先達の言霊[中井久夫3]他人を介護すること | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

どんな看護師も医師も自分の家族の治療はできない。客観的にみることがむづかしいし、どこまでやったらよいという限度も、いつまで続くという限度もなく、十分すぎてあたりまえであって、足らないところは相手を責めなくても自分が責める。介護福祉士の資格をもつ人には、自宅で介護をしてきた人、現にしている人が少なくない。してあたりまえで際限のない介護では、精神的に燃えつきてしまうから、他人を介護することが必要だと語る。

                               (『看護のための精神医学第2版』p005, 2001年初版,2004年第2版)

 

 

「多重関係」(中井先生の執筆当時は、この用語はなかったかも)をいかに回避するかとの課題が絡んでいると思います。

家族かつ介護者という状況での「してあたりまえで際限のない介護」については、なかなかに、「多重関係」の回避を一律に求めることは難しいのではないでしょうか。

各々のケースの多重関係のあり方の善し悪しを評価する前に、それぞれの家族の文化、蓄積しつつある家族史、何代が前に遡っての家族成員相互の間に動く情動への理解がなくてはならないと思うのです。