銀河系の歴史を解く重要な手がかり、100億年前には別の銀河と衝突
ガイア宇宙望遠鏡のデータを基に、1億5000万個の恒星を含む天の川銀河を描いた図。オレンジ色と黄色の部分は、恒星が多く集まっている場所だ。このなかのいくつかの恒星について正確な年齢が計算され、そのなかでも最も古い恒星の集まりが特定された。(Illustration by ESA/Gaia/DPAC, A. Khalatyan(AIP) & StarHorse team; Galaxy map: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech))
夜空にきらめく星のなかには、天の川銀河(銀河系)が誕生した時からずっと輝き続けている恒星があることを科学者らが確認した。
そうした星々が集まって、天の川銀河はビッグバンから数十億年のうちに生まれ、渦を巻きながらさらに成長し、気の遠くなるような年月をかけて今のようになったという。
「宇宙最古級の星たちとほぼ同じ年齢です」と、スペイン領カナリア諸島にあるカナリア天体物理学研究所のカルメ・ガヤルト氏は語る。
その年齢とは、驚きの100億~130億歳。天の川銀河の初期の恒星の年齢がここまで正確に測定されたのは初めてだ。ガヤルト氏らによるこの研究は、7月22日付けで学術誌「Nature Astronomy」に発表された。(参考記事:「ビッグバンは宇宙の始まりではない」)
「天の川銀河の最古の星々を実際に特定したというのはとても興味深いです。
私たちの銀河系の過去について何かわかるかもしれません」と、米バージニア大学のクリス・ヘイズ氏は述べている。なお、同氏はこの研究には参加していない。
「そのような星が存在しているのはわかっていましたが、ようやく特定されました。銀河系の歴史を紐解く重要な手がかりになるでしょう」
銀河系の歴史は、考古学における遺物のように、恒星の年齢、組成、配置に刻まれている。
例えば、古い恒星を分析する過程で、研究チームは私たちの銀河が過去に別の銀河と衝突していたことを示す証拠も発見した。(参考記事:「21年後に巨大ブラックホールが衝突へ」)
およそ100億年前、原始の天の川銀河は「ガイア―エンケラドス」と呼ばれる小さな銀河と衝突した。
現在、天の川銀河の中に散らばる異質な青い恒星の集団は、消滅したガイア―エンケラドスの名残である。(参考記事:「天の川銀河、100億年前に小銀河をのみ込んだ」)
銀河の考古学
ガヤルト氏の研究チームが使ったデータは、主に欧州宇宙機関(ESA)のガイア宇宙望遠鏡が収集したものだ。
ガイアは宇宙に打ち上げられ、近隣の恒星約10億個の運動と位置情報を詳細に記録している。
そのうち、地球から6500光年の範囲内にある50万個の恒星に関して、ガイアが測定した距離から正確な光度と色を決定し、それらを基に恒星の年齢を計算した。
すると、いくつかの興味深いパターンが浮かび上がった。
簡単に言えば、天の川銀河のハロー(銀河全体を包み込んでいる球状の領域)にふたつの古い恒星の集団が存在し、どちらもほぼ同年齢で、少なくとも100億歳は超えているという証拠が見つかったのだ。ひとつは赤色、もうひとつは青色の星の集まりだ。(参考記事:「銀河系の質量は太陽7000億個分、暗黒物質が約9割」)
「ハローは私たちを囲んでいて、どの方角を向いても見ることができます。風船の中にピザが入っているところを想像してみてください。
ピザが天の川銀河の円盤で、風船のなかの空気と塵が、ハロー内の星々です」と、ガヤルト氏は説明する。
これら高齢の星々はその後、何十億年という長い時間をかけて今のような状態に落ち着いた。
【動画】恒星101
夜空にきらめく無数の星たち。恒星はどのようにして誕生するのか、その輝度や温度によってどのように分類されるのか、そして恒星が死ぬ時には何が起こるのか。
天の川銀河のはるかな歴史
赤色の星たちは、宇宙が誕生してから10億年以内に、それよりもさらに古い本当にごく初期の恒星が放出したガスや塵、金属をもとに生まれ始めた。
これらの星が集まって、原始の天の川銀河が形成されてゆく。(参考記事:「【解説】大発見? 宇宙最初の星を観測、真相は」)
その後約30億年の間、天の川銀河はゆっくりと静かにガスを捕らえ、せっせと恒星を作り続けてきた。
そして約100億年前、近くにあった小さな銀河と衝突する。
この小さな銀河は恒星の数が天の川銀河の30%しかない矮小銀河で、衝突によって大きい方の天の川銀河に吸収された
現在、失われた銀河の名残である青い恒星は、天の川銀河のハローに散らばっている。
しかし、その化学組成は天の川銀河の他の恒星と大きく異なっていた。
つまり、宇宙の別の領域で生まれたものと推測される。
青い恒星の集まりは、動き方も銀河系の他の星々と異なっていた。
これを発見したオランダ、フローニンゲン大学のアミナ・ヘルミ氏とその研究チームは、2018年、銀河同士の衝突に関する同様の論文を発表し、今は消滅してしまった矮小銀河に、ギリシャ神話の地母神ガイアと、彼女と天空神ウラヌスの間に生まれた息子エンケラドスからガイア―エンケラドスという名を与えた。
衝突して星の誕生が加速
今回、ガイア―エンケラドスと天の川銀河の衝突に関する新たな証拠を、ヘルミ氏らとは別の研究チームが提示したことを、米バージニア大学の天文学者で天の川銀河の衝突を研究するニタヤ・カリバヤリル氏は評価する。
衝突により、銀河の円盤部にあった赤い古代恒星はハローへ弾き飛ばされ、今日にいたっている。
それらは家庭用の天体望遠鏡でも観測できる。さらに、衝突によりガスが圧縮され、より大きくなった天の川銀河で一時的に恒星の誕生が加速した。(参考記事:「110億年前の赤ちゃん銀河団、爆発的に星を形成」)
これが天の川銀河にとって最初の大きな衝突だったのかどうかはまだわからないが、かなり大きな出来事だったことは間違いない。
「天の川銀河が経験した最も大規模な合体だったでしょう。最初の衝突でないとしても、最初期に起こったものではあるはずです」とガヤルト氏は言う。
「いつ起こったのかがわかったので、実際に絵に描いてみて、時系列を想像することができます」
ハッブル望遠鏡 50の傑作画像
M51の広視野画像。ACS、WF/PC2、NICMOSで撮影した多数のM51画像をつなぎ合わせて作成した広視野画像だ。
M51で最も目立つ構造、渦状腕をとらえたこの画像からは、スコビルのチームの研究テーマである、銀河レベルでとらえた恒星の進化過程がよくわかる。 NASA,ESA,S.BECKWITH(STSCI),AND THE HUBBLE HERITAGE TEAM(STSCI/AURA)
100億年前???
あまりにも過去過ぎて。。。。。
想像を絶する。。。。。。
ただ
宇宙は美しい!
この夏の暑さを冷やせそう~
出典=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/072400431/