ブックレビュー河合隼雄特集㉒:影の現象学 1976 思索社 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

まず中の扉絵の最初にムンクの「思春期」(色刷り)です。

 

ユング心理学の中でも、文学少年少女だった方々が魅了されるにちがいない、「影」元型をめぐる、エキサイティングな考察は、読者を飽きさせない読みものとして評価が高い作品の一つではないでしょうか。

 

ただ、欧米の文学作品(古典に入るものから、『イブの三つの顔』やヴァンデルポストをはじめ)の分析が主となっています。

 

神話の比較研究ののちに日本の中古文学の分析に参入していかれるのは、この仕事より、かなり後になってきます。

 

一つの思想体系を構築するには、まず先に「意識」の確立という点では、アーシュラ=ル・グインのアースシーシリーズの半世紀にわたる展開とよく似たプロセスだなあと、またぞろ妄想しております。

 

この本を読了してすぐに、『影の獄にて』を読んだことを思い出しました。

 

 

これは、大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』の原作です。この作品は、ディビット=ボウイ、坂本龍一、ビートたけしという、再現不能な準主役連の競演といった、様々な意味で奇跡的な作品です。アマプラで視聴できていたのですが、にゃんはなんとなく気が向かなくて、じつはまだ見てないのです…。元々戦争映画の戦場・戦闘シーンは大変苦手なので。