ブックレビュー箱庭特集⑬現代のエスプリ別冊箱庭療法シリーズ 至文堂 2002他 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

現代のエスプリ別冊箱庭療法シリーズⅠ・Ⅱ 至文堂,2002

 

山中康裕「箱庭の風景」こころの科学 特別企画表現の光と影,1985 

 

河合隼雄と箱庭療法, 箱庭療法学研究第21巻特別号,2009

 

以上、ムックと雑誌を4冊、まとめてご紹介します。

 

 

 

現代のエスプリ別冊の「箱庭療法シリーズ」2冊は、岡田康伸先生の編集。巻頭の河合隼雄先生との対談には、トリビアな記述も垣間見え、興味深いです。

 

 

例えば、河合隼雄先生自身が「「箱庭療法」と名付けた」等と所々で明言をなさっておられるのですが、対談の中で、「初めは、「箱庭療法」とは言わず「サンドプレイ」と言った。誰が言い出したのかしらないがそのうちに「箱庭療法」になった。(Ⅱ,p12)と、おそらく関西での実践者の間でこの呼び名が自然に定着していたとの経緯が語られたり、箱庭を中途で止めたのは、岡田先生、河合先生ともに(この2002年の刊行前の対談時までに)、各々1回だったとか。

 

また、山中先生のカルフさんとの交流の思い出語りは、『こころの科学4』(1985)の「箱庭の風景」と併せて読まれると、よりカルフ家のゲニウス・ロキに触れることができるでしょう。

 

 

 

 

お歴々の分担執筆とはいえ、正直、ハズレ(どれとは言えませんが…)も若干ありますが、それを除けば、紙数は少なくても力が入った優れた論文・論評が多く、後の論文・書籍の引用資料の出典となっている場合も管見ですが少なくなく、全体として読み応えがあります。

 

それに比して、すでに以前にご紹介した『河合隼雄と箱庭療法』は、やや残念なムックです。

 

 

 

 

招聘講演は其々、それなりに良かったのですが、それはこころは全ての人の営みにつながっているという意味で、悪くなかったと言えるものの、リース滝先生が来日されなかったことを含め、発表事例とご発表者が、果たして2008年当時であれ、箱庭療法の代表的(典型的、ではなく)治療と治療者像を示し得たのかなあ…、と正直なところいささかモゾモゾした読後感が残ります。....にゃんとしては、この事例のクライアントがこのあとどうなったんだろう~と、色々な意味でかなり気掛かりでした。

 

いまエスプリ別冊については、箱庭は過去のモノ扱いなので、中古で入手しやすいです。

芸術表現療法にご興味がある方は、お手元本に加えらておかれていいかな、と思います。

(このブログ、閲覧者数が限られているので、オススメをしても、大丈夫と思ってます。)