ロジャース三原則の実行は、とても難しい | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

昨日、共感的理解しか、公認心理師には能力として求められてないのか、

という疑問からの(たんに受験テクニックではない)議論について書きました。

 

ところでロジャースの三原則って、簡略にわかりやすい定義で述べられていて、

よく知られています。

 

1. 共感的理解  (empathy, empathic understanding)
2. 無条件の肯定的関心  (unconditional positive regard)

3. 自己一致  (congruence)
 

これってね、実際にやること・実現させることが、ものすごく難しいことは、

マトモに取り組もうとした人はよくお分かりと思います。

努力目標やからなあと片付けてしまうと、身も蓋もありませんが。

 

特に、「自己一致」、これが「無条件の肯定的関心」や「共感的態度」とどうやったら、

同時にできるのかって、はっきり言って神業、

にゃんをはじめ「凡人?!」連にはとても無理なことじゃないですか。😹

 

 

 

 

ところで、ご本家ロジャース(“Carl Rogers on Encounter Groups”  1970)は

50年ほど前にこんなことを言ってますよ。

 

 

…個人の自己防衛に攻撃をかけるのは、私には断定的態度に思われる。…{中略}…私はこのような断定や診断は促進的であるのとは逆のように思う。

 しかし、もし、その人の冷たさと思われるものに不満を感じるか、彼の知的割り切り方が私をイライラさせるか、その人の他人に対する横柄な態度に腹が立ったような時には、私の中に起こっているその不満、苛立たしさ、怒りに彼を直面させたいと思う。私には、このことは非常に重要なのである。…

(『エンカウンターグループ 人間信頼の原点を求めて』畠瀬稔・畠瀬直子訳, ダイヤモンド社, 1973, p76)

 

 

クライエント本人が気づいていないクライシスを「受容」するからこそ、カウンセラー自身が

クライエントに感じる率直な不満・苛立ち・怒りというネガティヴな感情を、遠慮なく率直に

クライエントに向かって表出するんだってロジャースは言っています。

 

つまり、そのことで、クライエントが相手とそして自分自身に対して今行っていることへの

直面化を促す…むしろ直面化を強いることを通し「促進(こころの成長を促す)」する姿勢を、ロジャースは「非常に重要」と考える、これが自分のやり方だと提唱しています。

 

この御本家本元の弁には、(...カウンセラー側がシャーロック・ホームズばりにまるっとお見通し...というところに限界があるものの、)、生っちょろい「共感的態度」を吹っ飛ばす破壊力が

感じられるのですが、如何でしょう!?

 

 

心理支援一般問題編(11)で、ロジャースの三原則についてもう少し詳しく書いていますので、

併せてご覧くださいね。↓

https://ameblo.jp/cocoronorinsyou/entry-12610865878.html

 

こちら一般問題編⑵の、過去問に意外に多出🙀の「フォーカシング」に関する過去研究の

後ろの方に、心理療法(一般)とカウンセリングの違いについて書いてます。

https://ameblo.jp/cocoronorinsyou/entry-12609357742.html