こんにちは^^
艶心(ツヤゴコロ)カウンセラーの佳子(ヨシコ)です。
ある日、
恐ろしく痩せ細った身体を引きずるように来局した彼は、
「先生、これ見て」
と大きめの黒いカバンを開けました。
中はスカスカで
預金通帳と大学の卒業証書だけが入っていました。
それを取り出し言うのです。
「僕は今、ホテル暮らしなんだ。
働いていないから収入はないけど心配いらないよ。
ほら、これだけの貯金があるんだから。」
「先生、
前に僕は◯◯大学を卒業したって言ったろ?
ちゃんと卒業証書あるんだよ。」
「そうですね。
貯金もたっぷりあるのですから
心配いりませんね。
卒業証書は大切ですよね。
それほど大切に扱われて
卒業証書も嬉しいですね。」
私はそうお答えするしかありませんでした。
もう少し栄養を何とかしましょうとか、
再検査で入院しましょうとか、
この方にはもう、
そこを勧めることが大切なのではないと思いました。
この方の生き様に
もっともっと共感してあげることが大切なんだ。
と、ようやく分かってきたところでした。
でももう、彼に会うことはありません。
彼は既に末期の膵臓癌でした。
本人は最後までそれを認めませんでした。
入院も拒み
何の治療も受けませんでした。
「膵臓癌ではない」と
こちらから聞いてもいないのに
言い張っていましたから。
ではなぜ私が彼の膵臓癌を知ったのか。
それは保健師さんと来局した際、
あまりの異常さに疑問があり、
保健師さんに伺ったからです。
保健師さんいわく、
本人は絶対認めないのだと。
しかも、
なぜだかホテル暮らしという架空の暮らしを作り上げ、
とてもホテルから来たとは思えないほどボロボロの服と靴で来局するのです。
黒いカバンに通帳と卒業証書を入れて。
本当は荒れ果てた自宅から通院していたのでしょう。
ご家族もいない独居生活。
衛生を保てるエネルギーはない状態でしたから。
毎週、更に痩せこけていくその姿は
見ているこちらが辛くなるほどでした。
コンビニのビニール袋をぶら下げ、
食べたくないけど、
それでもまだ食べられそうな
パウンドケーキと甘い飲み物を買って薬局に来る。
全く食欲ないけど
何かは食べなくちゃと言って。
ついに少しも食べられなくなってきたのか、
栄養ドリンクが欲しいと言われた日がありました。
処方してもらえるかもと
処方医に確認し処方してもらいました。
缶であった為、
体力の落ち切った彼には
持ち帰るには重いのです。
なので郵送することになりました。
その時の住所は
ホテルでなく、
ご自宅でした。
やっぱり…
ホテル暮らしかしら⁇
と疑ってはいましたが、
嘘をついていたと分かりました。
私は郵送手続きをしながら
とても切なくなりました。
なぜ、
ホテル暮らしと嘘までついて
癌を認めず、あんなに辛い状態に自分を追い詰めるのだろう…
薬局スタッフ全員
死を感じずにはいられませんでした。
そう感じる一方、私は、
あんな死にそうな身体にも関わらず、
通院、来局できるパワーはどこから来るのだろうと、
生の力を超える想い、
何かを守り抜きたい‼️
という力 が残っていることに驚かされてもいました。
彼はそれ以来、
二度と来局していません。
〜 * 〜 * 〜 * 〜 * 〜 *〜
彼は、
彼の大切なものを守り抜けたのでしょうか?
もっと人生の早い段階で、
身近な人と共有できていたら、
信頼できる人間関係が築けていたら、
違った選択肢があったのかもしれないとも思います。
有名私立大学を卒業し、
理想の生き方があったのでしょう。
もう少し元気な時はよく言っていましたから。
「働いていない僕を見て、
近所の人が陰口をたたく」と。
これは
統合失調症という病気による幻聴でしょう。
しかし、
それが本人の現実でした。
理想の自分になれていないことを最も許せなかったのは、
他人ではなく自分本人だったのでしょう。
頼りの綱であったお母様も亡くし、
心のよりどころは
唯一お喋りができる、
理想の自分を生きることができる
病院と薬局だったのかもしれません。
人には
命を削ってでも守りたいものがある。
ふと、サムライの生き方もそうよね…
なんて思いました。
生き様が大事。
彼本人が生き切ったと思っているかは分かりません。
でも、薬局の中では、
ホテル住まいのリッチな生活。
学歴もあり、英語が堪能。
ポエムが好きで時々それを聞かせてくれる。
また来週!と言って精一杯元気なふりして去って行く。
理想の生き様を生き切ったのだと思います。
〜 * 〜 * 〜 * 〜* 〜 * 〜
「命より守りたいもの」
それを命を削らせず守れる方法はないのか?
模索中です。
ただ、その存在を知ってあげること
まずはそこからだなと思う今日この頃。
〜 ★ 〜 ★ 〜 ★ 〜 ★ 〜 ★ 〜
《本日の闇を光に変える心の処方箋》
あなたの守りたいもの、
大切なものは何でしょう。
理想の自分とそうでない自分
どっちも大切な自分です。
どっちも愛しむことができると
あなたの人生は他人軸でない
あなた軸の幸せを感じることができるのです。