臨床つれづれ:2018年医師国試大幅改革に、山崎學日精協会長が貢献 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

今日の13時から、今年最後の心楽の会例会です。

その後に、スタッフ主催のLINEグループ交流会もあります。

会員のみなさんのご参加をお待ちしています。

 

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公認心理師の制度・運用に関する調べものをしていると、いろいろといままで知ることがなかった予想外で驚くような事実に多く出会います。ただ、にゃんが驚くことが、多くの一般の人たちが驚くところとは、違っている可能性はあるのですが...。

 

まあ、とにかく、このブログでも共有しておきたくなったのは、公認心理師国試のデータを他の医療系(または公認心理師が「協働」する)国家資格と比較していて、とてもびっくりしたことの一つである、医師の国試概要が2018年に急に(?!)、改訂されていたことです。

現時点(2023.12.03)で「医師国試問題数」でググると、トップに厚労省の2006年8月の第100回の試験データの内容が出てきます。なので、にゃんは最初、現在もこのデータが生きていると疑っていませんでした。

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/08/dl/s0811-3c.pdf

 

しかし、その後の112回から大幅な出題基準の改訂、問題数と試験日程の改訂が行われていたのでした。この件については、こちらに追記しています。

 

 

この改訂はどのような経緯で行われたのかということは、医師国試予備校などのサイトでは明確に書かれたものを見つけ出せないのは、国の制度としてできてしまった・変えられてしまったものについては、シノゴノ言わずに、逐次それに応じていくしかないとのことなのでしょう。

 

しかし、その制度は誰のためにできたのか、誰のために変更されるのか、というところに、批判的な視点を集めることには意味があると思います。

たとえ、すでに動き出している制度であっても、一度立ち止まらせて第三者の視点から顧みる必要があるのではないでしょうか。

その制度によって、国民・市民は真の受益者となるのかどうなのか。つまり心理療法領域の言葉で言うクライアント・センタードとなっているのかどうか、です。(その対義語は、「セラピスト・センタード」ですが、両者の価値判断は必ずしも絶対的なものではありません。)

 

さて、日本精神科病院協会会長山崎學氏が、2022年8月の日精協機関紙の巻頭言に書かれた、「鎮魂歌」と題された文章があります。

https://www.nisseikyo.or.jp/news/magazine/images/kanto_202208.pdf

 

安倍晋三元首相が亡くなった直後に書かれたもので、前半部分にはお二方の篤い交友の想い出が綴られていますが、その2ページ目にかなり重要な記述がありました。目視で抜書きします。

 

…[p1略]…

長い付き合いの中で彼[「親友」の安倍晋三]が愚痴を聞いてくれたことがある。医療教育制度と「酷使」と称された医師国家試験改革であった。3日間500問という国試に備えて医学部6年がその対策に追われて臨床から遠ざかっている現状を説明したところ,官邸内にワーキングチームを設置してくれた。医学部国試対策担当教授6名に参加してもらい,文科省,厚労省,試験センターからヒアリングを行い,現在の2日間400問に改善し,初期臨床研修制度の見直しと医学部5,6年を新しいシステムの中でシームレスにする改革案が進行している。

日精協誌第41巻第8号 2022年8月 712「巻頭言 鎮魂歌  会長 山崎 學」p2、3行目以下

 

そうだったんです。112回以後の国試運用制度改革には、医療領域全科の中でも身体科ではない精神科という極く限られた一領域の、民間の精神科病院団体の総帥の力が及んでいたのです。

現在の目覚ましい医学・医療の進歩により、より多くの臨床的知見が日々積み重ねられている中、新たに医師となる人が備えるべき知識も日々更新されているのならば、国試問題数が増えることはあれ、減ることはないと考えるのが、〈素人〉...市民の考え方であるように思うのですが、そうではなく、20%も問題数が削減されている。....これは一体どういうこと?精神科の自文化中心主義が時の権力と結んでなされた改革であれば、一旦、医師法の真の受益者は誰なのかという原点に立ち戻っての再考が必要ではないでしょうか。

 

これは公認心理師試験と同じ構造だと思います。要するに公認心理師制度は医師制度を真似ようとしている、と以前からよく言われてきていますが、現状では、医師制度の単なるパチモノに過ぎない、との批判があったとき、二管掌官庁の部局と国指定機関は反論ができそうにないと思います。反論以前にそのような批判が為されないように圧殺する方略に長けた人たちが、山崎さんや安倍さんの背後に、いらっしゃるのでしょう。

 

粗製濫造の国家資格ライセンスでも、後で中身を充実し運用で補えばよい、というのはものすごく綺麗事で理想論ですよね。そんなエコーチェンバーの中に、公認心理師も臨床心理士も自閉してしまっているようで、正直、とても残念でたまりません。