なんとも、このところの私のブログは暗くて、いっそ休載しようか..と悩み
ましたが、、やはりそれもかなりの低迷につながる気がしてね。
今日はやる気なしだけれど、リハビリ教室に行ってきます。がんばるです。

夜半より秋雨の音かすかなる
◉連載小説「医と筆と」(代わり筆続編)1
背中から両脇に腕を差し入れ力を込めてぐいと半身を抱き起こしたが、女はされるがまま豊かな乳房をのけぞらせ、両手は力なくだらりと垂れたままである。くずれた髷からまがい物の簪がするりと床に落ちてかちっとひび割れた音を立てた。
「しっかりなさい」
頬を叩くと、瞼がぴくりとして僅かばかりの反応がある。胸までせり上がった帯の下の着物は臀部から裾までぐっしょりと濡れ、微かながらぷんと鼻をつく臭いは羊水だとすぐに分った。
里見診療所から大して遠くもない草庵寺の床下に遊びに入り、そこに倒れている女を見つけたのは寺子屋に通う子どもらである。浅草山川町の一画にある草庵寺は真言宗で小さいながらも寺の裏手に数十基の墓を抱え、墓参りに来る人も三々五々と途絶えることがない。そういえば、今朝方から呻き声がするような、と思ってはいたそうだが、春先のこととて、また、猫どもが騒ぎ出しておるのだろうと住職は安易に考えていたのだと言う。騒ぎを聞きつけ、たまたま墓参に来ていた大人どもが床下を這いつくばり女を引きずりだしたが、そのときには既に誰が見てもただ事ではない様子であった。膨れた腹のかろうじて隠れた部分の先に伸びた足は突っ張り、指は苦しさに土を掻いたのであろう、泥にまみれて爪からは血が噴き出している。