『なんぞころびやおき 大極楽本尊郷篇』
④
峠杣一日・著
本当の幸(さいは)ひは、生命の本質が好(よ)しとするところにある。
其れは無論三つ子の魂の一(いち)であり、始めにして結びの常の命(とはのいのち)である。
此の原点たる常の鏡(とはのかゞみ)に鑑(かんが)みれば、人世(人生)の舟を自(みづか)ら一(いち)へと漕(こ)ぎ出(い)づる事こそ好運(幸運・かうゝん)ならう。
♪~「好う候(ようそろ) 人世行路(人生行路・じんせいかうろ) 心意氣(こゝろいき)」
胡蘆駒福兵衛(ころこまのふくべゑ)が、鼻唄交(はなうたま)じりに迴門號(くわいもんがう)を飛ばしてゐると…。
《未確認飛行物体!》
《二体!》
《直下(ちょくか)より高速接近!》
突如(とつじょ)、けたゝましく警報(けいほう)が鳴り響いた。
えい、福兵衛(ふくべゑ)が操舵輪(さうだりん)をくるゝゝ鮮(あざ)やかに衝突を回避(くわいひ)、遉!(さすが!)。
上空に突き抜けた未確認飛行物体だったが、再び迴門號(くわいもんがう)を目指してまっしぐらに急降下(きふかうか)して来た。
「已む無し(やむなし)!
ぎゃあ!」
邀撃(えうげき)せんとした福兵衛(ふくべゑ)だったが、螢火のお総(ほたるびのおふさ)の木太刀(きだち・木刀)の峰打(みねう)ちで其の場に頽(くづほ)れ失神した。
どかん、どかんと衝撃と共に迴門號(くわいもんがう)に突き立ったのは、やあ二機の起き上がり小法師(おきあがりこぼし)の乗り物であった。
つゞく。