⑭
峠杣一日・著
「えい、忌(い)ま忌ましい老い耄(ぼ)れ天狗め!
おい!」
「御任(おまか)せあれで御座(ほざ)る」
お冥(おみゃう)の命令に、兇然法師(きょうねんほふし)が応(こた)へる。
其の肩には、兇興翁(きょうきょうをう)が不敵(ふてき)な面構(つらがま)へで坐(ざ)して居る。
「やれ、久方振(ひさかたぶ)りぢゃの、兇興」
おっと、不意(ふい)に割り入(い)るは豆鼕翁(とうとうをう)の声。
峠杣一日翁(たうげそまのいちにちをう)の肩に坐して、渋味(しぶみ)溢(あふ)れる登場だ。
「き、貴様豆鼕!
己(おのれ)此処で会ったが百年目……否(いや)億萬年(おくまんねん)経(た)っちょる!
我が……我が臆念(おくねん)、到頭(たうとう)霽(は)らす時ぞ!!
兇興変化(きょうきょうへんげ)!
ちくり!」
すは、兇興翁の変化、迷妄(めいまう)ぱちんこを兇然法師が構(かま)へる。
「何の!
豆鼕変化(とうとうへんげ)!
そいや!」
豆鼕翁の変化、月虹豆鉄砲(げっこうまめでっぱう)を一日翁が構へる。
お冥と経法印(きゃうほふいん)が、ぱっと其の場を離れた。
対峙(たいぢ)する迷妄と月虹。
邪悪と正義の一騎討(いっきう)ちだ!
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
つづく。