目覚めて起きたものの膝裏と腰痛が厳しくて朝食後またベッドに戻り、結局
その後も寝たり起きたり。痛み止めが効いてきたら、今日は「市長選」なので
出かけようと思う。ほぼ往復3000歩の距離。テレビは録画ばかり見ているが
今、Dr.コトウの再々放送を見ている。俳優の吉岡くんのフアン。それと「赤ひげ」だ。どちらも医者もの。船越英一郎は全く好きな俳優ではなかったけれど
「赤ひげ」で好感を持った。

薄暗き仏壇に映ゆ白き菊
◉連載小説「医と筆と」25
井戸で冷たく冷やした麦湯にお駒が持ってきた水羊羹を添えて湊に差し出す。縁側から見える夜空は満天の星である。ときおり蛙の鳴く声がするのはそろそろ一雨欲しいという催促なのだろう。忙しく日々を送る二人には束の間、ひとときの安らぎの時である。
「それでお駒さんは相変わらずお元気だったということですね」
湊は襟元を少し広げ風を入れながら、水羊羹を一口食べると、ゆっくりと麦湯を口に運ぶ。
「はい、それは、お幸せが姿にも現れておりました。未だ、母上への恩は忘れてはおられぬようで、月命日には必ずお参りをされておいでです」
「母上もよい仕事をなされましたな」
「幸吉はもう五歳、早いものです。絵を描くことが好きだそうで、亀吉が描いた、たまの絵を後生大事に持って帰りました」
湊と連れ添いはや二十年にも近い歳月が経っている。五十を過ぎた湊は髪の半分が白髪だが、毎日の往診で陽に灼けた顔は一段と逞しい風貌を備えてきた。きよみ長屋は差配の矢兵衛の死後、取り壊されて今は火除け地になっていた。おみつもおせいもそれぞれの息子たちの世話になり、亀吉が貰い乳をした由蔵夫婦は材木町に店を構え職人を雇うほどで、今では鶴吉が立派な跡取りになりそうだと聞いている。代わり筆となり鶴吉と認めたのはつい先ほどのことに思えるのである。
「振り返ってみれば、二人して何一つゆっくりとすることもなかった、こんな忙しい医者の家によくぞ嫁いでくれたものです」
「と、申されますと、やっと私どもにもゆとりができたということでございましょうか」
忙しい日々を過ごす夫婦にとって湊の言葉は軽口にも取れたが、湊は吉乃の言葉を真面目に返した。
「ゆとりは自分で作らねば出来ぬものだと思っているのです」
それならば、と、吉乃も真面目に願い事を口にする。
「では、私、いつかはあなた様にお願いしたいことがございました」
「それは何でしょう」
「亡き母が眠る光芒寺にいつの日か父の遺髪を収めてやりたいと思うておりました」
「たしか、豊丘村でしたな。三州街道を往復で数日もあれば、大人の足ならばゆっくりと行けましょう。私も母上への墓参は是非ともいたしたいと思うておりました」
湊の言葉が嬉しかった。ただ気掛かりは、父、順庵の体である、言葉に出さずとも二人の心に掛かっていることであった。