囀り | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

昨夜のニュースで、東京在住のロシアの女性が言っていたが、ロシアに住む母親に電話で今の状況を伝えてもお母さんは絶対に信じないという「それはフェイクニュースよ。プーチンは良い人」と話が食い違い口論になるという。悲しい。と言っていた。きっとロシアでは真実が伝わってないのでしょうね。
今日は痛み止めを飲まずに美容室までの約1300歩。帰宅路は歯を食いしばって歩く。
 囀りのいずこや聞ゆ舗道沿い
連載小説「CALL」40
 マンションを出るとき、恒男の位牌をいつもの手提げ袋に入れた。アクセサリーを入れていた抽き出しを掻き回し、底の方に隠れていた茶封筒を見つけ逆さに振ると、あった。恒男が作ってくれたステンレスのリングが転がり出た。薬指にはめてみる。もはや昔の輝きはない。それはまるで今の自分のようだと思った。天神の郵便局前にずらりと並んだバス停で和白方面のバスを待って乗り込んだ。夕方の混み合う時間だが空いていると思ったら各駅停車だ。…まぁ、よか。今更、急ぐこともなか…。窓際の席に座り陰り始めた景色をぼんやりと眺める。バスは高速に乗らずゆっくりと一般道路を走る。窓の景色は昔と随分変わったが、40分も走るうちに段々と昔懐かしい道筋が見えだしたとき、美佐は窓に顔を押し付けるように窓の外を見る。あった! 和白から国道3号線を逸れて左に入った細い道筋の弁当屋だ。昔と少しも変わっていない。若い頃、海が好きな恒男と二人で数えきれないほど、雁ノ巣の海に行った。そのとき、決まってこの弁当屋で弁当を買ったものだ。それも今、弁当屋で売っているような豪華な物でもなく、焼いた竹輪の一本も乗っていればご馳走だった。あの頃は貧乏だったけれど、二人とも若さを持て余していた。弁当と二缶のビールを抱えて松林を分け入り人気のない秘密の場所に行った。夕方近くまで泳いだり寝転んだりしながらやがて周囲が闇に包まれ沖にイカ釣り舟の灯りがチラチラと見えだすと、それを合図に海辺を離れた。電気一つない暗闇を月の明かりを頼りに恒男としっかり手をつないで歩いた。ただそれだけで幸せだった。