妄想bl
不定期更新です
大丈夫な方だけ……ご一緒に
*n*
僕がまだ恋を知らない頃
「和也、大事な話やから、よう聞いときや」
田舎のおばあちゃんが神妙な顔をして話してくれた
「ばあちゃんも生まれるずっと前の話やけど……うちのご先祖に女の人を騙しては捨てるどうにも質の悪い人がおってんて……」
「質の悪い人……?」
「そう、変に人を惹きつける不思議な人やったらしくて……そのご先祖に騙された女の人たちはひどいことして捨てられてるのに どうしてもご先祖を嫌いになれんくて……気持ちに見切りをつけて新たな人生を歩むこともできひんかったって」
「なんか……つらいね……」
「ほんまにな……」
「中には心をつかんだまま離してくれへん ご先祖を恨みながらも恋しくて
つらすぎてつらすぎて 一生を終えるその時、ご先祖を呪った人もおったらしい」
「の、呪った??」
「ホンマかどうかはわからんよ、けど……そのせいで、うちの家系は男の子がなかなか生まれへんて言われてるねん」
「稀に生まれても、変な体質を持ってるて」
「変な……体質??」
「そう……身体の交わりをもつと相手の記憶から自分が消えてしまうねんて」
「交わり……って?え///?その……」
「簡単に言うと、えっちして目ぇ覚めたら相手がそのこと全部忘れてしまってるねんて」
「服も着んと一緒に寝てんのに、目ぇ覚ましたら何もなかったことになってるねん」
「え、どういう状況?一緒に寝てるのに?疑問に思わないの?」
「うちもそこらへん詳しいことはようわからんねんけど……昔、うちの大おじさんが言うてたんは『夢遊病みたいや』って」
「そう……なんだ」
「身体を合わせるほど好きな人が自分のこと忘れるのなんか堪えられへんやろ、だからみんなあきらめて 一生独身でいはるんやって」
「うちが女系家族なんはそういうことや」
「…………」
「和也はうちの久しぶりの男の子やから、ほんまのとこどうなんかはわからんけど……まぁ頭の片隅にでも覚えとき」
そんな話を聞いても、当時の僕は信じる信じない以前に恋とか愛とかまだぴんとこなくて「ああ、そうなんだ」ぐらいにしか思っていなかった
それでも子どもの頃に聞いたその話が無意識にストッパーになっていたのか
中学生になって周りが恋だ愛だと恋愛に興味をもつようになっても
そういう意味で誰かを好きになったりすることはなかったし興味もわかなかった