サソリとカエル

ある森で、一匹のサソリが川を渡ろうとしていました。

泳ぎが苦手なサソリは、カエルに向こう岸まで運んでくれないかと頼みました。

 
カエルくん、俺を背負って向こう岸まで泳いでくれないか?ー
 
いやだよ サソリさんを背中に乗せたらきっと僕を刺し殺すだろう?ー

君を刺したら俺まで溺れ死んじまう  そんなに馬鹿な事はしないよ-

カエルは仕方なく、サソリを背負って川を泳ぐ事にしたのです。

川の流れも穏やかだし、大丈夫だろうと。


半ばまで泳いだ頃、突然、カエルの背中に激痛が走りました。

後ろを見遣ると、サソリが尻尾を突き立てています。

薄れ行く意識の中で、カエルはサソリに聞きました。


サソリさん 何故僕を刺したんだ? これでは君も溺れ死んでしまうだろう?-

仕方が無いさ。何故なら俺はサソリだから。これが俺の性(さが)なのさ-
 
 

上はベトナム戦争の際、現地の子供たちの間で生まれたお話です。
 
アメリカが最も疲弊した戦争、ベトナム戦争。
 
自らも苦しむのに何故米軍は攻め入ってくるのだろうという疑問に対して、子どもたちは、それが彼らの性(さが)であると説明したのです。



■仏領インドシナ
 
このお話を理解するためには、ベトナムの受けた長い支配の歴史を知る必要があります。

実に、ナポレオン3世が宣教師保護を理由に軍を派遣して以降、ベトナムは徐々にフランスの支配を受け始めます。
 

その後、カンボジア・ラオスと合わせ、フランス領インドシナとしての位置を得るのです。


 

映画「青いパパイヤの香り」や「愛人(ラマン)」には、フランスとベトナムの関係が繊細なタッチで描かれています。

 

熱帯の湿気、草木の青い香り中に響くフランス語に、不思議な幻惑を覚えます。


※愛人(ラマン)は子供に見せるような内容ではありませんのでお間違いのないよう、念のため。

 

 

L'ODEUR DE LA PAPAYE VERTE

L' AMANT
 


■インドシナ戦争

祖国のために立ち上がったホーチミンは、ベトナムをフランスからの独立へと導きました。(第1次インドシナ戦争)

その後、様々な思惑が絡み合った結果、ベトナムは南北に分かれてしまいます。
 
北ベトナムのリーダーとなったホーチミンは南側にゲリラを送りこみましたが、それと戦ったのがアメリカ軍です。(第2次インドシナ戦争)

通称、ベトナム戦争。
 
映画「プラトーン」や「フォレストガンプ」には、この戦争の悲哀が描かれています。

 
FORREST GUMP
 
PLATOON

 


ソ連を味方につけたホーチミンは、巧みに国民を煽ります。



「ベトナムはフランスから独立を果たした。」


「しかし、今度はアメリカが我々を支配しようとしている。」


「我々は誰からの支配も受けない。」



南ベトナムを伐つという目的を、上手にナショナリズム運動へとすり替えていったのです。

 
 

■小国と歴史

ベトナムは大変に歴史のある国で、「ベトナム5000年の歴史」という言い回しがあるほど、その古代史は有名です。

彼らには、長い歴史と自然から授かった知恵があるのです。
 
そんなベトナムの子どもたちは、大国の支配欲を揶揄して、「サソリの性(さが)」と表現しました。
 
もはや私欲ではない、性(さが)だと。



■少女ムイ

子どもの感性と聡明さは、世界を冷静に捉えます。

物静かな少女ムイは、いつも静かに世界を覗き観るのです。


パパイヤの青さ香る、庭の塀から。

 

L'ODEUR DE LA PAPAYE VERTE
 

 
C.O.D. Club
 
 

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