「国立代々木競技場第一体育館」耐震改修工事の全容[前編]

 

 

 国立代々木競技場の第一体育館が改修工事を終え、2019年11月1日に営業を再開した。1964年開催の東京五輪のシンボルは、“原形”を保ったまま耐震性やバリアフリー対応を強化し、20年夏に2度目の五輪を迎える。

 

 

国立代々木競技場第一体育館の現況を南東から見る。同競技場は、これまでにも補修や改修を繰り返してきた。近年では2006年から07年にかけて天井裏のアスベスト除去工事、10年から11年にかけて大屋根の塗装工事などを実施。19年9月30日に完了した第一体育館の耐震改修工事は、創建以来、初となる(写真:日本スポーツ振興センター)

 

 

 無柱の大空間と「日本」をモチーフとするダイナミックな意匠を吊(つ)り屋根構造で一体的に解く――。丹下健三が設計した国立代々木競技場第一体育館は、1964年東京五輪の水泳会場として建設され、以降は「体育館」としての競技利用やコンサート開催など多目的施設として親しまれている。

 

代々木競技場は1964年開催の東京五輪に向けて建設された(写真:日本スポーツ振興センター)

 

 

創建当時の施工中の様子(写真:日本スポーツ振興センター)

 

 

 20年東京五輪ではハンドボール、パラリンピックでは車いすラグビーとバドミントンの会場となる。

 第一体育館の耐震改修に当たっては、入念な調査・検討を要した。

 

07年には屋根を吊るメインケーブルに問題がないことを確認。10~12年度にかけて耐震診断を実施し、耐震改修が必要なことが分かった。

 

14年には、川口衞構造設計事務所が耐震改修工事の基本計画をまとめた。

 

 耐震安全性の目標は、「大地震後、構造体の大きな補修をすることなく建物が使用できること」。

 

改修設計は丹下都市建築設計・久米設計JVが、施工は清水建設が担当した。

 

 耐震改修は、屋根を支える柱や鉄骨梁(はり)などの補強のほか、天井の落下防止対策を含む。

建築確認申請が必要となる大規模な修繕などには当たらないが、耐震安全性を時刻歴応答解析とGIs値(構造耐震指標)によって判定した。

 

建築基準法が求める水準の1.25倍を目標とし、最小0.39だったGIs値は、1.0以上を確保。建築保全センターによる評定書も取得した。

 

 

代々木競技場第一体育館の断面図(資料:日本スポーツ振興センター)

 

 

耐震改修後の代々木競技場第一体育館の外観(写真:大山 顕)

 

 

渋谷口から主塔を見る。主塔は2本のメインケーブル(写真上方中央)を支え、屋根荷重を地盤に伝える。耐震診断の結果、主塔回りは特に耐震性が不足していた(写真:大山 顕)

 

 

下部構造の立体モデル。赤色が補強箇所。主塔や地下1・2階のスタンド部を中心に耐震壁の新設や増し打ち補強などを実施した(資料:日本スポーツ振興センター)

 

 

地下2階耐震補強範囲図(資料:日本スポーツ振興センター)

 

 

主塔(A)断面図(資料:日本スポーツ振興センター)

 

 

主塔回りでの場所打ち杭の施工中の様子(写真:エスエス)

 

 

2階スタンド席の鉄筋コンクリート造のスラブは、「裏側」から連続繊維補強シートによる補強を行った。観客席を撤去し、作業用の開口を細かく設けて二重スラブの間に入り、作業を進めた(写真:エスエス)

 

 

岡本太郎による壁画。南ロビーにある。コンクリートブロック造の間仕切りは原則全て撤去したが、壁と一体のこの作品は補強して残した。天井スラブに鉄筋が固定されていなかったため、作品を傷めないよう配慮しながら鉄筋と炭素繊維で補強した(写真:大山 顕)

 

 

壁画部分の補強の概要(資料:日本スポーツ振興センター)

 

 

セミ・リジッド(半剛性)吊り屋根構造の屋根部分を見る(写真:大山 顕)

 

 

補強箇所を記した屋根の立体モデル。フランジのプレート補強2種類と座屈補強の計3種類の方法で補強した。モデルの色分けは、下の図面に示した各補強箇所の色と対応(資料:日本スポーツ振興センター、補強箇所の色分けは日経アーキテクチュアによる加工)

 

 

屋根の鉄骨梁の補強方法(資料:日本スポーツ振興センター)

 

 

 

日本が誇る丹下健三が設計した国立代々木競技場第一体育館

これは永久保存して欲しい!

これ程美しく象徴的な建物はない!!

見事に復活した!!!

 

 

出典=https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00110/00136/?P=1