名月 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

ここ3年余り髪を染めずグレイヘアで過ごした。
きっかけはヘアカラーに負け始めたこと。皮膚科の先生に言われて、
割り切ってそうしたのだが、この齢になり気が変わった。それが「利尻昆布カラーシャンプー&リンス」との出会い。慎重に試してみたが、全く湿疹が出ることもなく少しずつ自然な仕上がりだ。結構嬉しい。何を今更〜と言う人もいるかもね。でも何しろ昆布だから髪にも良さそう。

 名月を二日続けて見上ぐ夜
連続小説「代わり筆」1
 小指の先にほんの少し紅を取り唇にうっすり引くと、ただでさえ白い肌が際立ってくる。小さな二枚貝に入った紅はお茶屋勤めの梅ちゃんが田舎のおっかさんに便りを書きたいと、その代書を頼まれたときお礼にもらったもので、吉乃(よしの)が仕事に出かけるまえのたった一つの女らしいたしなみだった。上目遣いに手鏡を覗いて髷に挿したつげの櫛に手をかけ、もう一度きつめに挿し直す。母、史(ふみ)の形見と、始めて髷を結った十五歳の春、父が箪笥の抽き出しから取り出し髪に挿してくれたものだ。
「これは母上が大切にしていた、おばば様から受け継いだ櫛だ、そなたにはまだ地味だとは思うが、娘らしい櫛の一つも買うてはやれぬ父を許してくれ」
 その父ももういない。二年前、吉乃が十七の齢に逝ってしまうと、吉乃はきよみ長屋にただ一人取り残されてしまったのだった。