今日の歩数3863歩、痛み止めを飲んで歩いた数字だが、まぁ良いでしょう。
3ヶ月ぶりの「コーラス」感染対策をしてアルトのみのパート練習がありました。時間もたった50分。マスクのままでも歌うことができて久しぶりの快感です。

歌声の窓より漏るる春うらら
◎連載小説「CALL」41
日暮れが近い。急がなければ…。バスを降りてビールを一缶だけ買うと、昔の記憶を辿りながらずんずんと歩く。道は砂地になってきた。右手に続く松林の少し窪んだ場所が目印だ。そこから松林に入ろうとして立ち入り禁止の立て札に気づいた。もう日は落ちてきて、薄暗さの中に有刺鉄線が見える。目を凝らして奥を見ると砂地は昔のままに続いているように思えた。有刺鉄線の一部分に人がくぐれるほどの間を見つけたとき、まるで恒男が美佐のくぐれる分だけを開けてくれているような気がした。迷わずそこをくぐると背中を引っ掛けて服が破れる音がしたが別に構わなかった。日没がそこまできている。海辺についたときまさに太陽が沈む瞬間だった。緋色の一条の光りが横一本に地平線を描くと吸い込まれるように消えて闇が訪れた。黒くなめした海に白い波頭だけが微かに見える。潮騒が美佐を包み込んでいた。砂地に座り暗がりで缶ビールのプルトップを引く。一口呑むとホップの苦みと匂いが口中に広がる。朝から何一つ口にしていなかった。乾いた体に生温いビールが浸透し途端に気だるさが全身を襲う。涙ばかりが溢れておいおいと声をあげて泣いた。
誰からも見捨てられた孤独と暗闇が美佐を襲う。
「あんた、私ば許して! 迎えに来て! もう死にたか!」
恒男が心療内科で貰っていた大量の睡眠薬を取り出すと、ビールと一緒に飲み下した。一瞬浮かんだ近藤の顔を追い払う。…父ちゃん、ゴメン……睡魔が闇に溶けた。