外科受診。患部に水が溜まってきたとかで抜かれた。痛かった。
先生「全治5ヶ月だからね〜痛くても歩けるようにはなってきた」と言われた。
でもね、痛くても歩けるのは頑張ってるんであって、これがなおっているとは
考えにくいけど。体重は絶対に増やさないようにと言われた。

コスモスを見ても心も乱れなき
◉連載小説「医と筆と」11
山谷堀の面を滑る猪牙舟が水を掻き分けるたびに小さな波が初夏の陽射しに揺れる。
そよの消息は不明のまま、亀吉は遅まきながらなんとか首も座り、俯せにさせると亀のように首をもたげ声をたてて笑う。鶴吉はお千代の背中に括り付けられて歯が生え始めたのかしきりと指を吸っていた。
「この子ったら自分が貰い乳をしてることが分ってるのか、つるとは決して乳の奪い合いをしないんです。おなか空いても、つるが飲み終えるまでじっと辛抱してるんですよ。そんなかめを見てると不憫でねぇ」
自分の乳で育てたお千代は亀吉が我が子のように思えているのだろう。
「先生、やっぱり、かめの右手はこのままなんですかねぇ」
吉乃は亀吉を抱きあげると動かぬ右腕に手をあてた。
「この子がもう少し大きくなれば神経をつなぐ手術もできるかも知れません」
お千代の顔がぱっと明るくなる。
「そうなんですか」
「医術は進んでいます。望みを捨てることはありません。あと三月(みつき)、盆明けの頃には亀吉も乳が外れることでしょう。それまで、亀吉のことよろしくお願いしますね」
傍で聞いていたおみつが口を挿んだ。
「えぇっ、かめの面倒なら吉乃ちゃん、心配要らないよ。この長屋のみんなして預かってるも同じなんだから。その薄情な、そよとかいう女が返してくれなんて言ってきたって戻してやらないよ」
飴売り末吉の女房おせいも相づちを打つように大きく頷く。おみつには三人の子どもがいるが、吉乃がきよみ長屋に来た当初、産まれて半年だった末娘のくみもすっかり大きくなってせんべい屋に奉公に出ているし、おせいの二人の息子もそれぞれ奉公に出てすっかり寂しくなったところだ。そんなところにやってきた亀吉がかわいくて仕方ないのだった。