なんとほぼ3ヶ月ぶりに美容室に行き髪を切ってもらいました。
スッキリですが、行きがけタクシーで、帰りのみノルディックの杖で歩き
やはり疲れました。スマートウオッチでは1970歩となってましたが
私としては精一杯。昼寝して起きるとお腹の辺りがこわって痛いです。
今日のお昼ご飯たまに作る定番メニュー「ポークソティ&スパサラ。黒ビール付き」
片陰によりて真昼の歩を進む
連載小説「幸せのパズル3」その9
恭一と陣の助が畑に出かけてカナエは佐知子と二人リビングで今日の豆ご飯に入れるエンドウ豆の皮を取りながら話はもっぱら一昨日の事件で盛り上がっていたのだった。
シェアハウス「IO倶楽部」はそれぞれの部屋に台所もついており基本自炊なのだが、何しろ男どもは炊事は大の苦手で、初めは女二人で色々と指南していたもののその方が面倒、結局はリビングについたキッチンで佐知子とカナエが作ることが多い。男どもはもっぱら畑に専念して最近は野菜の収穫もバカにしたものではないのだ。近くの子供食堂にも豆ご飯用にと、サヤエンドウに茄子を数本届けたばかりだし、今、剥いている豆も畑で採れたものだった。
一〇月半ばを過ぎると途端に日の暮れも早くなる。早めに作っておいた豚汁の匂いがリビングに漂い、あとは豆ご飯を炊けば今日の夕食の支度は終わる。お互いに一人暮らしだった頃は、自分一人のために作るご飯はつい手抜きに走っていたがこうして四人でいると何かにつけてやりがいがある。佐知子が漬ける糠味噌の野菜も菜園で採れたもので、こうして食卓に上がることで男どもの畑愛もおのずから高まってくるのだった。
そんな時玄関のチャイムが鳴って入ってきたのは二人の警察官だった。その一人はカナエも見覚えがある、あの時、派出所で応対にでた若いおまわりさんだ。もう一人は背広姿で刑事さんなのか温和そうだが目が鋭い。よければお上がりください。と言うと、それでは失礼します。と本当に上がってきたので、佐知子が慌てて広げた新聞紙ごと豆を片付ける。
「いや、この前の件ですが、少し困ったことになりまして」
警察官がまず話を切り出した。
「落とし主の方がですね、あのときのお宅が拾われた拾得物は全部、拾い主に差し上げて欲しいと言われてきかんのです」
「えっ、だってお金だけじゃなかったですよね。免許証やスマホや保険証なんか大事な物が入ってたじゃないですか」
「そうなんですよ。実はその方は免許証でもうご存知かもしれませんが、有村実雄さんと言われて、年齢は七六歳ですが、有村さんは生きる意欲をすっかり無くされててですねぇ」
「はぁ…」
「餓死を希望されてて食事を摂られてません。で、病院の栄養点滴があるといつまでも死ねない、と言われて無断で自宅に戻られて」
カナエと佐知子は言葉が見当たらずお互いの目を見つめあった。なんだか大変なことに巻き込まれそう…。
「どこにお住まいの方なんですか」
「諸岡ですよ」
「諸岡の有村さんって、もしかしたらあの有村ビル?」
「ご存知ですか」
「知り合いじゃないけれど、確か諸岡のバス停近くのあの通りに面したビルよね。あの近辺なら御笠川はすぐだもの。だから御笠川の上流辺りでうろうろされてたのか」
「はい、死場所を求めて、ここ数日は何も食べておられなくてですね、やっとその日が近づいて来てたのに、病院に収容されて栄養剤なんかいっぱい点滴とかされて、死ねなかった、とぼやいてて」
「と言うことは、今はお家に帰られているのですね」
「と、思います。別に犯罪を犯したわけでもないので警察が介入することはありません。それで持ち主のご意向でもあり、この拾得物は拾われた方のものとしてそちらで受け取っていただけますか」
「それは…」言葉に詰まった。
「そうなりますと、誠に面倒ですが署までお越しいただいて手続きをしていただく必要がありまして」
カナエは慌てた。どう考えても貰うつもりはない。それより、生きることをやめたがっている有村実雄さんと言う男性に会ってなんとか力になれないか、と思う気持ちが強かった。
「わかりました。ご存知とは思いますが、これを拾ったのは私の他にもう一人おりまして、しばらくして帰ってくるはずです」
「そうですか。では一応署の方で一時的に保管しておきますのでご相談の上、連絡ください。相手の方はそれは拾い主のものだと言い張られるもので」
警察が帰った後、気を取り直しては見たが、人の生死がかかった問題だ。とりあえず豆剥きを再開したものの心ここにあらずになる。恭一の帰りが待たれた。