例えば、演歌で言うと味がある歌い方。
例えば、会話の中での、間。
例えば、解決に向かうための必要な時間のかけ方。
便利になってゆく中で、意識しないと淘汰されてゆくものだと思っています。
90年代のドラマを見ていると、それぞれのキャラクターの時間が流れているように見えます。画面に映る人たちが同じ時間を共有するのではなく、一人一人の登場人物の時間の使い方、感じ方を見ている人に感じさせてくれます。ですのでとても自然で共感度も凄まじく高く、忘れられない作品になるのだと思います。
それは作曲家から読み取ることと似ていて、フレーズごとの間や言い方は作品によっても、書く人によっても変わって来ます。それを自分なりに解釈し、さらに自分という人間も生かしながら表現することが最も大切で、もっとも考えなくてはならない部分だと強く思います。
その間や言い回しを考え、表現することは怖いことでもあります。受取手の反応が気になってしまうから。
それでも、自分の経験値や考えを常に織り交ぜていかなければ、ロボットだって可能になってしまいます。
本当にいいものを目指すためには、自分の役割を認識し、常に良いものにするにはどうしたらいいのか考え続け、時に誰かの意見を尊重し、独りよがりにならないことが重要なのかなと思います。
芸術は数字がない分、常に貪欲に、考え続ける必要があります。
成田瑞季 久我山 ピアニスト