秋の午後 | ryo's happy days

ryo's happy days

思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

今日は我が家3人でラーメンを食べに行こう!と決めています。このところ急激に増えたラーメンのCMにすっかり乗せられました。でも我が家の好みは
「道産子」です。福岡なら豚骨なんですがある程度の年齢が来ると豚骨の脂がきついです。
 気晴らしにお外ご飯や秋の午後
連載小説「代わり筆・上」22
 吉乃が若先生、湊さまの助手として診察室に入るようになったのは、つい最近のことだ。一足先に診察室の中に入ると先ずは今日の準備に取りかかることが吉乃の役目だった。部屋の窓を開けると母屋から朝餉のいい匂いが漂ってくる。昨日、馬に蹴られて担ぎ込まれた善兵衛さんの部屋の障子は開け放たれているさまを見れば、調子が随分いいに違いない。つい今しがたまで母屋の庭先で鍛錬をしている湊の気合いのこもった声が聴こえていたと思ったら、小半刻(約三十分)も経たぬうち手拭で汗を拭いながら湊が顔を覗かせた。
「大先生が吉乃さんに来るようにと言われておられます」
 順庵の診療室は奥の六畳の板間である。
「おはようございます。お呼びでしょうか」
 急ぎ行くと順庵は右足を投げ出すようにして愛用の腰掛に座り、手招きをして吉乃を身近に呼んだ。
「実は、一つ頼まれて欲しいことがあるのです」
「はい、私にできますことなら、何なりと」
 吉乃は床間に正座をして腰掛に座る大先生を見上げる。順庵は痛む足を摩りながらいつもながらの温厚な声で話し始めた。
「私が今まで続けていた、月のうち何度か吉原への往診を、今は湊が代って行っておるのは吉乃さんも周知の通りだが、このほど元締めをしている三浦屋さんからの依頼で、女たちの代書を引き受ける人を探して欲しいと頼まれましてな」
 吉乃が寺子屋で父の手助けをしている頃から、読み書きのできぬ人の替わりに文を書いたり、時には恋文の代書までしていたことは、聞き伝えに知った上のことのようだった。
「はぁ、私でよろしければお役に立ちたいと思いますが」
「引き受けてくれますか、それは女たちも喜びます。それでは善は急げだ、今日から湊と吉原まで出向いてください」