エレベーターの中②
※前回の日記の続きです。
随分間があいてしまいました。
すみません。
↓
最上階に着いて
ラウンジに入る。
ラウンジの正面に
沈む夕陽と
灯り出した街の光が
窓いっぱいに広がっていて
宴会場と正反対に位置するラウンジからの
見慣れない眺めに
あたしは
立ち止まって
―わぁ、きれー…
呟いた。
コウさんは
繋いだ手を
ぎゅっと、握り返して
―ね、きれい。
と
言った。
これは、
あたしがコウさんを好きな
理由のひとつなんだけど
コウさんは
必ず、
あたしが興味を示した物事に
反応してくれる。
きれい、
とか
おいしい、
かわいい、
すごい、
はたまた
怖い、
寒い、暑い、
苦しい、
悲しい…
あたしから出てくる
形容詞に
きちんと
コウさんなりの誠実さで
反応してくれる。
どんな些細な事でも。
くだらない、とか
絶対に言わない。
それが
コウさんなりの優しさなのか
それとも
本当に同じ様に感じてくれてるのか…
わからないけど。
とにかく
あたしは
嬉しい。
ラウンジの奥窓際に
コウさんと仲のいい
同僚や上司が
5人で陣取って
呑んでいた。
そこへ向かいながら
あたしは自分の鞄の中を
探るふりをして
さり気なく
コウさんと
繋いでいた手を
離した。
席の近くへ行くと
コウさんに気付いた人が
「おー。コウ、
おっせえよ。どこ行ってたんだよー。」
と
大きな声で言った。
コウさんは
一歩後ろのあたしを振り返って
―コイツ、迎えに行ってた。
さらっと言った。
すると
あたしに気付いた
酔っ払い5人は
口々に
「おー!〇沢ちゃん!お疲れ」
「ひゅーひゅー!」
などと
冷やかしにかかった。
あたしは
営業スマイル満点で
―お疲れ様です。
と言い、
コウさんが座った
2人がけのソファーの横に
腰を下ろした。
飲み物を聞かれ
何も考えず
カンパリのカクテルを頼むと
コウさんが先に
全く同じものを頼んでいて
思わず笑った。
と
同時に
周囲に冷やかされて
ちょっと
ドキっとした。
なんとなく、
空気的に
あたしとコウさんが
一緒にいる事を
皆が認めているような感じもして
あたしは
その曖昧さに
戸惑った。
例え
エレベーターの中で
外国人のカップルから
あたしとコウさんが
恋人同士に見られたって
現実は何もかわらない。
会社の人達の前じゃ
コウさんがどんなに
あたしを大切に想ってくれようと
どんなに、
あたしがコウさんを好きでいようと
所詮、
“不倫”でしかないんだ。
ニコニコと
上司達の話を聞いて
相槌を打ち
過ごす事20分。
コウさんが
―そろそろ、2次会じゃね?
そう切り出して
皆揃ってラウンジを出た。
あたしとコウさんは
一番最後に立ったんだけど
皆が歩きだした瞬間
コウさんが
あたしを見て
そっと耳打ちした。
―大丈夫?
ごめん、気ぃ遣わせて。
あたしは
ふるふると
首を振り
―大丈夫だよ。
と
笑ってみせた。
コウさんが
ぽん、と
あたしの頭を撫でて
立ち上がる。
あたしに手を差しだし
あたしを立ち上がらせる。
ラウンジの反対側にある
最上階の宴会場には
もうかなりの人が来ていて
ざわついていた。
あたしとコウさんは
揃って受付をし
会場の一番端に立った。
間もなく
さっきの酔っ払い達が(笑)
騒ぎだすと
新郎新婦が入場した。
祝福の拍手の中、
コウさんが
再びあたしに耳打ちした。
―乾杯して、少ししたら
皆に見つからないように
そっと逃げよ?
あたしは
コウさんを見つめて
頷く。
コウさんは
少年めいた
イタズラな笑みを浮かべた。
こんな子供みたいな顔も、
ああ、好きだな。
と
思う。
皆で乾杯をし
立食スタイルの料理には手を付けず
新郎新婦に改めて
おめでとう、
と挨拶してから
あたしは
コウさんに目配せだけして
トイレにでも行くような素振りで
自然に会場を出た。
エレベーターホールで
ひとり待つ事
ほんの
2、3分。
すぐにコウさんが
来て
―お待たせ、
と
笑った。
ちょうど
エレベーターが着いて
ふたりきりのエレベーターに
また手を繋いで
乗り込んだ。
1階のロビーのボタンを押すと
コウさんが
―あ、ちょっとごめん。
俺先に済ませなきゃいけない
仕事の引き継ぎ残してんだわ。
そう言って
最上階から
3つ下の階のボタンを押した。
―え、マジ。
あたしはコウさんに
しかめっ面を向ける。
―まぁまぁ、すぐ終わるからさ。
ちょっと待っててよ。
な?
―…うん。
それ以外に何を言えるだろう。
頷く以外に何が出来るだろう。
ズルい。
コウさんは知ってる。
あたしが
コウさんの
「な?」
に弱い事。
渋々頷くふりをして
あたしは
自分の緩んだ顔を隠す為に
下を向いて歩いた。
客室のあるフロアにエレベーターが着いた。
あたしは無言で下を向いたまま
コウさんと繋いだ手に
導かれるまま
歩いた。
コウさんが立ち止まって
ジャケットの内ポケットから
カードキーを出した。
―え??
あたしが顔を上げた時
もう、
あたしの目の前には
コウさんの胸があって
ぎゅ、
ガチャ、
ぐいっ、
バタン。
一瞬の出来事。
あたしは
客室の中、
背中をドアに押し付けられ
溶けだしそうな程熱い
キスを受けとめていた。
何が起こったか
何が起ころうとしてるのか
これはなんなのか…
ひとりパニック状態。
苦しそうに唇を離したコウさんが
いつもの優しさを含んだ目じゃなくて
“男”の顔そのもので
言った。
―マリさ、
明後日何の日か知ってる?
―え、何でコウさん知ってるの?
―お前なぁ。
はぁ、と溜め息。
―去年、どんなけ俺に吹き込んだんだよ。
―でも、だって…
去年は冷たくあしらったくせに。
―去年は去年、
今年は今年!
―コウさん…。
―明後日、忙しいじゃん?だからさ。
当日はあんま何もしてやれないけど
今日、めーいっぱい祝うよ。
―うん。
あたしは
泣き出す。
―マリ。
フライングだけど…
誕生日おめでとう。
これ、俺からのプレゼント。
そう言って
コウさんは
あたしの前からどいて横に並び
あたしは
初めて部屋の中を見た。
窓の外の夜景。
ローテーブルに置かれた
シャンパン、
ソファーの上には
あたしの好きな花の
ブーケみたいな花束。
涙で滲んだ
たくさんの
きらきら。
コウさんに背中を押され
部屋の中に進んだ。
―これ、どーしたの?
気の利いた事を
何ひとつ言えなくて
ぽけーっと
立ち尽くす。
―ははは。
俺の職業なんだと思ってんの?
―ホテルマン…
―せーかい。
10年以上勤めてますから!
これくらい、社員の特権です。
窓際のソファ。
きらめく夜景。
よく冷えた、
ロゼのシャンパン。
静かに
ふたりで
シャンパングラスを
合わせ
あたしの誕生日を
お祝いした。
―コウさん。
―ん?
―ありがとう。
―どーいたしまして。
―こんなに素敵なプレゼント、
ありがとう。
―喜んでくれて良かったよ。
―喜ばない訳ないでしょお?
―やっと夜も眠れるよ(笑)
―そんなに悩んでないくせに。
―お。やっといつもの調子!
―うるさい!
突然の、沈黙。
あたしはコウさんから
目線をずらし
街並みを見下ろした。
持っていたシャンパングラスを
窓の桟に置く。
―トイレ、行ってくる。
トイレでひとり
飛び出しそうな心臓を
なだめる。
落ち着け、あたし。
深呼吸して
部屋に戻る。
コウさんは窓際に立って
外をぼんやり
眺めていた。
ゆっくりと近づいて
コウさんの後ろ姿に
抱き付いた。
―コウさん。
―なぁに?
―ありがとう。
―どういたしまして。
―コウさん。
―なぁに?
―……。
コウさんの背中に
頭を押し付ける。
―ねぇ、コウさん。
―だから、なぁに?
―調子に乗ってさ、
―うん?
―もうひとつ、欲しいものがある。
―言ってみ?
―明日の朝まで、
コウさんをちょうだい。
あたしの片腕を掴んで
コウさんはあたしを自分の前に引っ張り
ぎゅ、っと
抱きしめた後で
―言われなくても。
強引なキスで
始まって
もつれあいながら
ベッドに倒れこんだ。
あとはもう、
夢中で
あたしはコウさんの全てを
感じ取って
身体に刻み込もうとした。
どれだけそうしていたか
解らない。
汗をたくさんかいて
息を上げて
何度も
何度も
繋がった。
その度に
コウさんは
あたしの名前を繰り返し
あたしの身体中を
幸福で満たしていった。
夜が明ける
少し前に
ふたりで
お風呂に入った。
広い浴槽からは
別方向の景色が見えて
水音をたてながら
再び抱き合い、
あたしは
光るネオンの文字を見て
少し冷静に
「あのマークを見る度に思い出すのかな」
なんて
考えたりした。
明け方、
白んでいく街並みを
ベッドの上から眺めて
幸せ過ぎる
全身の怠さを
満足感と並べて
眠りに落ちていった。
まどろむ意識の中で
その日
コウさんが最後にくれたプレゼントは
あたしの好きなジュエリーショップの
あたしの欲しがっていた
限定のネックレスだった。
朝、
起きて
その最後のプレゼントに気付いた時
隣でまだ寝ていたコウさんを
揺さぶり起こし
大騒ぎしてしまった。
寝呆け眼のコウさんは
―それ、マリは俺のって証だから
ずっと着けてて…
なんて嬉しい言葉を
言い残し
―ほら、もう少し寝るぞ…
と
あたしを布団の中に引きずり戻した。
ドキドキして眠れないあたしは
ずっと、
コウさんの寝顔を見つめていた。
そんな、
幸せいっぱいの
25歳誕生日祝いのお話。
随分間があいてしまいました。
すみません。
↓
最上階に着いて
ラウンジに入る。
ラウンジの正面に
沈む夕陽と
灯り出した街の光が
窓いっぱいに広がっていて
宴会場と正反対に位置するラウンジからの
見慣れない眺めに
あたしは
立ち止まって
―わぁ、きれー…
呟いた。
コウさんは
繋いだ手を
ぎゅっと、握り返して
―ね、きれい。
と
言った。
これは、
あたしがコウさんを好きな
理由のひとつなんだけど
コウさんは
必ず、
あたしが興味を示した物事に
反応してくれる。
きれい、
とか
おいしい、
かわいい、
すごい、
はたまた
怖い、
寒い、暑い、
苦しい、
悲しい…
あたしから出てくる
形容詞に
きちんと
コウさんなりの誠実さで
反応してくれる。
どんな些細な事でも。
くだらない、とか
絶対に言わない。
それが
コウさんなりの優しさなのか
それとも
本当に同じ様に感じてくれてるのか…
わからないけど。
とにかく
あたしは
嬉しい。
ラウンジの奥窓際に
コウさんと仲のいい
同僚や上司が
5人で陣取って
呑んでいた。
そこへ向かいながら
あたしは自分の鞄の中を
探るふりをして
さり気なく
コウさんと
繋いでいた手を
離した。
席の近くへ行くと
コウさんに気付いた人が
「おー。コウ、
おっせえよ。どこ行ってたんだよー。」
と
大きな声で言った。
コウさんは
一歩後ろのあたしを振り返って
―コイツ、迎えに行ってた。
さらっと言った。
すると
あたしに気付いた
酔っ払い5人は
口々に
「おー!〇沢ちゃん!お疲れ」
「ひゅーひゅー!」
などと
冷やかしにかかった。
あたしは
営業スマイル満点で
―お疲れ様です。
と言い、
コウさんが座った
2人がけのソファーの横に
腰を下ろした。
飲み物を聞かれ
何も考えず
カンパリのカクテルを頼むと
コウさんが先に
全く同じものを頼んでいて
思わず笑った。
と
同時に
周囲に冷やかされて
ちょっと
ドキっとした。
なんとなく、
空気的に
あたしとコウさんが
一緒にいる事を
皆が認めているような感じもして
あたしは
その曖昧さに
戸惑った。
例え
エレベーターの中で
外国人のカップルから
あたしとコウさんが
恋人同士に見られたって
現実は何もかわらない。
会社の人達の前じゃ
コウさんがどんなに
あたしを大切に想ってくれようと
どんなに、
あたしがコウさんを好きでいようと
所詮、
“不倫”でしかないんだ。
ニコニコと
上司達の話を聞いて
相槌を打ち
過ごす事20分。
コウさんが
―そろそろ、2次会じゃね?
そう切り出して
皆揃ってラウンジを出た。
あたしとコウさんは
一番最後に立ったんだけど
皆が歩きだした瞬間
コウさんが
あたしを見て
そっと耳打ちした。
―大丈夫?
ごめん、気ぃ遣わせて。
あたしは
ふるふると
首を振り
―大丈夫だよ。
と
笑ってみせた。
コウさんが
ぽん、と
あたしの頭を撫でて
立ち上がる。
あたしに手を差しだし
あたしを立ち上がらせる。
ラウンジの反対側にある
最上階の宴会場には
もうかなりの人が来ていて
ざわついていた。
あたしとコウさんは
揃って受付をし
会場の一番端に立った。
間もなく
さっきの酔っ払い達が(笑)
騒ぎだすと
新郎新婦が入場した。
祝福の拍手の中、
コウさんが
再びあたしに耳打ちした。
―乾杯して、少ししたら
皆に見つからないように
そっと逃げよ?
あたしは
コウさんを見つめて
頷く。
コウさんは
少年めいた
イタズラな笑みを浮かべた。
こんな子供みたいな顔も、
ああ、好きだな。
と
思う。
皆で乾杯をし
立食スタイルの料理には手を付けず
新郎新婦に改めて
おめでとう、
と挨拶してから
あたしは
コウさんに目配せだけして
トイレにでも行くような素振りで
自然に会場を出た。
エレベーターホールで
ひとり待つ事
ほんの
2、3分。
すぐにコウさんが
来て
―お待たせ、
と
笑った。
ちょうど
エレベーターが着いて
ふたりきりのエレベーターに
また手を繋いで
乗り込んだ。
1階のロビーのボタンを押すと
コウさんが
―あ、ちょっとごめん。
俺先に済ませなきゃいけない
仕事の引き継ぎ残してんだわ。
そう言って
最上階から
3つ下の階のボタンを押した。
―え、マジ。
あたしはコウさんに
しかめっ面を向ける。
―まぁまぁ、すぐ終わるからさ。
ちょっと待っててよ。
な?
―…うん。
それ以外に何を言えるだろう。
頷く以外に何が出来るだろう。
ズルい。
コウさんは知ってる。
あたしが
コウさんの
「な?」
に弱い事。
渋々頷くふりをして
あたしは
自分の緩んだ顔を隠す為に
下を向いて歩いた。
客室のあるフロアにエレベーターが着いた。
あたしは無言で下を向いたまま
コウさんと繋いだ手に
導かれるまま
歩いた。
コウさんが立ち止まって
ジャケットの内ポケットから
カードキーを出した。
―え??
あたしが顔を上げた時
もう、
あたしの目の前には
コウさんの胸があって
ぎゅ、
ガチャ、
ぐいっ、
バタン。
一瞬の出来事。
あたしは
客室の中、
背中をドアに押し付けられ
溶けだしそうな程熱い
キスを受けとめていた。
何が起こったか
何が起ころうとしてるのか
これはなんなのか…
ひとりパニック状態。
苦しそうに唇を離したコウさんが
いつもの優しさを含んだ目じゃなくて
“男”の顔そのもので
言った。
―マリさ、
明後日何の日か知ってる?
―え、何でコウさん知ってるの?
―お前なぁ。
はぁ、と溜め息。
―去年、どんなけ俺に吹き込んだんだよ。
―でも、だって…
去年は冷たくあしらったくせに。
―去年は去年、
今年は今年!
―コウさん…。
―明後日、忙しいじゃん?だからさ。
当日はあんま何もしてやれないけど
今日、めーいっぱい祝うよ。
―うん。
あたしは
泣き出す。
―マリ。
フライングだけど…
誕生日おめでとう。
これ、俺からのプレゼント。
そう言って
コウさんは
あたしの前からどいて横に並び
あたしは
初めて部屋の中を見た。
窓の外の夜景。
ローテーブルに置かれた
シャンパン、
ソファーの上には
あたしの好きな花の
ブーケみたいな花束。
涙で滲んだ
たくさんの
きらきら。
コウさんに背中を押され
部屋の中に進んだ。
―これ、どーしたの?
気の利いた事を
何ひとつ言えなくて
ぽけーっと
立ち尽くす。
―ははは。
俺の職業なんだと思ってんの?
―ホテルマン…
―せーかい。
10年以上勤めてますから!
これくらい、社員の特権です。
窓際のソファ。
きらめく夜景。
よく冷えた、
ロゼのシャンパン。
静かに
ふたりで
シャンパングラスを
合わせ
あたしの誕生日を
お祝いした。
―コウさん。
―ん?
―ありがとう。
―どーいたしまして。
―こんなに素敵なプレゼント、
ありがとう。
―喜んでくれて良かったよ。
―喜ばない訳ないでしょお?
―やっと夜も眠れるよ(笑)
―そんなに悩んでないくせに。
―お。やっといつもの調子!
―うるさい!
突然の、沈黙。
あたしはコウさんから
目線をずらし
街並みを見下ろした。
持っていたシャンパングラスを
窓の桟に置く。
―トイレ、行ってくる。
トイレでひとり
飛び出しそうな心臓を
なだめる。
落ち着け、あたし。
深呼吸して
部屋に戻る。
コウさんは窓際に立って
外をぼんやり
眺めていた。
ゆっくりと近づいて
コウさんの後ろ姿に
抱き付いた。
―コウさん。
―なぁに?
―ありがとう。
―どういたしまして。
―コウさん。
―なぁに?
―……。
コウさんの背中に
頭を押し付ける。
―ねぇ、コウさん。
―だから、なぁに?
―調子に乗ってさ、
―うん?
―もうひとつ、欲しいものがある。
―言ってみ?
―明日の朝まで、
コウさんをちょうだい。
あたしの片腕を掴んで
コウさんはあたしを自分の前に引っ張り
ぎゅ、っと
抱きしめた後で
―言われなくても。
強引なキスで
始まって
もつれあいながら
ベッドに倒れこんだ。
あとはもう、
夢中で
あたしはコウさんの全てを
感じ取って
身体に刻み込もうとした。
どれだけそうしていたか
解らない。
汗をたくさんかいて
息を上げて
何度も
何度も
繋がった。
その度に
コウさんは
あたしの名前を繰り返し
あたしの身体中を
幸福で満たしていった。
夜が明ける
少し前に
ふたりで
お風呂に入った。
広い浴槽からは
別方向の景色が見えて
水音をたてながら
再び抱き合い、
あたしは
光るネオンの文字を見て
少し冷静に
「あのマークを見る度に思い出すのかな」
なんて
考えたりした。
明け方、
白んでいく街並みを
ベッドの上から眺めて
幸せ過ぎる
全身の怠さを
満足感と並べて
眠りに落ちていった。
まどろむ意識の中で
その日
コウさんが最後にくれたプレゼントは
あたしの好きなジュエリーショップの
あたしの欲しがっていた
限定のネックレスだった。
朝、
起きて
その最後のプレゼントに気付いた時
隣でまだ寝ていたコウさんを
揺さぶり起こし
大騒ぎしてしまった。
寝呆け眼のコウさんは
―それ、マリは俺のって証だから
ずっと着けてて…
なんて嬉しい言葉を
言い残し
―ほら、もう少し寝るぞ…
と
あたしを布団の中に引きずり戻した。
ドキドキして眠れないあたしは
ずっと、
コウさんの寝顔を見つめていた。
そんな、
幸せいっぱいの
25歳誕生日祝いのお話。
お知らせ
しばらくの間
ずーっと更新していませんでした。
ごめんなさい。
実は
大事件がありまして。
バタバタしていたのと
あたし自身が精神的に
ちょっと
参っていたので
ずっと日記が
書けませんでした。
エレベーターの話の続きがあるので
下書きしていたものを
upします。
②として。
で、
今回の事件についても
追って
書けたらなぁ、
と
思っています。
まだまだ
気持ちが落ち着かないので
もう少し
先になってしまいそうですが。
それでは
また
近いうちに…
ずーっと更新していませんでした。
ごめんなさい。
実は
大事件がありまして。
バタバタしていたのと
あたし自身が精神的に
ちょっと
参っていたので
ずっと日記が
書けませんでした。
エレベーターの話の続きがあるので
下書きしていたものを
upします。
②として。
で、
今回の事件についても
追って
書けたらなぁ、
と
思っています。
まだまだ
気持ちが落ち着かないので
もう少し
先になってしまいそうですが。
それでは
また
近いうちに…
エレベーターの中。
GW最終日は
社内、同じ課
しかも
あたしとほぼ同期の
結婚式でした。
GWって
ホテル自体は忙しいんだけど
あたしのいる
宴会課ってのは
割と忙しくないんです。
だって
GWに結婚式したり
パーティー開いたりって
あんまりしたくないでしょ?(笑)
なので
社内の(つまり身内の)人の
結婚式とかって
真夏、とか
GWとか
宴会場が
暇な時によくあるのね。
で。
披露宴は
あたしは仕事として
参加。
コウさんは
来賓として呼ばれてるので
お客様として参加。
いつも一緒に働いている仲間に
サービスをするってゆー
不思議な感覚。
ま、
みんなやりたい放題なんだけど。
コウさんは
随分おとなしく
静かに呑んだり
食べたりしていて
たまにあたしを
呼び付けては
わざと
我が儘を言ってみたり
話し相手にしてみたり(笑)
コウさんの
礼服姿は
めちゃくちゃ、
かっこよくて!!
あたしは
終始、
見惚れてました。
もう、
仕事そっちのけ(笑)
披露宴がお開きになって
コウさんが
あたしの方へ来る。
―二次会、来るんでしょ?
―うん、着替えていくよ。
―じゃあ、俺先に行ってるね。
―解った~。
―一応、着替えたら電話して。
―うん。
ひらり、と
手を振って
会場を出るコウさん。
あたしは
サービスだけで
片付けはしなくていいよシフトだったので
さっさと
お疲れ様を言い
ロッカーでお着替え。
着替えて
髪を直して
ロッカーから
コウさんに電話する。
―もしもーし。
あたし今支度できたけど…
―お、お疲れ。
俺今〇〇さん達とラウンジで呑んでる。
―あれ、二次会何時から?
―あと30分あるよ。
―なんだ、急いじゃった(笑)
―とにかく上がっておいでよ。
俺もそっち向かう。
―うん、ありがと。
一度、従業員通路を出て
再びエントランスから
ホテル内へ。
私服で一般客と混ざって
歩くのは
なんだか不思議な気分。
エントランスを入ってすぐに
コウさんが立っていた。
にっこり、
笑って手を振る。
―お疲れ!
―お疲れ様。てか
コウさん結構呑んでる?
―うん、ちょっと…
でもそんな酔ってないよ。
―ならいいけど?
コウさんを見つめる。
―とにかく、
上行こ?
―そだね。
披露宴は低層の大宴会場、
二次会は最上階の宴会場だった。
コウさんが
あたしの背中に
そっと手を伸ばす。
その、
完璧なエスコート。
あたしは
嬉しさで
にやにやする。
不思議。
いつもは働くだけの場所で
ふたり
“従業員”ではなく
“お客様”として
その
豪華すぎるエントランスを
歩いていく。
混みあう人並の中
コウさんの
優しいエスコートで
進んでいく。
エレベーターホールで
高層階へ行くエレベーターを
待っていた時
同じく
エレベーターを待っていた
外国人のカップルと目が合った。
あたしは
微笑みかけ
彼らは
微笑み返してくれた。
あたしとコウさんは
カップルに
見えたかな。
到着したエレベーターに乗ったのは
あたし達と
そのカップルだけだった。
あたしは
つい職業病で
(私服なのに)
先にエレベーターに乗り
ドアを手で押さえると
彼らに
行き先を聞き
ボタンを押す。
―さーすが。
コウさんがあたしの肩を抱き
褒めてくれる。
あたしは
そっとコウさんに寄りかかり
―ありがと。
笑った。
ゆっくり上昇する
エレベーター。
外国人カップルの降りる階が近づくと
彼らは扉の近くへ立ち
そして彼女の方が
コウさんを見て言った。
「あなたはこんなに気の利くかわいい恋人を持てて幸せね。」
コウさんは英語がわからないので
曖昧に笑う。
彼氏の方が続けた。
「大切にしなきゃだめだよ。俺みたいにね」
はっはっは、
と大きな笑顔で笑い
彼らはキスをした。
あたしは
「どうもありがとう。
でも、あたしは十分大切にされてるから。」
と答え
コウさんを見た。
きょとん、と
?顔のコウさん。
エレベーターが止まる。
「よい旅を!」
あたしは笑って手を振った。
再び扉が閉まり
エレベーターにはあたしとコウさん。
―今、何て言われたの?
―ん?ひみつ。
―なんで?
―英語わかんないコウさんが悪い!(笑)
―多少はわかったって、
あんな早口じゃわかんないよ。
あたしはさっきの言葉を
思い出して笑う。
―嬉しかったから…
―え?
―あのね、
彼女さんの方が最初にコウさんに言ったでしょ?
―うん。
―笑わない?
―うん。
―「あなたは気の利くかわいい恋人がいて幸せね」って…
で、彼氏さんが
「俺みたいに彼女を大切にしなきゃだめだよ」ってさ。
コウさんが
無言で
あたしを見る。
―外国人って、そーゆーの
なんかお節介だよね。
―え?
あたしは
聞き返す間もなく
コウさんの腕の中に
抱きすくめられてしまう。
―コウさん、
このエレベーター…
カメラ回ってるよ?
―知ってる。
―だめだよ。
俯くあたしの顎を掴んで
コウさんは
ついばむように
キスをした。
すごく、
ドキドキした。
いつもより
強く香る
シャネルの香水。
甘い、でもセクシーな
コウさんの匂い。
―これでもさ、俺は
すごく大切だと思ってるんだよ。
あたしを離して
手を握ったまま
コウさんはそう言った。
見上げたその顔は
なんだか少し
泣きそうだと思った。
―知ってるよ。
あたしは
切なくなって
思わず
背伸びをして
そっと、
コウさんに
キスを返した。
ゆっくり上昇していた
エレベーターが
速度を落とす。
まもなく、
最上階。
あたし達は
開いた扉から
何もなかった顔をして
でも、
しっかりと
右手と左手を繋いだまま
小さな箱から
踏み出す。
最上階のラウンジからは
夕焼けと
輝きだした
夜の街が見えるだろう。
とりあえず、
その後の話は
また後日。
社内、同じ課
しかも
あたしとほぼ同期の
結婚式でした。
GWって
ホテル自体は忙しいんだけど
あたしのいる
宴会課ってのは
割と忙しくないんです。
だって
GWに結婚式したり
パーティー開いたりって
あんまりしたくないでしょ?(笑)
なので
社内の(つまり身内の)人の
結婚式とかって
真夏、とか
GWとか
宴会場が
暇な時によくあるのね。
で。
披露宴は
あたしは仕事として
参加。
コウさんは
来賓として呼ばれてるので
お客様として参加。
いつも一緒に働いている仲間に
サービスをするってゆー
不思議な感覚。
ま、
みんなやりたい放題なんだけど。
コウさんは
随分おとなしく
静かに呑んだり
食べたりしていて
たまにあたしを
呼び付けては
わざと
我が儘を言ってみたり
話し相手にしてみたり(笑)
コウさんの
礼服姿は
めちゃくちゃ、
かっこよくて!!
あたしは
終始、
見惚れてました。
もう、
仕事そっちのけ(笑)
披露宴がお開きになって
コウさんが
あたしの方へ来る。
―二次会、来るんでしょ?
―うん、着替えていくよ。
―じゃあ、俺先に行ってるね。
―解った~。
―一応、着替えたら電話して。
―うん。
ひらり、と
手を振って
会場を出るコウさん。
あたしは
サービスだけで
片付けはしなくていいよシフトだったので
さっさと
お疲れ様を言い
ロッカーでお着替え。
着替えて
髪を直して
ロッカーから
コウさんに電話する。
―もしもーし。
あたし今支度できたけど…
―お、お疲れ。
俺今〇〇さん達とラウンジで呑んでる。
―あれ、二次会何時から?
―あと30分あるよ。
―なんだ、急いじゃった(笑)
―とにかく上がっておいでよ。
俺もそっち向かう。
―うん、ありがと。
一度、従業員通路を出て
再びエントランスから
ホテル内へ。
私服で一般客と混ざって
歩くのは
なんだか不思議な気分。
エントランスを入ってすぐに
コウさんが立っていた。
にっこり、
笑って手を振る。
―お疲れ!
―お疲れ様。てか
コウさん結構呑んでる?
―うん、ちょっと…
でもそんな酔ってないよ。
―ならいいけど?
コウさんを見つめる。
―とにかく、
上行こ?
―そだね。
披露宴は低層の大宴会場、
二次会は最上階の宴会場だった。
コウさんが
あたしの背中に
そっと手を伸ばす。
その、
完璧なエスコート。
あたしは
嬉しさで
にやにやする。
不思議。
いつもは働くだけの場所で
ふたり
“従業員”ではなく
“お客様”として
その
豪華すぎるエントランスを
歩いていく。
混みあう人並の中
コウさんの
優しいエスコートで
進んでいく。
エレベーターホールで
高層階へ行くエレベーターを
待っていた時
同じく
エレベーターを待っていた
外国人のカップルと目が合った。
あたしは
微笑みかけ
彼らは
微笑み返してくれた。
あたしとコウさんは
カップルに
見えたかな。
到着したエレベーターに乗ったのは
あたし達と
そのカップルだけだった。
あたしは
つい職業病で
(私服なのに)
先にエレベーターに乗り
ドアを手で押さえると
彼らに
行き先を聞き
ボタンを押す。
―さーすが。
コウさんがあたしの肩を抱き
褒めてくれる。
あたしは
そっとコウさんに寄りかかり
―ありがと。
笑った。
ゆっくり上昇する
エレベーター。
外国人カップルの降りる階が近づくと
彼らは扉の近くへ立ち
そして彼女の方が
コウさんを見て言った。
「あなたはこんなに気の利くかわいい恋人を持てて幸せね。」
コウさんは英語がわからないので
曖昧に笑う。
彼氏の方が続けた。
「大切にしなきゃだめだよ。俺みたいにね」
はっはっは、
と大きな笑顔で笑い
彼らはキスをした。
あたしは
「どうもありがとう。
でも、あたしは十分大切にされてるから。」
と答え
コウさんを見た。
きょとん、と
?顔のコウさん。
エレベーターが止まる。
「よい旅を!」
あたしは笑って手を振った。
再び扉が閉まり
エレベーターにはあたしとコウさん。
―今、何て言われたの?
―ん?ひみつ。
―なんで?
―英語わかんないコウさんが悪い!(笑)
―多少はわかったって、
あんな早口じゃわかんないよ。
あたしはさっきの言葉を
思い出して笑う。
―嬉しかったから…
―え?
―あのね、
彼女さんの方が最初にコウさんに言ったでしょ?
―うん。
―笑わない?
―うん。
―「あなたは気の利くかわいい恋人がいて幸せね」って…
で、彼氏さんが
「俺みたいに彼女を大切にしなきゃだめだよ」ってさ。
コウさんが
無言で
あたしを見る。
―外国人って、そーゆーの
なんかお節介だよね。
―え?
あたしは
聞き返す間もなく
コウさんの腕の中に
抱きすくめられてしまう。
―コウさん、
このエレベーター…
カメラ回ってるよ?
―知ってる。
―だめだよ。
俯くあたしの顎を掴んで
コウさんは
ついばむように
キスをした。
すごく、
ドキドキした。
いつもより
強く香る
シャネルの香水。
甘い、でもセクシーな
コウさんの匂い。
―これでもさ、俺は
すごく大切だと思ってるんだよ。
あたしを離して
手を握ったまま
コウさんはそう言った。
見上げたその顔は
なんだか少し
泣きそうだと思った。
―知ってるよ。
あたしは
切なくなって
思わず
背伸びをして
そっと、
コウさんに
キスを返した。
ゆっくり上昇していた
エレベーターが
速度を落とす。
まもなく、
最上階。
あたし達は
開いた扉から
何もなかった顔をして
でも、
しっかりと
右手と左手を繋いだまま
小さな箱から
踏み出す。
最上階のラウンジからは
夕焼けと
輝きだした
夜の街が見えるだろう。
とりあえず、
その後の話は
また後日。