今日はニューヘイブン大学でのランチ営業の日だった。
この大学は月曜日から金曜日までランチに一台ディナーに一台フードトラックを呼び営業させ、学生や大学職員を喜ばせている。
殆どのフードトラックはアメリカンフードの代表的なサンドウィッチ、ハンバーガー、ホットドック、マカロニアンチーズ、ポテトフライなどが多いが、ハラル/エスニックフードのトラックとうちのような日本食フードトラックは珍しがられる。
フードトラックが来ると学生達はお祭り騒ぎのようにテンションをあげる。
行列を作り順番待ちの間に友達とおしゃべりを楽しむのもイベントなのだろう。
大行列に対応するには、スピードと数をこなすことが大切でラーメンとか餃子では無理が効かないので、この大学では焼きそばとカツカレーの2種類のみにしている。
それプラス、アメリカのフードベンダーはベジタリアンとグルテンフリー、ピーナッツアレルギーへの対応は義務付けられているのでその準備も整えての応戦だ。
途切れる事の知らない大行列で俺は目がまわった。
俺は還暦の老体に鞭打ちながら焼きそばを焼きまくりカツを揚げまくりカレーをご飯にぶっかけまくりを繰り返していた。ビッチな嫁はビッチなりにその気の強さを多いに活かし捌いても捌いても終わりのない客対応を果敢にこなしていた。
朝簡単なお散歩だけでお留守番を強いられていたモモ。
お父さんの帰りを首を長くして待っていた。
モモちゃん、ただいま〜!お待たせ〜!
さ、ビーチにお散歩に行こう〜!
日暮前の夕方時、モモのお友達はみんなもう帰っちゃっただろうなぁと思いながらも俺はモモを助手席に座らせ車を走らせた。
やはりビーチにはもう犬達はあまりいなかった。数匹が遠くで遊んでいたが知らない子達ばかりでモモは独りでトコトコと軽く走っていたが、何かハッとしたようなそぶりをし、首を上げ、耳を膨らませ駐車場の方を向いている。そして駐車場の手前にあるフェンスに立ち上がってもたれながら、あるものに目を追っている。モモの目線を辿ると、な、ななんと、モモのボーイフレンドのルイが歩いているではないか!
モモはルイに必死にテレパシーを送っていた。なかなか気づいてくれないルイが向かう方向にモモは歩き、立ち上がり、フェンスにもたれている。歩いては立ち上がりを繰り返すモモ。まるで昭和のラブストーリーのドラマのような一場面。
その姿がなんとも、けな気で切なくて、俺は、俺は、グッときてしまった。
ヤバッ還暦発作が出そうだ!俺は必死で涙腺の崩壊を抑えていた。
モモのテレパシーがようやく届いたのかルイがモモに気づきリーシュを持つ飼い主をひっぱりモモのもとに駆けつけてくれた。
フェンス越しに二人は嬉しそうに鼻をつけあっていた。
もうダメだ。あ〜もうダメだ。俺の涙腺は大崩壊だ。もうこうなったらせめてルイの飼い主に俺の還暦涙腺崩壊を見られないようにするので必死だ。
そんな俺のストラグルを汲んでくれたのか。
ルイ、モモに会えてよかったわね。もう遅いから帰るわよ。明日、プレイデートしましょうね。
言葉をよく理解するお利口さんのルイは納得してモモにサヨナラを告げていた。
モモも満足したかのようにビーチに戻り、水際で独り遊び始めた。
今日の大行列騒ぎでアドレナリンが分泌しまくり脳みそが変に覚醒されてどうなるかと思ったが、モモとルイの純粋に俺は心癒された。