福岡38度。暑すぎるしこんな日はタクシーで涼しい場所にお出かけ。
キャナルで羽を伸ばして、ステーキを食べました。
タクシーで初めて交通系のカード決済を試して見ました。簡単でこれは良い。
今日の歩数は1978歩 少しでも歩いています。腰は痛!ポエム「cocoringの部屋」
炎天を避けて涼しきキャナルシティ
連載小説「幸せのパズル3」その12
「どなた」
しゃがれた声だ。そこら中散らばったティッシュの屑や絨毯の上に敷きっぱなしの布団で座る場所もないがとりあえず三人はテーブルのある場所に有村実雄を囲むように座った。
恭一が口火を切る。
「有村さんでしょう、良かったです。食べる気持ちになられたんですね」
戸惑いを見せた有村の顔は何故かスッキリと見えた。
「はい、水」
水道水を勝手に汲んできた物だが、カナエから素直に受け取ると一気に飲み干す。
「美味かったみたいですね。よかったよかった」
恭一の言葉にムッとしたようで有村実雄がぼそっと言った。
「なんも、良かないよ」
「……」
「でも、俺ぁ、止めたんだ。止めた止めた」
「そうですかぁ、よかった。止めたってことは生きると決めたんでしょ」
「ふん、馬鹿馬鹿しい、郁美のやつ、勝手に死にやがって、俺はもう義理は果たしたぜ」
「そうよ。有村さんは十分苦しんだ、それで良い! あとは生きるしかない」
なんのことかもわからないが、多分そういうことかと、推測して言ったカナエの言葉は有村の胸にドンピシャとはまったらしい。有村の言葉に思わず陣の助が拍手をしたのに、合わせてカナエも恭一も手を叩いた。
「あんたたち、誰…」
突然正気に返ったように有村実雄が三人の顔をじっと見る。その目はさっき食べたカレーのおかげかしっかりと焦点が定まっていた。
恭一は右手を実雄の肩にかける。
「あなたが何もかも捨ててしまった大事なポーチの拾い主ですよ」
恭一の言葉に一瞬ポカンとして何のことだかわからない顔をしていたが、やがて、あぁ、そうか。となんとか思い出したようだ。
「郁美のポーチね。確か川に捨てたんだ。今日こそ死のうと思って。これから死ぬ人間にあんなもの要らないでしょ」
「奥さんのポーチだったんですね」
うん、と深く頷き頭を垂れたとき、一気に盛り上がった涙のレンズが壊れてぽとぽとと実雄さんの足元に落ちた。
「俺が郁美の誕生日に買ってやった郁美のお気に入りで、もう何年も前のものを後生大事に使ってたよ。あいつが死んでからはあいつだと思って俺の持ち物入れて肌身話さず持っていたんだ」
実雄さんの背中には広くベランダのガラスがあってアケビの影のそのずっと上にそろそろ満月か、と思うほどの赤い月がポツンと浮いている。サイドボードに飾られた写真の中で犬を抱き寄せ笑う女性、きっと郁美さんだろう。子供に恵まれなかった郁美さんがおそらくは我が子のように可愛がっていたのかもしれない。