院長の長島です。今年6月からの診療報酬改定は、6年に一度の医療・介護・障害者福祉サービスのトリプル改定でした。なかでも目玉となっているのは、医療従事者の賃金改善のためのベースアップ評価料の新設でした。これは初診料、再診料に加算され、診療費の上乗せ分を従業員の賃上げに使うようにというものです。もう一つ従来の加算が見直された医療情報取得加算、医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格認証を推進していくための加点点数です。
私はどちらの算定も行うつもりはありません。通常の施設基準は患者さんのために感染対策や、小児・高齢者の機能訓練を行う体制を整え講義を受けたり、CTや顕微鏡など設備を整えることで加算されるものです。ところが上記2つの加算は全く患者さんのために行うものではありません。
ここ数年で気づかないうちに社会保険料の負担率は大きく上昇しています。それを原資にして医療従事者にベースアップを行うというのは、どうしても矛盾しか感じません。そもそも個々の事業所に対するベースアップは国に指図されるものでもなく、国はもっと真剣にどうすれば実質賃金が上昇するか施策を練るべきではないでしょうか。
以前も書いたように物価上昇対策は、減税によって広く国民に対して行われるべきものです。もしくは社会保険料の負担を軽減すれば、実質賃金が上昇するだけでなく、事業主負担分までベースアップに利用できます。社会保険料の不足分は国債発行で賄えば何の問題もなく、将来世代への借金になどなりません。ちなみに当院では昨年末に一律でベースアップを行いましたが、現状ではそれに掛かる税金や社会保険料が上昇し、結局実質賃金はわずかのアップにしかなりません。。
また今年12月から現行の保険証発行は終了し、本来任意取得であったマイナンバーカードが強制的に保険証として使用されることが決まっています。厚労省はマイナ保険証の利用率が上がった医療機関には、申請不要で支援金を交付していますが、それでも利用率は未だ11%程度にしか過ぎません。毎月のレセプト提出時には、マイナ保険証や電子処方箋に関するアンケートに答えなければ提出できない仕様です。さらに医療機関には利用率を上げるためのオンラインセミナーへの参加や通知表のような毎月の利用率が送信され、一部恫喝と感じるような文面もあります。利用率が上がらないのは医療機関の責任ではなく、利用者を無視した制度や憲法を軽視した進め方にあるのは明らかです。ちなみに当院ではカードリーダーの設置から未だ利用率0%で推移しています ^^;
12月以降現行の保険証は新規発行されませんが、有効期限までそのまま使用できます。マイナ保険証をお持ちでない方には資格確認書が交付されますので、今までの保険証と同じように使用できます。どちらを使用するのも皆様方の任意です。