi
スペイン語 sabado
ドイツ語 samstag
…
これは、ヘブライ語の יום השבת が大もとです。
読みは 「シャバト」、意味は「安息」、聖書の中の言葉です。
聖書では1週間は日曜日から始まりますから、7日目にあたる安息日(休日)は、本来、土曜日のはずです。
これについて、キリスト教国であるローマ帝国は、異教徒への懐柔策として、帝国内の休日を異教の休日である日曜日に合わせたと言われています。
■日曜日
元々、古代ローマの人々はミトラ教(Mithraism)を信仰しており、主神は太陽神ミトラ(Mitra)です。
そのミトラ教の礼拝日が、日曜日(Sunday)にあたります。
太陽を崇める彼らは冬至が過ぎた頃、太陽の復活を祝うため、ミトラ教最大の祭儀を行いました。
それが12月25日であり、クリスマスはここに由来します。
カトリック教会では、12月25日はあくまでキリストの「誕生を祝う日」となっており、誕生日ではありません。
現在、世界中で日曜日が休日となっているのには、こうした経緯があります。
日本は、明治の文明開化の際に欧化政策を取り、ヨーロッパに合わせて日曜を休日としています。
■終わりに
もうそろそろ、やめにしないといけない雰囲気を私は察していますから、最後にこれだけ書き残しておこうと思います。
ミトラ信仰が古代のインド・ペルシア世界から始まったことは、リグ・ヴェーダ、あるいはマハーバーラタを見れば分かります。
西方へはミトラ(Mitra)として、東方へは弥勒菩薩(Maitreya, マイトレーヤ, ミイロ, ミロク)として姿を変えて伝わりました。
またある説によると、「ミトラ」に漢字をあてて「毘沙門天」となり、さらに日本で読みを与えられたのが、「ビシャモンテン」です。
それはつまり、多聞天(ヴァイシュラヴァナ)です。
いつも受験と無関係なことばかり書くあたり、太陽と月に背いていないかと心配になったので、太陽と月の話を書いてみました。
また見つかった、
- 何が 、-
永遠が、海と溶け合う太陽が。
アルチュール・ランボオ(1854-1891)
C.O.D. Club 〜曜日シリーズ 完〜
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