⑫
峠杣一日・著
お冥(おみゃう・兇冥きよみ)が随(したが)へる二羽の梟(ふくろふ)が、ぱっと変化(へんげ)した。
やや、人の姿に変はった彼奴(きゃつ)は邪悪兇然(じゃあくきょうねん)。
近来(きんらい)頓(とみ)に拡大し巷間(かうかん)をざわめかせてゐる新興団体(しんこうだんたい)梟鏡教団(けうきゃうけうだん)の教祖(けうそ)、兇然法師(きょうねんほふし)だ。
もう一羽の梟は、小さな人擬(ひともど)き。
豆鼕翁(とうとうをう)にも似てゐるが、其の頭部はまるで引っ付き虫(ひっつきむし・葈耳をなもみ)の化け物だ。
兇然法師の肩に坐す彼奴は兇興翁(きょうきょうをう)、兇興大明神(きょうきょうだいみゃうじん)と號(がう)する。
人知れず兇興翁が繰り出す秘技・飛兇捲(ひきょうけん)!を受けた者は、迷妄念々(めいまうねんねん)に取り憑(つ)かれてしまふ。
自(みづか)らの裡(うち)にある薄志(いくぢなし)な燻(くす)ぶりが極限迄増幅され、程無く氣狂(きちが)ひの怪物へと変貌(へんばう)し暴れ回るのだ。
其処へ、颯爽(さっさう)と登場する梟鏡教団。
兇然法師の梟鏡法力(けうきゃうほふりき)が唸(うな)り信徒(しんと)が呪(まじな)ひを誦(しょう)すれば、怪物は滅尽(めつじん)する。
恐ろしく古(ふる)めかしいマッチポンプ、されど増し行く迷妄信徒。
あな、驚(おどろ)しや。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
つづく。