柿 | ryo's happy days

ryo's happy days

思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

この土日は何の予定もないが、月曜にコロナワクチン5回目が入っているので
ちょっと自重することにした。紅白歌合戦の出場者が発表された。
視聴者として私が思うこと。
何度聴いても良いなぁと思う曲を歌手の人気に拘らず選んで欲しい。
さだまさしの案山子、秋川雅史の千の風になって、井上陽水の少年時代、徳永さんにレイニィブルー、矢沢永吉の時間よ止まれ。こんなの選んで欲しい。ってこれも偏見かな〜。なんちゃら坂って言う団体だけはもはや騒音でいつも消音にしてしまう。でもEXILEは良いなぁ。
 この前遠出したときのお部屋
頂いた柿は見事な外れ柿
連載小説「医と筆と」24
 梅雨は上がったかと思われるほどの強い陽射しに気が早い蝉がじりっと鳴く音がした。おうめが裏庭の軒下から取り込んできた大棗(たいそう)(なつめ)を砕こうと薬研の前に座ったときだ。
 診療所の入り口に訪いを入れる女の声がした。
 午後の陽射しを背に立つ子ども連れが見える。芥子坊の手をしっかりと握るほっそりとした佇まいはすぐにお駒さんと分った。
「お駒さんではありませんか」
 吉乃を見て深々と頭を下げる。芥子坊は幸助だ。吉乃が取り上げたお駒の一粒種である。麻色に波を描いた絽をご新造さんらしく涼しげに着て、共の小女に持たせた菓子折りを「お口に合いますか、深水堂の水羊羹ですが」と差し出した。
「この暑いときによくぞお出でくださいました。深水堂の水羊羹は義父(ちち)の何よりの好物でございます。して、今日はなんぞ御用の向きでも」
 幸吉は色白でお駒の目元をそのまま生き写したように捉えて、白地の米絣からかわいい膝小僧が覗いている。思わず駆け寄り幸吉の頭を撫でる吉乃にお駒は嬉しげに声を弾ませる。
「はい、草庵寺までおさよ様のお墓参りにまいりました」
「それは、義母(はは)もさぞや喜んだことでございましょう、まずは、どうかお上がりくださいませ」
 お駒は亡くなったさよへの感謝の気持ちを未だに持ち続けているのである。さよがまだ元気な頃、気鬱を患ったお駒のもとに亀吉を連れて足繁く通い、気長にお駒の心を開かせたことがついこのまえのことのようにおもわれた。さよの言葉はお駒を動かし、やがて婿養子を迎え幸吉が産まれたことで自らの道を見いだしたお駒である。お駒が想うていた男は樋口屋の手代であったことが分ったことで、お駒の気持ちを汲んで父と母が選んだ婿は優しい男であった。父母の喜びはわが身の幸せと思えるほどの気持ちのゆとりは、一重にお駒に寄り添う旦那様の存在と、幸吉を得た幸せを実感したことであった。お駒の亀吉への思いやりは幸吉を産んだことで一層深まったようである。
「私、心にしかと思うことがございます」
「何でしょう」
「人間というものは日頃の行いや心の持ちようがそのまま姿形に映し出されるのですね。先生の凛としたお姿やお顔を拝見させて頂くたびに思うことでございます。私も幸吉に恵まれ、家のことにかまけておりますが、女子としての誇りだけは持ち続けたい、それがさよ様から頂いた宝物でございます」