壊れた遺伝子が進化の過程で復活、傷ついた細胞を予防的に殺す役目に

 

 

大きな体と長い寿命を持つにもかかわらず、ゾウがガンになる確率は驚くほど低い。研究者たちは、その理由を解明し、人間のガン治療に役立てたいと考えている。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS)

 

 

人間は30兆個ほどの細胞からできている。これらの細胞に加え、さらに多くの微生物が協調することで、心臓が脈打ち、消化系が機能し、筋肉が動いて、人間は活動する。細胞は時間とともに分裂し、新しいものが古いものに置き換わる。しかし、この細胞の入れ替えの過程において、遺伝子のコピーに失敗するのは避けられない。多くの場合、この変異がガンのもとになる。

 

 ということは、細胞の数が多い大きな動物ほど、ガンになる確率が高いはずだ。この理屈に基づけば、小型哺乳類の数百倍も細胞の多いゾウは、ガンになる確率がかなり高いことになる。しかし、実際はそうではない。

 

傷ついた細胞を抹殺する殺し屋

 

 リンチ氏のグループは、アフリカゾウ(Loxodonta africana)と小型哺乳類を対象に、他の遺伝子の違いについても調査を行った。特に注目したのは、複製が多い遺伝子だ。その結果、浮かび上がってきたのが、生殖能力を高める働きのある「LIF遺伝子」の1つ、LIF6だった。

 

「LIF遺伝子と聞いて少しばかり驚きました」とボディ氏は言う。生殖能力とガン予防はまったく別のことのように思える。しかし、リンチ氏はLIF6には別の機能、つまり傷ついた細胞を殺す役割があるのではないかと考えた。

 

 小さなウサギから巨大なクジラまで、ほとんどの哺乳類にはLIF遺伝子が1組しかない。しかし、ゾウやその親戚、マナティー、ハイラックスなどには、たくさんのLIF遺伝子がある。リンチ氏によれば、ゾウには「数え方によって」7から11組のLIFがあるという。

 

 なかでも、傷ついた細胞を殺す役割と関連があるのはLIF6だけのようだ。そして、これまでのところ、LIF6はゾウからしか見つかっていない。

 

 リンチ氏は、ガンを防いでいるのはこのゾンビ遺伝子だけというわけではなく、「LIF6は、もっと大きな仕組みの中で小さな役割を果たしているにすぎません」と言う。

シフマン氏も同意見で、「ほぼ確実に、他の発見ももたらされるでしょう」と述べる。

 

同氏のグループも、すでに今年そのような発見を発表している。傷ついた細胞を殺すのではなく、壊れたDNAを修復するゾウの遺伝子についての発見だ。

 

 

 ゾウのガン予防機能を研究する究極の目的は、人間のガン治療への応用だ。LIF6の進化について、シフマン氏は「5900万年の進化が必要でした」と話す。

 

「私に言わせれば、これは5900万年間の研究開発です。5900万年をかけて、自然がガンを予防する最善の方法を見つけようとした成果のひとつです」

 

すごいなー

人間が最も優れているわけではない。

象って只者ではない!

象を見る目が変わる。

尊敬のまなざしーーーーーー

お話できるといいなーーーーーー

 

出典=https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/081700362/