今日は1日、まったりの休息日と決めた。朝からベランダの水やりの後は
シャワーしてくつろいでいる。おやすみしているコーラスの楽譜を仲間が
届けてくれて、新しい曲「人生の扉」をYoutubeで竹内マリアに合わせて
練習。前から好きな曲だったけれど歌ってたら、また、好きになった。
私の部屋の隣は会社で土、日曜日はおやすみ。大声張り上げてもOK。ポエム「cocoringの部屋」
ひんやりと床にごろりの夏休み
連載小説「幸せのパズル3」その15
「あのさぁ、郁美が死んでその当時の友達なんて全く寄り付かなくなったのに、なんであんたたちはこんなに親切にしてくれるの、もう俺は死ぬのは止めた、ね、だから良いでしょ。本当、すみませんでした。迷惑かけて」
有村実雄の言葉にふっと現実に変えればそれもそうだ。深入りしすぎた。恭一が言う。
「有村さんの死ぬ気が失せてよかったです。ことの始まりは有村さんが捨てたポーチを私たちが拾ったからなんですよ。ご面倒でも、明日にでも警察に出向いてちゃんと受け取ってくださいね」
「ああ、そうか、ごめんなさい。俺の軽率な行動でみんなを巻き込んでしまって」
「いやいや、それはもう良いですよ。では、お願いしますよ」
「いや、ちょっと待って。拾ってくれたんだから、お礼の一割はもらってくださいよ」
「いえいえ、それはもう良いですから」
「それはダメ。こうして親切に付き合ってくれておかげで人間にも戻れた気がしています。
ご面倒かけついでに明日はどうか警察付き合ってください」
「エル! エルじゃないか! お前こんなとこにいたのか」
有村さんはしゃがんでエルを全身で受け止める。いや…、本当はエルではない。ここは動物保護センターだ。やむおえず飼い主の手元を離れた犬たちが保護されているのだが、今日は海星の運転で有村をのせて来たのだ。海星といえばカナエとの思わぬ出会いから今は佐知子の行きつけの美容室で働きながら通信教育を受けている青年だが、今年二一歳、心身ともども立派な青年になってきた。車はミモザ美容室のもので、この美容室では介護が必要になったお年寄りの送迎つきの美容室として、重宝がられている。
「幾つになっても髪は美しくしていて欲しいもの」
とこれはミモザ美容室のママの信念で、海星はその送迎も担当しているのだ。ミモザ美容室の休みを利用して今日は車を使わせてもらい海星に運転も頼んで、動物保護センターまでやってきたのだった。
有村さんにはここに来るまでは内緒にしていたのだが、実はカナエは恭一とともにこのセンターを訪問していた。そしてラブラドールが一頭保護されていることは確認していたのだ。
カナエの鋭い勘が働いたのだった。
「ねぇ、孤独な有村さんを立ち直らせるには犬よ。それもラブラドールが良いの」
IO倶楽部のリビングでは最近はもっぱら有村さんの話題ばかりだった。奥さんに死なれ子供もなくビル持ちでお金は有り余っていても天涯孤独の有村さんの心はピューピューと隙間風が吹き込んでいる。カナエはあの夜、有村さんの家のリビングで見た奥さんと犬の写真を気にしてるのだ。
「奥さんが抱っこしてた犬、ラブラだったでしょ。陣の助さんお願い、ちょっと検索してみてくれない。福岡の動物保護センターには今、譲渡犬の中にラブラドールいないかなぁ」
陣の助が早速スマホを取り出すと慣れた手つきで検索した。
「おるじゃないか!」
一斉にスマホを覗き込むと、そこにこの時を待ってましたとでも言うかのようにラブラドールが愛くるしい顔で映っていたのだ。満を辞してまずは恭一とカナエの二人で出向き、今日は有村さんを連れてやってきたのだった。