いのうえんち第40弾 「地震の時の井上家の巻。後編。」
何があったんでしょうねえ。旦那さんがんばれ!この奥さんが、「あんた達、ほれ!向かいのビルの1階にあるトイレが水出るからさ、子供達だけでも体拭かせてもらいな!トイレの前にうちの旦那がいるから!」と案内され、気の弱そうな旦那さんに奥さんが「ほれ、あんたちょっと手伝ってやりな!」って言われて、家の子供の身体を拭くのに手伝ってくれた。なんかすいません・・・さて、家について昼に作った鍋を食べて、時間を潰した。すると、社長から電話が来た。「もしもし」「あ、統括?どうだいそっちは。」「まだ電気は復旧しないねえ。」「店どうだった?」「ああ、見に行ったよ。姿見の鏡が倒れて割れてたわ。水も出ないしどうにもできん。あと誰か知らんが、洗濯機の上の棚に置いてある洗剤の蓋をちゃんと閉めないで置いてたみたいで、落ちて床に零れてヌルヌルになってたわ。」「そうかあ、明日さ。男性社員だけでも収集して店の復旧作業をやろうと思うんだけど、どうかな。」「まあ、電気がつけばねえ・・・」「とりあえず、その予定でいて。俺からLINEで支持するわ。」「了解」と言って電話を終えた。すると、ゆり子が不機嫌そうに「なに?明日私ら置いて店行くの?」「ああ、多分1~2時間あったら終わると思うよ。」「もー・・・子供等を私一人で見るの大変なんだから早く帰ってきてね。」暫くすると、ゆり子のお母さんから電話があり、ゆり子の実家の地区が電気が復旧したという知らせだった。ゆり子は「いいなあ・・・そっちに避難したいけど、明日旦那が会社行くみたいだから、明日にするわ」と伝えた。さて、子供達は18時まで昼寝をしたので22時を過ぎても寝る気配はない。すこぶる元気だ。当時、2歳の息子は夏祭りに爺ちゃんに買ってもらった、ミニオンズのキャラクターが先端に着いたステッキの玩具で遊んでいる。この玩具はスイッチを押すと先端にあるミニオンズの頭が光り、ミラーボールの様に光が回転し、けたたましくミニオンズが歌い出すのだ。もーーーーーー!!!永遠にやっている。部屋が暗いからね、光もはっきりと壁に映るのだ。ずーーーっとけたたましくミニオンズが「バーナァナァァァァ!!」と歌っている。頭がおかしくなりそうだ。まあ、キャッキャと走り回って遊んで疲れるのを待つしかない。12時近くにやっと寝てくれた。俺も有利子も何だか疲れてしまって、懐中電灯と目覚まし時計代わりにしか使用してなかった解約した携帯電話が満充電だったので、そのライトを使用し読んでなかったマンガをしばらく見て寝た。翌朝、まだ電気は復旧してなかった。昨日作ったごった煮の鍋を温めなおし、朝食として食べ、子供を公園で遊ばせて、水汲みに行ったりしてたら、12時近くになった。するとゆり子が「社長何時に来るの?」「午後って言ってた。」「もう午後なんだけど・・・」「そうだねえ・・・まあ、1時くらいまで連絡来なかったら、こっちから連絡してみるわ。」そんでもって、1時。まだ連絡はない。するとゆり子が「まだ連絡来ないの?」「ああ、今連絡取ってみるわ。」俺はLINEで「何時に来るの?」と送った。14時になっても返信が無い。するとゆり子が「まだ?ってか、やるの?行っても電気点いてないじゃん。そしたら何もできないじゃん。」「そうだよなあ。」「やらないなら、もう実家に避難したいんだけど。子供達もお風呂とか入れたいし!」「連絡してみるわ。」と言ってたら、社長からLINEが鳴った。見てみるとグループLINEだった。「今、○○区にいます。スタッフの中に取り急ぎ必要な物がある人いますか?」と言う内容だった。それを見て俺もゆり子はキレた。「こいつ何考えてんの!まずはうちに連絡じゃないの?」「そうだな。ちょっと連絡するわ。」社長には大変申し訳ないのだが、電気と言う便利なアイテムが無くなり、不便な事柄が増えると、普段なら気にしない事でもイライラしてしまう様だ。俺は、「午後になったけどまだ行く予定でいるの?今行っても店内真っ暗だし、水も出ないから拭き掃除も出来ないし片付けも出来ないよ。言ったところで何もできないという事を認識するだけで、言っても無駄なんじゃない?それでも行くなら社長支持なんで、待機はするけどさ。行かないなら行かないで連絡くれたら、俺達もゆり子の実家が電気復旧してるから、子供も風呂も入れられてないし、早く非難したいんだけど。」と、文面からもちょっと怒ってますよって分かる感じにLINEした。30分程した時に社長から「分かった。行って」とだけLINE来た。ゆり子は「なんなんあいつ!!!!んもおおおおおおお!!行こう早く!!!」ってめちゃめちゃ怒ってた。妻の実家の家は東区のとある場所にあり、東区のとある道路が数kmにわたって亀裂とズレが生じ通行止めになっていた。タクシーで移動したのだが車窓から見える家は時々外壁が割れたり落ちたりしている家もあった。ゆり子の実家に着いた。普通に電気点いてる。速攻風呂に入れさせてもらった。ああ・・・電気、ありがたい。温かいお湯、ありがたい。冷たいドリンク、ありがたい。あったかいご飯、ありがたい。普通だった生活が、普通じゃなくなったのか。普通じゃなかった生活が、普通になったのか。とにかく、電気や水と言ったライフラインが当たり前にある事がありがたい。テレビでは相変わらず地震の事ばかり報道されていた。その日はゆり子の実家に泊まらせてもらう予定だったのだが、20時頃に札幌駅周辺の電気が復旧したという情報が入った。じゃあ明日、店の復旧とかも行かなきゃならないので帰ろうかという事になり、ご飯とお風呂だけ頂いて帰る事にした。いや~~~帰ってきてよかった!!家についてみると、風呂場の蛇口から勢いよく水が出ていた。そう、地震起きてすぐに水を風呂場に貯める為、蛇口を開放したままだったのだ。浴槽からもったいないほど水が溢れてたよ。今後、また同じ事があった時は気を付けよう。蛇口は閉めよう!翌日、昼頃に店に社長を始め男性スタッフが集まり、復旧作業をして、お客様には一切連絡の取れなかった状態だったので、電話連絡をした。14時ごろ家に帰るとゆり子が「ねえ、夜ご飯どうする?別に食べるものが無い訳じゃないんだけど、冷凍庫の中の物とかは腐っちゃいけないと思って鍋にしたじゃん。だから、おかず何作る?って感じになってるんだけど。」「ああ・・・なるほどね~」「なんかうちのマンションの人達も買い出し行ってるみたいだよ。うちらも行く?」「そうだな・・・何が売ってるのか分からんけど、行くだけ行ってみるか」という事になり買い物に出かける事にした。買い物に行く道中で今回の地震の事を話しながら歩いた。「とりあえず、12月とかの寒い時期じゃなくて良かったなあ。」「そうだね。ストーブつかないから凍死するよね。」「あと、今回の事で、非常時にはおいておかなきゃならないグッズという物を見直す機会になったな。」「そうだね。携帯電話の予備バッテリーは必要だわ。」「だって、気持ちはわかるけど、お前ずーっと携帯で情報見てるから、充電できないのに。」「そのせいじゃないよ!初日に東京の友達のグループLINEで『ゆりこ大丈夫か?』って来たからさ、こっちも『大丈夫だよ』って返信したらさ、そのグループLINE内で、『がんばれー』とか、『東日本の震災の時はああだった、こうだった。』とか盛り上がりだしてさ、こっちは充電がもったいないというのに、ずーっとピロンピロンってコメント上がるのさ。あれはちょっと気遣ってほしいよね。」「それは迷惑だなあ。」「あと、懐中電灯の電池は予備を買っておかないとね。」「懐中電灯もそうだけど、ランタンみたいなタイプがあった方が良いね。」「なるほどね。」等と話しながら歩いていたら、サツドラに着いた。ここも食料品が売っているので見ていく事にした。すると、入口に貼り紙があり「電池、水、カップラーメン、携帯電話のバッテリーは完売しています。」と書いていた。なるほど。店内を見てみたが目ぼしいものはほぼ無くなっていた。更に歩いていくとホーマックがあり、ここは食料品はほぼ売ってないのだが、今後の防災グッズの参考に見ていく事にした。すると入口に貼り紙があり「電池、水、カップラーメン、携帯電話のバッテリーは完売しています。」と書いていた。なるほど、ここもか。さて、本来の目的地である生鮮市場に着いた。中に入ると沢山の買い物客がいるのだが、商品の陳列棚はスカスカだった。それでも、何かないかなあと見ていたら、ちょうどドリンクコーナーで2リットルペットボトルの水を店員が大量に陳列していた。それを見たゆり子は「ねえ!!ここ!!水売ってる!!買っとく!?」と興奮しだした。平常時に戻ったというのにゆり子の頭はパニくったままの様だ。「おちつけ・・・うちはもう水が出るんだぞ・・・」「あ・・・そか・・・」その数日後には徐々に通常の生活に戻り、近くのお店やコンビニにも商品が並び出した。当時働いていた店も通常営業になり、お客様との施術中に話す会話は地震の時の話ばかりになった。あるお客様は、イオン系列のマイバスケットに買い物に行くと、多分本社から通達があり、レジの混雑を避ける為に食料品以外の販売は禁止になっていたそうで、会計も10円以下は切り捨てされて、賞味期限の早い物は半額以下になってたそうだ。多分、本社の上層部から、そのような指示が出てたんだろうねえ。でも、やはり店側も混乱があったのか、一袋5キロの米が500円の値札が付いていたらしい。その人は念の為店員さんに「これ、ここに書いてある値段で良いんですか?」と聞いたら、店員さんも「そこに書いてある値段で良いんですよ!」と忙しそうにしながら答えたらしい。だったら買わなきゃ損だよね!!と思って、3袋買ったらしい。でも、その人マンションの10階に住んでるらしく、エレベーターも止まっていた為、15キロの米を担いで上がる事になったそうだ。「罠だったわ~」だって(笑)それ以外にも、ススキノでは地震があったタイミングで営業していたキャバクラがもちろんあったんだろうね。おそらく、営業中に強い揺れを感じ、電気が止まり、水が出なくなる訳じゃないですか。そうなると、営業どころじゃないですよね。事情が事情だけに全てのお客様に退店して頂き、従業員の人もどうしようもないので帰るじゃないですか。それで、店を出ると外は電灯もなく真っ暗な訳ですよ。そんな中で、ひったくりを連続でやってた奴がいたらしい。捕まったのかどうかは知らんけど、もちろん感心してはいけないのだけど、そのタイミングで「おし!チャンスだ!」って思うんでしょ。すげえよな!その切り替え!その頭脳をもっと他に生かせよな!でもまあ、そうだよねえ、真っ暗で襲われても良く顔が見えないもんねぇ・・・襲われた方はたまったもんじゃないよね。例えば出張で札幌に来て、夜にキャバクラで楽しんでたら地震に遭遇して、店から出たらひったくりにあって、バッグに入った財布と携帯が無くなるんでしょ、この非常時に!死にたくなるよね!!あと、断裂した道路が危険だから入るなっていう警告が書いてあるところに勝手に入って、案の定怪我をして救急車を呼ぶ羽目になったおばさんがいたらしい。ほんと迷惑だよねえ!これが俺の母親だったら4日くらい説教するわ。まあ、でも今思えば、亡くなった方もいるんでね。軽々しい発言は出来ませんが、俺は家族ともども大きなケガもなく、こんな経験が出来たので、災害時に対する準備の甘さを気づけて良かったなあと思うし、大変ではあったけど、こんな状況でもゆり子と子供達と笑って暮らせたのは、幸せだなあと思う。すんません。最後はノロケで終わります。