午後からは晴れ間も見えるとの予報なれど、朝飛び込んできたニュースは
長嶋茂雄さんの訃報。小雨をぼんやりみていた。昭和は終わりつつある、、。
ベランダの花たちに白く細かい虫が付いて毎朝点検してはスプレーで退治してるけど
これも根気くらべだ。今日は何もない日。今日こそ溜まってしまった俳句の
整理をしようと思う。無駄な時間は何もない。
英雄の訃報けぶれる梅雨の朝
連載小説「幸せのパズル2」その9
「なんで、使い込んだ…」
「詐欺にかかりました。専門学校で先輩に投資話を持ちかけられて」
「投資話! そりゃいかんよ。海老の養殖とか不動産売買とかそんなとやろう」
「そんなんじゃなくて、もっと健全な」
「詐欺に健全はないよ、結局騙されたんやろう」
海星は俯いて額の辺りを人差し指擦るように掻く。
「はい、おふくろが俺の専門学校の学資を町内会長のスケベ親父から借りてしまい、危うく再婚させられそうになっていて、俺、焦ってなんとかお金返そうと思ってたときに、先輩に持ちかけられた話で半月後に倍になる話でしたけど大嘘でした。先輩って都会の人って感じで明るくて俺のような地味な人間にとってはまさに今時の若者っていうか眩しいくらいで、憧れてる人もいっぱいいたんですよね。でも先輩が言ったことは全部嘘でした。結局、逃げられて」
「まぁ、ひどい」
「警察には届けたの?」
「はい、そしたら既に捕まってたんですよね」
「えっ、詐欺で?」
「いえ、先輩は窃盗で…。なんか闇金で切羽詰まって強盗したみたいで」
「そりゃ、怖い。そんな先輩とは付き合ったらいかんよ」
「俺も被害者なんで、もう絶対に旨い話には乗りません。心底懲りてます」
「で、お金は?」
「先輩は一文も持ってなくて返すあてもないそうで、結局泣き寝入りです」
「それってどれくらい盗られたのよ」
「入学金は払いました。月謝は一期分のお金、分割で良いと言われて、母には全額収めるように貰ってたんだけど、俺、おふくろが町内会長の再婚話で苦境に立たされてること知ってたし、で、先輩の投資話に賭けたんです。倍になって戻ればとりあえず、金借りた町内会長に返せると思って」
「で、幾ら盗られたの」
「二〇万です」
カナエと佐知子が二人同時にため息をつく。
「そしたら、海星くんあんた一体どうなるの?」
「とにかく学資の分割を払わないと行けないし、なんとかバイトして穴埋めしようとしてます」
「で、ご飯も切り詰めて食べてないのか…」
「……」