私のこれまでの様々な出会いの中で、とくに圧倒的に女性に多い事例として
過去に明確なトラウマ(PTSD)や虐待の経験がないにもかかわらず、恋愛対象の男性に対して肉体的接触(ハグ、キス、セックスetc.)に、程度の差はあれ「嫌悪」あるいは「抵抗」「苦手意識」を持つ
ことで悩まれているケースが複数ありました。
こういった男性への身体的接触への抵抗を持つ女性は、実際に臨床や研究でも一定数報告されています。かなりセンシティブな問題でなかなか顕在化しにくく、潜在的には統計よりかなり多く存在する可能性もあると考えています。
世のお年頃の男性にも、相思相愛の(これ自体が勘違いというケースも多々あれど)女性の理解しにくい拒絶反応に対しての誤解や勘違いを回避していただくために、このような心的傾向を持つ女性が存在することを知っていただきたいと思う次第です。
といいますのも、思い切って相手の男性に嫌悪感や不安感を伝えたとしても、女性自身もなぜ強い抵抗が生じるのか明確な原因がつかめておらず、よって男性側も的確な理解が及ばない…という事例がほとんどなのです。
恋愛中の彼氏に触れられることが苦手な女性へ
これまでに考えられている心理的要因としては、
1. 愛着スタイルの影響
・幼少期の養育環境が「過度に距離のあるもの」だった場合、身体的親密さ=侵入・コントロールと感じる傾向が育つことがある
2. 性嫌悪
・性的な接触に対して、根拠のはっきりしない「生理的嫌悪感」「拒絶反応」を感じるケース
・幼少期の性教育・家庭の性に対する価値観が「ネガティブでタブー視されたもの」だった場合、それが身体レベルの嫌悪感として残るケース
3. 自己概念と身体像のゆがみ(ボディイメージ/セルフ・スキーマの影響)
・自分の身体に対する否定的な感情(「見られたくない」「魅力的ではないと思われるのが怖い」など)
・特に自己肯定感の低さや身体的羞恥心が強い人は、他者との身体的接触が「恐怖・恥・嫌悪」を引き起こすことがある
4. 感覚過敏や神経発達的傾向(HSPやASD傾向)
・ハグや接触自体が「身体的に過剰な刺激」に感じられるケースがある
・これは特に、感覚過敏や神経発達特性の一部として現れることがあるため、必ずしも心理的トラウマに基づくとは限らない
5. 未分化な親密さの恐怖(親密=支配・自己喪失という無意識の図式)
・特に自立性を強く大切にする人に見られる
・身体的親密さが「個の境界のあいまいさ」「自分を失う恐怖」と結びついている可能性があるケース
稀な実例として、アセクシャルの女性にとって、男性の性的興奮に囚われた状態と通常の状態との乖離が滑稽に感じられ、どうにも可笑しくて真面目に対応できないケース、というのがあります。
まず最初に、以下のことを当事者の女性に知っていただきたいです。
「あなたの感覚は“おかしい”のではなく、“あなたの大切な感覚の一部”」
「身体が拒否」しているのは、心や身体を守ろうとする自然な反応であり、故障でも欠陥でもないという視点をもってください。
相手に対して、信頼がないからでも愛情がないからでもなく、「安心できる距離感でしか心地よくいられない」から、というのが実情です。愛情があっても「身体が追いつかない」という場合もあるのです。それは「心と身体が丁寧に関わっている証拠」でもあります。
社会的・文化的な影響で、「好きな人には触れたくなるはず」「セックスがなければ本物の恋愛じゃない」という『恋愛の定型的なイメージ』に自分を合わせようとして苦しくなる場合もあります。
しかし実際には様々な愛情表現のスタイルがあり、「“恋愛=スキンシップができること”という思い込みは手放して、個人によって大きな差があることを受け入れていただきたいです。
また、自責に陥る女性のケースでは、自分の“感じ方”を変えようとして「こんなことじゃダメだ」とさらに苦しくなることもあります。しかし実際には、感情や身体反応は「意志」ではどうにもならない領域がとても多いのです。
例えば、熱いヤカンに触れて「熱い」と感じるのは意志のせいではありません。それと同じで、「近づかれると怖い感じがする」も、意志ではなく感覚の働き。
問題は“怖い”と感じることではなく、その感覚を自分で「否定すること」なのです。自分の反応を「判断せず、逆に「好奇心を持って観察する」ことができるようなると、回復の一歩です。
「“今の感覚”が“永遠に変わらない”わけではない」
安心感・信頼関係・自己理解が深まるにつれて、「今はまだ苦手だけど、もしかしたら…」という変化が起きる可能性もあります。
あらゆる場面で活用する私の好きな考え方「どっちでもOK!」ではないですが、「今の自分のままでもよく、変化してもいい」と両方を認めてあげることで、過度な自責や不安から自分を自由にできます。
上記のような心理的要因を知らないと、恋愛対象の男性への身体的接触への拒否・抵抗が、相手の誤解(=「愛されていないのでは」「性的に魅力を感じてもらえてない」など)を招き、恋愛関係の破綻に繋がるケースもあるかもしれません。
こうした場合、本人にとっても相手にとっても傷つきは大きく、慎重で丁寧な対応が求められます。
次回は、「恋愛中の彼女に触れさせてもらえない男性」へ伝えたいことと、「二人にとっての有効な対応方法」についてです。
