昨夜は私のちょっと遅めの退院のお祝いで、お肉のコース料理をご馳走になりました。ワインも美味しくおしゃべりも弾んで楽しいひとときでした。
久しぶりにお化粧したら「やっぱりきれいになるもんだなぁ」と友人の感嘆しきり。写真撮れば良かったねぇ。だって。(写真は前菜のみ)

幸せに涙こみあぐ秋山葵
◉連載小説「代わり筆・上」13
そんな父娘の家に暗い影がさし始めたのはその年も暮れかかった冬だった。
朝から重たい雲に一日が冬の帳(とばり)に被われて、ときおり小雪が思い出したように空っ風に吹かれて舞っていたが、淳之介が寺子屋の帰りの道筋に備え付けてある天水桶(てんすいおけ)の傍に踞っているところを、早仕舞いで帰ってきた飴売りの末吉が見つけたのだった。担ぎ込まれた淳之介の顔は蒼白で痛みに歪んでいた。
「てぇへんだ、てぇへんだ」
「父上様、いかがされたのです」
末吉の大声を聞きつけて夕餉の支度をしていた吉乃が飛び出してくると、おみつも飴売りの女房のおせいも飛び出して大騒ぎになった。
「父上様、しっかりされてください」
腰から腹にかけて突き上げてくる尋常ではない痛みに、淳之介の体は弓なりになっている。
「すぐに順庵(じゅんあん)先生のところに運びなさい」
大家の矢兵衛の一声で飛び出した末吉と大工の辰三が近くの米屋の大八車を借りてくると、淳之介をせんべい布団にくるみ、尻っ端折(ぱしょ)りをした男どもが大八車で、一町ばかり北に離れた紙洗橋の里見順庵のもとに運び込んだ。
一通りの診察が終わると、順庵は淳之介の傍に付いている吉乃を隣室の待合所に呼び、心配顔で残っていた長屋のものを外へと出した。順庵の顔に深く刻まれた色は聞くまでもなく病の深刻さを滲ませている。
「お父上はこれまで余程の我慢をしておられたようですな、どうも五臓の脾と呼ばれる部分に悪いしこりができておられます」