福岡梅雨入り 曇天のまま今日が終わる。
私の心そのままに。ずっと続く痛みはまだ我慢できるけど
ときおり、髪の毛が逆立つような痛みに襲われて悲鳴をあげてしまう。
痛みどめは処方されたけれど、こんな時は入院してれば点滴でもしてくれるのかな〜。
仕方ない、私が強引に入院を拒否したのだから。
しかし、一ヶ月もの入院になれば、自分での足での歩行は困難になると思う。
日にち薬 日にち薬。と言い聞かせる。
梅雨寒の心の襞も閉めたまま
連載小説「幸せのパズルその2」10
大きく開いたガラス窓の外がすっかり暗くなりひっきりなしに通る車のテールランプがなんともやるせなく見えた。
「あのねぇ、学校に訊いてみなさいよ。事情を話して未払い分の二〇万を更に分割できるかどうか」
カナエの言葉に佐知子もうんうんと頷く。
「とにかく今みたいに飲まず食わずで働いてもそこまでお金は溜まらないよ、肝心の勉強だって停学ならお話にならないし、結局、体壊すのが落ちと思うよ。とにかく学校に相談した方が良いって。その詐欺の被害に遭ったことも学校はわかってるんでしょ」
「はぁ、でも…。もう、これからのことを思うと、母だって俺のアパート代も払ってくれてるワケだし、とにかくギリギリなんですよね」
「お母さんはアパートの家賃も払ってくれてるのか…」
「はい、落ち着いたらしっかりとしたバイト先を探すつもりでした。でも僕の浅はかな考えでとんだことになり、僕の頭の中はもうぐちゃぐちゃです。とりあえず学校だけは続けたい。そのためには未払い分のお金を調達しないと」
「わかったよ。おばちゃんもここまであんたのことに介入したんだから、なんとか頭を捻ろうじゃないの。だからまず学校に相談しなさい。いい? それが一番。まず聞いてみなさい、それからまたその先を考えよう。とりあえず、また連絡して」
「わかりました。俺、今からまたバイトなんで、ではこれで。本当にごちそうさまでした。久しぶりに美味しいものを食べて体も気分も復活しました」
「ええっ! またバイト」
「はい、居酒屋で」
「で、今、いくら貯ったの?」
「一二万です。あと一息なんです。何しろ期日が迫ってるし」
「期日はいつまでなの」
「五月末です」
「それって明後日じゃないの。あと八万なんて二日では無理でしょう!」
お人よしの二人の胸の中には共通の言葉が口から飛び出しそうになっていた。
おばちゃんが貸してやる…。その言葉をグッと呑み込む。
「海星! 明日は学校に行きなさい! そしてダメ元でも頼んでみなさい」
二人の声が後押しできたのか、海星は唇を引き締め頷いた。